p.58 抽出テキスト
PQ 6 2.2.4 成績と合併症 2016年の本邦におけるEVAR治療9872症例の急性期治療成績(NCD-JACSM追跡調査)では,院内死亡は1.6%,瘤破裂は0.18%,脳卒中は0.4%,腎機能障害は3.2%,塞栓症は0.9%,アクセス合併症は1.1%である. EVARの術後合併症は,1大動脈・腸骨動脈損傷(破裂・解離),2塞栓・血栓症,3エンドリーク(type I ~V,図52),4腎機能障害,5アクセストラブル,6脚閉塞, 7瘤拡大・瘤破裂,などが挙げられる469). 1 大動脈・腸骨動脈損傷(破裂・解離):状況に合わせて 治療のタイミング,追加治療の方法(surgical convertionか否か)を考慮しなければならない. 2 塞栓・血栓症:大きな塞栓は腸管壊死,虚血性大腸炎, 腎梗塞,壊死性胆嚢炎などを併発する.小さい塞栓(コレステロール結晶塞栓症)は,術直後ではなく術後1~ 4週間後に,蛋白尿を伴う腎機能障害と食欲不振などの特有の症状が出現する. 3 エンドリーク(type I ~V):type Iならびにtype IIIエ ンドリークはすみやかな追加治療が必要である343–347). type IIエンドリークは遷延すると(6ヵ月以上),瘤拡大や接合部の減少に応じて,その対処が求められる348). 4 腎機能障害:SGによる腎動脈カバー,造影剤の使用, 上記塞栓などに起因する腎機能障害がある. 5 アクセストラブル:小柄な女性,腸骨動脈石灰化症例 で発生しやすい. 6 脚閉塞:腸骨における屈曲や外腸骨動脈landingで発 生しやすい. 7 瘤拡大・瘤破裂:エンドリーク(タイプは問わず)に伴い 瘤拡大をきたす場合がある.type I,IIIエンドリークが判明すれば,すみやかな追加治療,あるいはsurgical convertが必要であるが,type IIエンドリークの場合は追加治療の効果が乏しく,また,直接的に破裂に至りにくいこともあり,現在のところ定まった治療指針がない470–474).本邦におけるEVAR後慢性期の予後は2015年までのJACSM追跡調査文献を参照されたい440).EVARは瘤を処理しないため,慢性期において破裂,瘤関連死亡などの重大イベントが発生しやすい治療方法である.また,これら重大イベントの発生は時間経過とともにプラトーにはならず,定まったフォーマットによる継続したフォローアップがきわめて重要である340). 2.3 その他の血管内治療 大動脈瘤・大動脈解離に対するTEVAR・EVAR以外の血管内治療としては,真腔狭窄,malperfusion症例に対す る血管内開窓術と真腔へのベアステント留置が挙げられる475–481).推奨と詳細については,第6章の「3. Stanford B型大動脈解離」(P. 111~)を参照されたい. 腎機能低下・腎不全患者に対するTEVAR/EVARは妥当か推奨慢性腎臓病患者に対するTEVAR/EVARは,腎機能悪化のリスクはあるが,その低侵襲性の有利さを否定するほどに不利ではない.しかながら,急性腎障害や造影剤腎症の発症予防に努めることが肝要である. 手術成績:慢性腎臓病(CKD)患者における大動脈瘤の侵襲的治療では,EVAR,TEVAR,外科手術を問わず, CKDが進行するほど死亡率や術後合併症が増加する482–485).EVAR,外科手術ともに,CKDステージ4以上(eGFR≦29 mL/min/1.73m 2)ではステージ3以下の患者に 比べ成績が不良であったが,両治療法間では差を認めなかった.一方,ステージ3(eGFR: 30~59 mL/min/1.73m 2)では,外科手術において死亡率や心血管イベント,急性腎障害(acute kidney injury,AKI)の発生率が有意に高く482),中 等度CKDに対してはEVARが手術に比べ有利である.造影剤使用とAKI発症:TEVAR/EVARにおいて,術後AKI発症の主原因の一つとして造影剤腎症(contrast medium-induced nephropathy,CIN)を常に念頭に置く. CIN発症の危険因子としては,CKD,高齢,貧血,糖尿病,慢性心不全,脱水,腎毒性のある薬物の使用486)があり,また造影剤使用量に発症リスクが比例する487).AKIの原因はCIN以外に,周術期血行動態の変動,術中操作に伴う微少塞栓も重要な因子488)である.腎動脈上ステントを有するデバイスは,腎機能に影響がないとする報告もあるが489–491),腎動脈上血栓の場合には慎重な留置が必要である487).TEVAR/EVAR後のAKI発症は重要な術後予後規定因子であり492, 493),術中の慎重なカテーテル操作,適切なデバイスの選択,造影剤使用量や周術期管理などに留意する.なお,CINを含めた術後AKIの発症率はCKD患者で高い傾向がみられるが483),その発症率,侵襲的治療との関連性や造影剤使用量の上限について十分なエビデンスはない. CINの予防:CINは一般に,ヨード造影剤投与後72時間以内に血清クレアチニン値が前値より0.5 mg/dL以上または25%以上上昇した場合と定義される494).CIN予防のためには造影剤使用量の低減以外に,術前術後の生理食塩水輸液が有用とされてきたが495),近年のRCTにおいては,