p.50 抽出テキスト
での偽腔血栓のCT値や偽腔隔壁の厚み,造影CT検査による真腔の形状などから総合的に判断する. 慢性期であると判断された場合には,瘤化部分の拡大速度を判定する必要があり,初診から3~6ヵ月後に単純CT検査で瘤径を確認する.発症時期が明らかである慢性大動脈解離(急性大動脈解離のフォローアップ症例)は発症後1,3,6,12ヵ月でCT検査を行い,瘤径の絶対値と拡大速度の2項目を中心に観察する.初期診断でULPを認める場合には,造影CT検査で形態変化も観察する.慢性期にULPが新規に出現する場合もあり,発症6ヵ月以内に1度は単純・造影CTを撮像することが推奨される. 慢性大動脈解離は,瘤径45 mm未満では年1回のCT検査で十分である.瘤径45 mm以上55 mm未満では3~6ヵ月に1度の連続したCT検査を行う.慢性大動脈解離(解離性TAA)に対しては,5 mm/半年以上の拡大または60 mm以上で侵襲的治療の適応とし,55 mm以上60 mm未満では全身状態,解剖学的条件,予想される手術侵襲度から,上記集学的診療チームで侵襲的治療について協議する. 慢性大動脈解離のフォローアップ中には,脳梗塞,心不全などの心血管イベントも多く,外来経過観察において,動脈硬化性疾患の危険因子,弁膜症,不整脈などを非侵襲的検査によりスクリーニングし,適切な管理を行う. 1.6 併存疾患に対する内科治療 大動脈疾患を管理するうえで,合併する危険因子や併存症への内科的アプローチは重要である.以下に高血圧,脂質異常症,糖尿病,喫煙,心不全,冠動脈疾患,頚動脈疾患について概説する. 1.6.1 高血圧 大動脈疾患では130/80 mmHg未満を目標に厳格な血圧管理が望まれる96).β 遮断薬は慢性大動脈解離における解離後のイベント発生率の低下276)や,Marfan症候群において瘤拡大速度の低下をもたらし,予後を改善する277).一方AAAに対しては,β 遮断薬を含むいずれの降圧薬も瘤拡大を抑制しない278, 279).したがって,大動脈疾患における降圧薬の選択は,併存疾患との兼ね合いも含め,短期・長期予後や薬物コンプライアンスを考慮して選択すべきである.併存疾患のない高血圧に対しては,Ca拮抗薬,レニン・アンジオテンシン系阻害薬(ARB・ACE阻害薬),利尿薬の3剤の中から選択する280).大動脈疾患の危険因子または併存疾患別の降圧薬選択について記述する(表7). a. 高齢者 誤嚥性肺炎を繰り返す高齢者にはACE阻害薬,骨折リスクの高い高齢者にはサイアザイド系利尿薬281),その他の高齢者にはCa拮抗薬,ARB・ACE阻害薬,サイアザイド系利尿薬が推奨される.β 遮断薬は心筋梗塞後,左室機能の低下した心不全合併例,その他不整脈などの心疾患合併例において投薬を検討する280). b. 脳梗塞 脳血管障害の再発と認知症に対し,ACE阻害薬と利尿薬の併用の抑制効果が報告されている282).必要に応じてCa拮抗薬の追加が検討される.β 遮断薬は他の降圧薬と比して脳血管障害再発予防効果が弱いとされるが,併存する心疾患とのバランスから投薬を検討する. c. 冠動脈疾患 狭心症に対しては,Ca拮抗薬と内因性交感神経刺激作用のないβ 遮断薬が第一選択薬である283).ただし,短時間 図50 慢性大動脈解離の診断・治療カスケード 定期的なサーベイランス(CT 検査) ◆ 45 mm 未満:1 年ごと◆ 45 ~55 mm 未満:3 ~6ヵ月ごと 侵襲的治療を検討はい 初診3~6ヵ月後にCT再検 1,2のいずれかを満たす 1 瘤径が60 mm以上2 半年で5 mm以上の瘤径拡大 いいえ *瘤径が55 mm以上60 mm未満では, 全身状態, 解剖学的条件, 予想される手術侵襲度から専門チームで侵襲的治療について協議する.