p.43 抽出テキスト
影が必要な場合がある.digital subtraction angiography (DSA)の精度の向上から,細径カテーテルを用いた経動脈性DSAが行われる.カテーテルには通常4~5 Frのピッグテールカテーテルまたはその類似型のものを用いて,上腕動脈または大腿動脈から経皮的に挿入し,カテーテル先端を上行大動脈や下行~腹部大動脈に置いて造影する.撮影方向は,胸部では左前斜位50~60°と右前斜位20~ 30°の2方向撮影が,腹部では正面像が基本となる. 3.6 エコー検査 大動脈疾患の評価や治療には主にCT検査や血管造影検査などの放射線画像診断が用いられるが,エコー検査には放射線画像診断にない利点がある.すなわち,放射線被曝がない,患者の移動が必要ない,リアルタイムに情報が得られる,組織の性状や血栓化の過程を評価できる,などである.さらに,ドプラ法によって造影剤を使わず血流情報が得られ,最近の3Dエコーを用いればCT・MRI検査のような種々の走査面の断層画像や立体画像を得られる.また,コストも他の画像診断に比べて安価である.一方,空気や骨などで描出が妨げられることや,検者の技術力の差がそのまま診断の精度に影響しうるといった欠点がある. エコー検査には,体表から走査する通常のエコー法(体表エコー)に加えて,半侵襲的な経食道エコー法(TEE),観血的な血管内エコー法(IVUS),心腔内心エコー法(ICE)などがある.近年,ポケットサイズの携帯エコー(ポケットエコー)も登場し,基本的な身体診察法の一部になりつつある176–178). 3.6.1 ERとICUにおける体表エコー検査 重篤な患者には,point of care ultrasound(POCUS)やfocused cardiac ultrasound(FOCUS)といった,系統的ではなく臨床上重要と判断されたものを中心に評価するエコー検査が行われる.体表エコーで骨や肺,腸管などを避けて音響窓(acoustic window)を見つけ,大動脈の情報を得る.胸部大動脈は胸骨傍,心窩部,心尖部,胸骨上の走査で描出し,腹部大動脈は腸管を避け実質臓器を通して描出する.また,弓部分枝は頚部から,大腿動脈は鼠径部から描出する(図44) 178).さらに,傍脊椎走査による下行 大動脈の描出や179),結腸後方走査による腹部大動脈描出178)も音響窓となりうる. 急性大動脈症候群(AAS)の診断において,エコー検査の有用性が多数報告されている180–185).急性解離では多彩な症状を呈するため初期診断が難しく,治療成績を左右することから186),エコー検査を活用することが必要である.また,症状と心電図所見から急性心筋梗塞を疑い,PCIが行 われ187),線溶療法により救命困難になったり188),抗凝固薬・抗血小板薬の投与で長期死亡率が高まったりすることがある189).POCUSやFOCUSを適切に用いることによって,誤診率や診断までの時間,死亡率を減らすことができる190). 脳卒中は発症早期の線溶療法で良好な治療効果が得られ,搬送前のt-PA投与が普及しているが,脳神経症状を呈している大動脈解離の患者では致命的となる.本邦でも死亡例が少なからず発生していることから,国立循環器病研究センターから声明が出され191),Dダイマーと頚動脈エコーが推奨されている.頚動脈は体表からわずか数cm以内の深さにあり,ポケットエコーでも評価可能である192). AAS診断のゴールドスタンダードは造影CT検査であるが,初療(とくに地域医療での)ではAASを疑っても,造影剤アレルギーや腎機能障害を考慮して単純CT検査のみ行われることも少なくない.造影を行っても,造影不良であったりbloom artifactなどで疑陽性となったりすることもある193).侵襲的治療(外科手術,SG内挿術)に到達できれば9割が救命可能なことを考慮すると,迅速かつ簡便なエコー検査により,誤診やそれによる搬送の遅れを回避することが望ましい.ただ,TEEはCTと同等の診断能があるが194),挿入の刺激で破裂を誘発することがあり195, 196),初期診断には最適とはいえない. 3.6.2 術中エコー検査 AASでは,術前評価が不十分なまま手術せざるを得なかったり,術中に破裂や新たなmalperfusionが発生したりすることもまれではない.その際の方針を決定したり変更したりするためにTEEが有用である197–199).TEEは手術操作を中断せずに大動脈基部から腎動脈レベルの情報がリアルタイムに得られる200–203).ただ,検者の熟練度が評価に影響することと,食道損傷に注意が必要である.また,術野からdirect echo(epiaortic echo)を行うことにより,大動脈基部~弓部大動脈の情報を得ることが可能である. a. 破裂の診断 AASは心嚢内破裂や胸腔内出血を起こすことがあるが, TEEによって迅速な診断やリアルタイムの出血量の評価ができ,適切な対処を可能にする.血胸で破裂部位が不明な場合には,縦隔内血腫内のエコーフリースペースが破裂部位の特定に参考となることがある204). b. malperfusion(分枝灌流障害) 分枝動脈や臓器実質内の血流,心や腸管の動きで評価する205).放射線診断のdynamic/static obstructionは造影剤が早期に到達する範囲で評価されるが,エコー評価は大動脈,分枝動脈内の真腔,偽腔それぞれの大きさや血流を