GL検索 v0.1.0
画像は 55 ページを描画したものです
page 55

p.55 抽出テキスト

外科手術に適さない弓部大動脈瘤,胸腹部大動脈瘤症例に対し分枝再建を伴うTEVAR(ハイブリッド治療)を考慮する374–383). IIa C解剖学的要件を満たさない下行大動脈瘤(≧60 mm)に対しTEVAR を考慮してもよい341, 360–365, 384). IIb C

2.1.1 適応

胸部下行大動脈病変(胸部下行大動脈瘤,PAU,鈍的外傷性大動脈損傷(BTAI),B型解離)がTEVARの対象疾患であり,現在,本領域における標準治療の一つとなっている.特にTEVARの解剖学的要件を満たす下行大動脈瘤(破裂を含む),PAU,BTAI,および急性(亜急性を含む)complicated B型解離においては外科手術よりTEVARが優先して推奨される341, 349–365, 384–387).TAA,PAU,BTAIにおけるTEVARの基本的な目標はステントグラフトによる瘤空置と瘤内の減圧による破裂治療ならびに破裂予防であり,大動脈解離においてはentryの閉鎖による偽腔血流の減少と真腔血流の増加,偽腔血栓化による偽腔拡大・破裂の予防である.

弓部大動脈病変,胸腹部大動脈病変に対するTEVARの際には分枝再建(弓部分枝,腹部主要分枝の再建)が必要となり,開窓型/分枝付きデバイスを用いたTEVAR,分枝へのバイパスを併用するハイブリッドTEVAR,chimney法あるいはsnorkel法といった姑息的分枝再建下でのTEVARが必要で,いまだ標準治療にはなりえず,外科手術困難・高リスク症例に限定された適用が現在位置となっている374–383).上行大動脈領域にはきわめて限られた症例にのみTEVARが適用されている388, 389).

合併症のないuncomplicated B型大動脈解離に対するTEVARは,RCTとシステマティックレビューにおいて,亜急性から慢性早期(発症1年以内)における偽腔拡大予防を目的としたTEVAR(preemptive TEVAR)が保存的治療に比して生命予後,大動脈イベント,大動脈リモデリングに関し良好な成績と報告されており,推奨できる390–395).しかし,TEVARにおける治療急性期のリスクは無視できないため,uncomplicated B型解離症例すべてに適応があるとは考えられず,将来の拡大予測などによる症例選択が重要である396–401).一方,偽腔が拡大・瘤化をきたした慢性B型解離症例に対するTEVARは,その治療効果と慢性期の成績が外科手術に比して明らかに劣り,治療急性期のアドバンテージを鑑みても強く推奨できない391, 402–405).

感染瘤や大動脈食道瘻(食道癌浸潤を含む),気管支瘻(肺瘻ならびに肺癌浸潤を含む)に対するTEVARは,血行動態不安定な症例と外科手術困難例に適応がある.血行

動態不安定症例ではTEVAR後,血行動態が安定すれば,感染などの程度に応じ外科手術を追加すべきと考えられている406).

2.1.2 治療に用いるデバイス

TEVAR用のステントグラフト(SG)は基本がストレート型(I型)で,ステンレス,ニチノールより成る自己拡張性ステントの骨格と,ポリエステル糸あるいはePTFE(expanded polytetrafluoroethylene)より成るファブリックで形成されている.SG径,SG長はメーカーごとに一定のバリエーションが存在する.中枢と末梢とで大動脈径に違いがあることが多いため,SGにも4~10 mmのテーパー型が存在する.多くの場合は16~24 Fr(ID)シース内に格納された状態で大動脈内に運ばれる(Gore社のデバイスのみが特殊なラッピングシートに包まれた形でカテーテル先端に固定され,この状態で大動脈内に挿入される).腹部のそれとは異なり,デバイス先端のベアステント部分にactive fixationのフックなどが付いていないのが胸部デバイスの特徴である.これは逆行性A型大動脈解離などの大動脈損傷を避ける目的と, SG留置後の中枢側landing部分にかかるずり応力の違いに起因するものと思われる.

2.1.3 標準的治療方法

治療は胸腹部造影CTなどにより得られた詳細な画像診断をもとに,「術前のプランニング」から始まる.病変部分(瘤化部分あるいはentry)の中枢側ならびに末梢側に20 mm以上の健康で直線的な大動脈壁が存在すること(healthy landing areaの存在)が大前提となる.ただし,大動脈解離の場合は,特に末梢側において解離大動脈壁の真腔をlandingとしなければならないことが多い.SGのlandingの範囲はIshimaruらのZone分類(図51)にて標準化されている.また,SG径はそのlandingする大動脈の径に対し10~30%のオーバーサイズが必要なことより,SGが接合する大動脈の径は42 mm以下が原則となる.

胸部下行大動脈瘤(遠位弓部大動脈瘤)やB型大動脈解離へのTEVAR施行の際には,良好な中枢側landingを得るため,しばしば左鎖骨下動脈をカバーする形でSG留置が行われる(Zone 2 landing).この場合,左鎖骨下動脈を単純閉鎖するか,バイパスなどにより血行再建を行うかは,当該症例の側副血行の良悪ならびに症状出現の可能性,あるいはその身体状況(合併症の有無)を鑑みて決める必要があるが,脳・脊髄神経合併症の観点からは再建(左総頚-左鎖骨下動脈バイパスなど)が推奨されている372, 373). TAAAの場合,腹腔動脈をカバーしてその末梢側landing