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p.47 抽出テキスト

1 内科治療

1.1 内科治療の目標

大動脈疾患に対する治療目標は疾患病期により異なる.ある病期においては内科治療が中心であり,一定の病期にまで進行すれば侵襲的治療が必要となる.侵襲的治療の有無にかかわらず,診断後は一生涯のサーベイランスと質の高い内科治療の継続が必要である.手術適応前の病期においては,瘤や解離の拡大予防と併存疾患の進行を防ぐことが最大目標となる.画像検査を用いた定期的なフォローアップにより侵襲的治療のタイミングを逃さず,専門チームで協議のうえ適切な手術方法を選択し,患者を大動脈関連死から守らなければならない.

手術後も一生涯のサーベイランスと併存疾患管理は必須であり,併存疾患,特に他の血管疾患に対する診断・治療とその発症危険因子への内科治療の「質」は,大動脈疾患患者の生命予後,経過に強く影響を及ぼす.

1.2 腹部大動脈瘤

AAAの診断・治療カスケードを図47に示す. AAAは原則無症状であり,健診や他疾患の精査中に偶発的に診断されることが多い.実臨床では腹満感,便秘,非特異的な腰痛などの症状からAAAの診断に至ることは珍しく,破裂症例の8割以上が救命不能であることから265, 266),いかにして無症状時にスクリーニングを行うかが重要となる.拍動性腫瘤の触診は,診察室において簡便に行える有用なスクリーニングの手段である.また,大動脈瘤罹患の可能性が高くなる,65歳以上の男性や65歳以上の喫煙女性267),第一度近親者に家族歴を有する者268, 269)に対しては,腹部エコー検査によるスクリーニングを積極的に考慮すべきである. AAAの診断にはCT検査を行い,最大短径30 mm以上

で診断に至る270).侵襲的治療の適応は,最大短径で男性55 mm以上,女性50 mm以上が推奨されているが,年齢や体格,性別や大動脈瘤の形態,拡大速度によって適応径未満でも侵襲的治療を考慮する場合がある.侵襲的治療の適応を満たさない場合は,初回指摘のAAAであれば半年後に再検を行い,5 mm以上の急速拡大の有無を確認する.既知のAAAでは,それぞれの瘤径に応じて定期的にCT検査でのフォローアップを行う.

AAAの拡大,破裂の重大な危険因子である喫煙に対しては,徹底した禁煙指導を行う271–273).薬物治療における瘤拡大抑制のエビデンスはないが,血圧管理をはじめ,心血管疾患発症リスクの低下を目標とした動脈硬化危険因子に対する管理と動脈硬化性疾患スクリーニングを厳格に施行する.

1.3 胸部大動脈瘤

TAAの診断・治療カスケードを図48に示す. TAAの多くも無症候性であり,健診や他の疾患の精査中などに偶然発見されることが多い.自覚症状としては嗄声,嚥下困難,胸部痛,背部痛などがある.TAAの診断にはCT検査が有用である.最大短径が45 mm未満では1年ごと,45 mm以上55 mm未満であれば3~6ヵ月ごとにCT検査を行う.

初回のCT検査において55 mm以上であった場合には,手術リスクを考慮し侵襲的治療を検討する.Marfan症候群などの遺伝性結合織異常の症例では,45 mm以上で侵襲的治療を検討する(詳細は表49,P. 141を参照).一般的に瘤径拡大速度は1.0~4.2 mm/年であるが118, 274),小径では遅く,瘤径の拡大とともに速くなるため,観察期間間隔は瘤径により判断する.瘤径が半年で5 mm以上増大する場合は破裂のリスクが高いため,侵襲的治療の対象とする.嚢状TAAでは瘤径が大きくなくても破裂のリスクが高いので,形態に留意して侵襲的治療を検討する.

第4章 治療法の選択