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p.59 抽出テキスト

CKD患者ではCIN発症に差がなく,輸液に伴う有害事象を認めるという結果が報告されたため496),輸液の適応と量に関してはさらなる検討が必要である.また,CKD患者に対してCO2造影を行うこともあるが497),解像度では現行の造影剤の方が優れており,CO2造影には塞栓症のリスクもあることから,適応は限られる.術後腎機能:AKI/CIN発症の有無あるいはCKD患者か否かにかかわらず,TEVAR/EVARによる経年的な腎機能の影響について言及した報告はない.EVAR群は外科手術群よりも早期のAKI発症は少ないが長期における腎機能低下はEVAR群の方が著しいとの報告もある498, 499).その理由の一つとして,術後フォローアップのための頻回な造影CT検査が挙げられる499).CKD患者に対しては造影CT検査を必要最小限にとどめ,腹部エコー,単純CT, MRIなどの,造影剤を使用しない画像診断も検討されるべきである.

3 外科手術

3.1 人工血管置換術

大動脈瘤や大動脈解離における外科手術の目的の大部分は,大動脈壁の破綻による生命の危機を防ぐことにある.その他の目的として,大動脈瘤による隣接臓器圧迫の解除500)や灌流障害の改善,塞栓症の予防501)などがある.外科手術の基本は人工血管による置換である.最近では人工血管置換術が困難な症例に対してステントグラフト(SG)内挿術(TEVAR/EVAR)が行われるが,ハイブリッド治療(外科手術とTEVAR/EVARを合わせた治療)として人工血管とSGを併用することもある.

人工血管はポリプロピレン製とePTFE(expanded polytetrafluoroethylene)製に大別される.人工血管は国内外の企業により販売されており,大動脈基部から腹部大動脈に至る解剖に合わせたデザインの人工血管が使用可能である.人工血管の登場以前より使用されていたホモグラフトは,特に感染性病変に使用される502).この感染性病変に対しては,最近では異種心膜で作製された導管による置換の報告があるが,遠隔期成績は不明である503–505).

大動脈径を縮小させるために大動脈壁を形成する手術や,大動脈をフェルトや人工血管で覆う手術(ラッピング)が施行されることもある506–509).近年,大動脈基部をラッ

ピングする手術(external aortic root support)も報告されている510).しかし,組織が壊死を起こすとの報告511)もあり,注意が必要である.TEVAR/EVARの増加に伴い, SG内挿術後の人工血管置換術(open conversion)も増加傾向にあり,手技的にも容易ではないとする報告も散見される448, 512–514).SGをすべて除去することが困難な場合には,切断したSGを一部残さざるをえないが,その遠隔期における影響は不明である.非解剖学的バイパス手術も必要に応じて実施される.

人工血管置換術後の抗凝固療法は原則として不要である.術後遠隔期には吻合部の仮性瘤が発生することが知られており,新たな病変の発生の有無を確認する意味も含めてCTやMRIでの定期的な画像診断による経過観察が望ましい.

3.2 体外循環と臓器保護

大動脈基部から上行・弓部に至る大動脈手術には,原則として体外循環が必須である.また,心臓手術に準じた心筋保護法も必須である.下行から胸腹部の大動脈手術にも体外循環が使用される.腎動脈下AAAの手術では体外循環は不要である.置換の際には,大動脈遮断を行ったうえで病変を切除して,人工血管で再建する.大動脈遮断が難しい場合には体外循環を用い,低体温法を併用して循環停止としたうえで大動脈を開放(open aortic technique)して,病変の切除や吻合を行う.循環停止法において,あるいは広範囲の大動脈置換を実施する場合,最大の懸念は臓器障害であり,必要に応じて各臓器への灌流を併用する分離体外循環を用いる.

3.3 院内死亡率

日本胸部外科学会の報告43)によると,2016年の集計で,大動脈解離手術の院内死亡率は急性A型解離が11.3%,急性B型解離が10.0%,慢性A型解離が4.3%,慢性B型解離が3.8%であった.また非解離性大動脈手術の院内死亡率は,非破裂例に限ると上行3.0%,基部4.1%,弓部6.2%,下行5.5%,胸腹部9.6%であり,破裂例においては上行17.0%,基部19.2%,弓部16.9%,下行29.7%,胸腹部28.6%であった.

日本血管外科学会の報告515)によると,2014年の集計で, AAA手術は19,216例実施され,院内死亡率は3.2%,非破裂症例の手術に限ると1.2%,破裂症例の手術では19.7%であった.