p.57 抽出テキスト
2.2 EVAR 表10 大動脈瘤・大動脈解離のEVAR の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 侵襲的治療の適応で,解剖学的要件を満たす腹部大動脈瘤に対し,術後早期の生命・生活予後改善を期待してEVAR を施行する423–428). I A EVAR の解剖学的要件を満たさない外科手術リスク中等度以下の症例に対し,外科手術を施行する. I C 10 年以上の生命予後が期待される腹部大動脈瘤症例にはEVAR よりも外科手術を優先的に考慮してもよい316, 317, 429–436). IIb B外科手術不能の無症候性腹部大動脈瘤症例に対しEVAR を考慮してもよい437–439).(表27,P. 81 を参照) IIb B中枢側ネックの解剖学的要件を満たさない外科手術リスク中等度以下の腹部大動脈瘤症例に対しEVAR は推奨されない440–445). III C 2.2.1 適応 EVARは腎動脈下(infra-renal)AAAの標準治療の一つとなっている.EVARの解剖学的な要件を満たす腎動脈下AAA症例における外科手術とEVARの選択は,いまだ議論の多いところである.急性期の成績(生命予後と有害事象)は複数のRCTによりEVARの優位性が証明されたが423–428),10年以上の遠隔成績(生命予後)において逆転し,外科手術の優位性が証明されている317, 429–436).それゆえ両者(外科手術とEVAR)が可能な症例においては,治療近接期にメリットが多い症例ではEVARが,10年以上の予後が期待される症例においては外科手術が優先される.外科手術の高リスク症例と外科手術不能症例に対する侵襲的治療はEVARが優先されるが,年齢・解剖学的状況により,内科治療も考慮されるべきである437–439).また,デバイスごとに定められた解剖学的要件(instruction for use,IFU)を満たさない腎動脈下AAAへのEVARは推奨できないが, IFU内でのEVARの成績との間に差を見出せないという報告もあり,外科手術,内科治療によるサーベイランスと比較しながら個別に検討するべきである440, 441, 446–450). 傍腎動脈AAA,腎動脈上AAAに対するEVARの適応は限定的なものとなる.血液浄化を必要とする高度腎機能障害例においては上腸間膜動脈直下に中枢側のlanding zoneを確保できる症例が適応となるが,腎動脈を犠牲にできない(し ない)症例においては,両側腎動脈,上腸間膜動脈,(腹腔動脈)の再建が必要であるため,再建方法(開窓型/分枝付きデバイスの使用,バイパスの併用,あるいはchimney法などの併用),患者の身体状況(年齢,合併症の有無など)を含めた外科手術との比較が必要となる315, 318, 343, 451–458). 両側腸骨動脈が瘤化している場合,1iliac bifurcated device(腸骨動脈のY字型デバイス)を用いて再建を行う315, 459–466),2外腸骨–内腸骨動脈バイパスを用いて再建を行う315, 463, 467),3両側内腸骨動脈(あればその分枝)を塞栓し,外腸骨動脈landingを行い,内腸骨動脈を再建しない,といった対処があるが,両側内腸骨動脈を再建しない場合,最大63%の症例で殿筋跛行の合併があり,両側内腸骨動脈の閉塞で最大9%の腸管合併症(虚血性大腸炎あるいは虚血性腸管壊死)が発生するとされている460, 461, 468).片側の内腸骨動脈再建が強く推奨される. 炎症性AAA,AEF(多くは十二指腸),破裂症例へのEVARの適応は各論を参照されたい. 2.2.2 デバイス EVAR用のステントグラフト(SG)は,ステンレスやニチノールなどより成る自己拡張性ステントの骨格と,ポリエステル糸あるいはePTFE(expanded polytetrafluoroethylene)のファブリックとから構成される.大部分がY字型となっており,中枢側の固定部に吊り下げられるhanging typeのものと大動脈分岐部にsit downする形態のものがある. hanging typeには中枢側固定部にactive fixation用のsuprarenal stentやフックが取り付けられているものが多い. 2.2.3 治療方法 大部分の症例で両側の大腿動脈からアクセスしてY字型のSGを腹部大動脈から両側腸骨動脈にかけて移植し,瘤を体血圧から除外する.胸部同様,胸腹部造影CTなどによる詳細な画像診断をもとに「術前プランニング」を行い,中枢・末梢のlanding zoneを設定する.中枢側には長さ10~15 mm以上の拡大していない(32 mm以下)直線的なhealthy neckが必要で,末梢側には長さ10 mm以上の拡大していない(<23 mm)直線的なlanding zoneが必要となる.中枢・末梢の接合にはそれぞれ10~30%オーバーサイジングのSGが必要である.これらのlanding areaの設定以外にも,ネックと瘤を含めた大動脈の角度,ネックと腎動脈上大動脈の角度,アクセスの径などについて, IFU(instruction for use)が存在しているが,予後に直接的に影響を及ぼすという意味で中枢側のネックに関するIFUが重要である440–445).