p.51 抽出テキスト
PQ 4 作用型Ca拮抗薬は急激な降圧・反射性頻脈により心筋虚血が誘発される可能性があり,注意を要する.一方,心筋梗塞後症例においては,内因性交感神経刺激作用のないβ 遮断薬が心筋梗塞の再発や突然死を抑制し284),ACE阻害薬が,左室リモデリング抑制や心不全,突然死などの心イベントの抑制により,生命予後を改善する285, 286).したがって,心筋梗塞後はレニン・アンジオテンシン系阻害薬(ARBよりもACE阻害薬が望ましい)とβ 遮断薬の併用が第一選択である280). d. 心不全 LVEFが40%未満の心不全では血圧が正常または低値のことが多い.標準的な降圧薬として,ARB・ACE阻害薬,β 遮断薬,利尿薬が使用される.レニン・アンジオテンシン系阻害薬(ARBよりもACE阻害薬が望ましい)とβ 遮断薬は,心不全による再入院の予防を含め長期予後を改善する.利尿薬は臓器うっ血の治療や予防に有効である287).ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は標準治療を受けている低LVEF合併心不全の予後を改善する288).一方, LVEFが50%以上に保持されている左室拡張機能障害に起因する心不全の予後を改善する薬物はない.個々の病態に応じて降圧薬を選択する. e. 心房細動 ARB・ACE阻害薬を中心とした降圧薬を選択する. ARB・ACE阻害薬は心不全や心室肥大の合併例において心房細動抑制効果が高い289).一方,発作頻度の低減,再発,慢性化の予防については明確なエビデンスはない. f. 慢性腎臓病(CKD) 蛋白尿がある慢性腎不全では,ARB・ACE阻害薬が推奨される.糖尿病がなく蛋白尿も認めない場合,ARB・ACE阻害薬,Ca拮抗薬,サイアザイド系利尿薬のいずれかが推奨される280). g. 糖尿病 糖尿病合併例での降圧薬の選択は微量アルブミン尿の有無により異なる.微量アルブミン尿を認める場合はARB・ ACE阻害薬を,認めない場合はARB・ACE阻害薬,Ca拮抗薬,サイアザイド系利尿薬の4剤から選択する280). 大動脈瘤症例と慢性大動脈解離症例の血圧管理目標値は推奨血圧管理は130/80 mmHg未満を目標とするのが望ましい. 本ガイドライン2011年改訂版において,TAAに対し,収縮期血圧105~120 mmHgを達成目標としていたが,確固たるエビデンスはない.併存疾患,年齢,フレイル(虚弱性)など総合的に判断したうえで,原則として130/80 mmHg未満を目標とした血圧管理が望まれる96). 使用する降圧薬として,AAA患者へのβ 遮断薬の投与に関しては,プロプラノロールを対象としたRCTの結果, AAAの拡大速度を落とすことができなかったうえに,患者のQOLも低下させた290).しかしながら,慢性心不全や冠動脈疾患などの併存疾患によっては,β 遮断薬の使用は有用な場合もあり,症例ごとに検討する必要がある.それ以外の疾患については,β 遮断薬使用による慢性大動脈解離における解離後のイベント発生率の低下276),Marfan症候群における瘤拡大と予後の改善277),などの報告がある. また,β 遮断薬以外の降圧薬についても,同様にAAAの拡大を抑制できたという報告はない278, 279).各大動脈疾患における降圧薬選択は,併存疾患との兼ね合いから短期・長期予後や薬物コンプライアンスを考慮して行うべきである.大動脈疾患以外の併存疾患がない高血圧症例に対しては,Ca拮抗薬,ACE阻害薬/ARB,利尿薬の3種の中から選択する280). 表7大動脈疾患の併存疾患に対する降圧薬の適応 Ca 拮抗薬ARB/ ACE 阻害薬サイアザイド系 利尿薬β遮断薬 左室肥大〇〇左室駆出率(LVEF)が低下した心不全〇〇〇頻脈〇*〇狭心症〇〇心筋梗塞後〇〇蛋白尿/微量アルブミン尿を呈する慢性腎臓病〇 *非ジヒドロピリジン系