p.36 抽出テキスト
PQ 3大動脈瘤の大きさはどのようにして計測するか 推奨大動脈瘤径の計測は,大動脈長軸に直交する断面像において,長径と短径を計測する. 背景:大動脈瘤径の計測は,CT軸位断面像における最大短径を用いることが推奨されてきた.蛇行部位における軸位断面像では,長径は瘤径を反映しないためである.しかし,大動脈瘤は常に正円形に拡張するわけではない.偏心性の拡張は,嚢状大動脈瘤はもちろんのこと,紡錘状大動脈瘤においてもよくみられる所見であり,特に慢性大動脈解離においては,偽腔側の偏心性拡張は高率である.遠位弓部や横隔膜上の蛇行部分においては,頭尾側方向への偏心性の拡張は,軸位断面像では評価できないため,軸位断面像における最大短径のみの評価では,嚢状瘤の見落としや破裂リスクの過小評価につながる恐れがある.システマティックレビューのまとめ:CT検査における最大径評価法の検討は,AAAを対象として行われており, TAAにおける検討は見当たらない.AAA径は,任意断面像が作成可能なエコー検査で正確に把握できる.大動脈長軸に直交する断面像を正確に作成することが困難な場合,前後径を指標とした方がバラツキは少ない133).CT軸位断面像におけるAAA最大短径の評価では,偏心性拡大をきたした瘤径を過小評価する可能性が指摘されており116),軸位断面における前後径による評価よりも過小評価となる.また,直行断面の評価では,center line法を用いた自動解析の方が手作業によるmulti-planar recon struction(MPR)像構築よりもバラツキが少ない134).その他の考慮すべき要因:本邦の医療施設では,CT検査のDICOM画像を編集し,center line法などで任意のMPR像を構築するソフトウェアが普及しているが,クリニックレベルでの普及は十分ではない.CT像などの画像 を撮影した施設で再構築されなかった画像を,患者のかかりつけクリニックの担当医が再構築することは困難と考えられる.偏心性に拡大した大動脈瘤に対する治療介入の基準は確立していない.ガイドライン委員会での議論:CT・MRI検査の画像診断を依頼された施設においては,嚢状瘤の見落としを防ぎ,偏心性拡張を正しく認識するため,少なくとも遠位弓部・横隔膜上など,蛇行がみられる部位におけるMPR像を構築することが望まれる.その設備がない施設においては,軸位断面像における最大短径を指標とするが,瘤が描出されるスライス数とスライス幅から,頭尾側方向の拡張を見落とさないように注意する.偏心性に拡張した大動脈瘤の破裂リスクを短径のみで推定することは,リスクの過小評価につながると考えられる.介入基準を長径とするか,平均径とするかに関しては,今後のエビデンスの蓄積が待たれる.まとめ:大動脈瘤径の計測は,大動脈長軸に直交する断面像において,長径と短径を計測する.腹部大動脈など,エコー計測が可能な部位では,測定時に大動脈長軸に直交する断面像を正確に作成することが重要である.これが困難な場合,腹部エコー検査では前後径を指標とする. CT・MRI検査においては,検査実施施設においてMPR像を作成し,大動脈蛇行部位における頭尾側拡大を評価する.設備がない場合は最大短径を指標とするが,瘤が描出されるスライス数とスライス幅から,頭尾側方向の拡張を見落とさないように注意する. 3.2.3 大動脈解離のCT像 CT検査は信頼性が高く非侵襲的であること,全大動脈を評価できること,緊急に対応して短時間で検査できることから,大動脈解離の診断に必要不可欠である.大動脈解離は,1進展範囲(Stanford分類,DeBakey分類),2偽腔の血流状態(偽腔開存型,ULP型,偽腔閉塞型),3病期(急性期,亜急性期,慢性期)によって分類され,これらの3つの要素を組み込んで病型・病態を表現する.CT検査では上記の存在診断の病型分類(進展範囲,偽腔の血流状態,entry/re-entryの同定)に加え,合併症(破裂,心タンポナーデ,malperfusionなど)を診断することも重要である. 撮像は単純CT,造影CT早期相と後期相が基本である.最近ではMDCTによって全大動脈を短時間の息止で撮像することが可能となっており,施設の装置性能を把握してCT検査を施行する必要がある.横断像上で大動脈解離を 図31 腹部大動脈瘤のhigh-attenuating crescent sign (HAC sign)単純CTにて大動脈瘤の辺縁部に三日月状の高吸収域を認め,highattenuating crescent signが示唆される(↑).