p.54 抽出テキスト
指摘されている331).したがって,頚動脈狭窄症を合併する患者では,大動脈瘤の侵襲的治療の前後,特に術後の薬物治療が有益である.ただし,大動脈瘤術前の頚動脈スクリーニングの有益性は証明されておらず332),ルーチンでの術前スクリーニングは推奨されていない.ESVSのガイドラインでは,複数の血管危険因子を有する患者において,無症候性頚動脈狭窄の選択的スクリーニングを行うことが推奨されている.これは,侵襲的な頚動脈インターベンションの適応例を探すためではなく,薬物治療によって遠隔期の心血管系疾患による死亡や合併症を減らすことを目的としている333).無症候性頚動脈狭窄症の患者において,大動脈瘤術前の予防的な頚動脈内膜剥離術またはステント留置術は,それが重症であっても有益性は証明されていない333). 1.6.8 大動脈疾患と抗菌薬治療 抗菌薬治療については,二次感染によりAAA拡大に関与するクラミジア肺炎に有効なドキシサイクリンやロキシスロマイシン投与が12ヵ月後の大動脈瘤拡大を抑えたとの報告があるが,2つのRCTで検証され,拡大抑制に有意な有益性を認めなかった334, 335).一方,フルオロキノロン系抗菌薬の使用は,動物実験において血管壁にマトリックスメタロプロテイナーゼの発現を促進し結合組織に影響を与えることが報告されており,観察研究においても大動脈瘤や大動脈解離の発症リスクを,ペニシリン系抗菌薬を使用している患者より上昇させることが報告されている336–338).米国FDAでは2018年12月の勧告で,大動脈疾患患者および大動脈疾患高リスク者へのフルオロキノロン系抗菌薬の投与を控えるよう勧めている. 2 血管内治療 表8大動脈瘤・大動脈解離の血管内治療(TEVAR/EVAR)の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル TEVAR,EVAR の適応は症例ごとの解剖学的要因(TEVAR,EVAR の解剖学的要件)を主として,病因,併存疾患,余命などを考慮に入れ,他の治療法(外科手術,内科薬物治療)と比較したうえで,総合的に判断する. I C瘤の中枢・末梢にTEVAR では20 mm以上,EVAR では10~15 mm 以上の健常なlanding zone の確保が必要である.また,それぞれのlanding zone において,大動脈径の10~30%オーバーサイジング径のステントグラフトで行う. I C TEVAR,EVAR はそれぞれの大動脈血管内治療に熟練した施設,治療チームにおいて,外科手術チームのバックアップ態勢の下に行う. I C TEVAR,EVAR 後は定まった画像検査法を用いた定期的な(1,6,12ヵ月後,その後は1 年ごとの)フォローアップを生涯にわたり行う.異常が指摘された場合はさらに短い間隔でのフォローアップを行う339, 340). I C TEVAR,EVAR 後にエンドリークが判明した場合,type I,III は可及的すみやかに, type II, V は瘤径拡大を認めた場合に追加治療を行う341–348). I C大動脈血管内治療に熟練しておらず,外科手術チームのバックアップのない施設におけるTEVAR,EVAR は推奨されない. III C 2.1 TEVAR 表9大動脈瘤・大動脈解離のTEVAR の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 解剖学的要件を満たす下行大動脈瘤破裂に対しTEVAR を施行する349–353).(表21,P. 74 を参照) I C侵襲的治療が必要で,解剖学的要件を満たす外傷性大動脈損傷に対しTEVAR を施行する354–359).(表33,P. 96,および表56,P. 160 を参照) I C解剖学的要件を満たす下行大動脈瘤(≧60 mm)に対しTEVAR を施行する341, 358, 360–365).(表17,P. 70 を参照) I C解剖学的要件を満たす下行大動脈瘤(55~59 mm)に対しTEVAR を考慮する341, 358, 360–365). IIa C脊髄虚血のリスクが高い(ステントグラフト長≧200 mm または腹部大動脈瘤術後)胸腹部の大動脈瘤・解離に対するTEVAR 施行の際には,脳脊髄液ドレナージを考慮する366–371). IIa C中枢Zone 2 landing のTEVAR において中枢神経障害を防ぐための左鎖骨下動脈・再建を考慮する372, 373). IIa C