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p.28 抽出テキスト

が必要である75).解離が大動脈弁輪部に波及した場合に弁交連部と弁輪が大動脈壁から剥れて内下方へ押しやられ,弁尖が左心室内に下垂した状態となって逆流をきたす.特に,無冠尖から右冠尖へと解離が進展すると,同部位の弁尖支持を失って下垂しやすい.症状としては胸痛の後に呼吸苦などの心不全症状が出現する. ii. 急性心不全

大動脈弁閉鎖不全および冠動脈血流低下や心筋梗塞により呼吸困難などの急性左心不全をきたすことが多い.一方, B型解離でも心筋虚血や既存の拡張機能障害,コントロール不良の高血圧により左心不全症状を呈することがある. iii. 凝固異常と発熱,呼吸障害

大動脈解離による播種性血管内凝固症候群(DIC)は,急性期に破裂による大量出血や偽腔内の大量血栓形成によって生じることが多いが,慢性期や術後においても血液凝固能異常が遷延して発症することがある.大動脈解離によるDICは線溶系亢進の病態をとる.また,破裂の有無とは無関係に胸水が貯留することは比較的多く,漿液性の場合もあれば血性になる場合もある.急性大動脈解離の発症後に血管の炎症,凝固線溶系の活性化から全身の炎症反応(SIRS)が引き起こされることがあり,約30%に38°Cを超える発熱を認める77).酸素化障害が遷延化する場合もある.

2 血液検査

大動脈瘤・解離の診断は画像検査が中心であり,血液検査の果たす役割は小さい.しかしながら,他の重篤な疾患との鑑別や,大動脈解離に合併するmalperfusionなどを診断していくうえで血液検査は有用である.さらに,大動脈疾患患者では高血圧症,脂質異常症,糖尿病,高尿酸血症,肥満ならびに喫煙などの動脈硬化性危険因子を有していることが多く,他領域に及ぶ動脈硬化性疾患に対するリスク管理を行ううえでも血液検査は重要である.

2.1 大動脈瘤

未破裂大動脈瘤を診断するための特異的バイオマーカーとしてさまざまなものが検討されており,フィブリノゲン, Dダイマー,CRP,IL-6,マトリックスメタロプロテイナーゼ9などがある78).中でも高感度CRP(hs-CRP)やDダイマーはAAAの瘤径と相関し,瘤の増大速度や破裂の予測に有用とする報告がみられる79–81).

大動脈瘤が破裂すると著明な貧血やショックに伴うアシドーシスを認めることがあり,特にヘマトクリットの急激

な低下は大動脈瘤破裂を強く示唆する.また,乳酸やLDHの上昇は各臓器のmalperfusionを示唆する.

大動脈瘤は大きいものほど凝固異常を示す傾向があり,大動脈瘤により線溶亢進型DICを併発することがある.必ずしも出血傾向を示すとは限らないが,抜歯や外傷などを契機に出血のコントロールが困難となるような慢性DICの経過をたどることがある82–84).一般に大動脈瘤に合併するDICは,血小板数の減少は軽度であり,プロトロンビン時間や活性化部分トロンボプラスチン時間がほぼ正常範囲のことも多いが,フィブリン分解産物(FDP)やDダイマーは上昇している.線溶亢進型DICの多くの症例でFDP/Dダイマー比が上昇しており,鑑別に有用である85, 86)(PQ 2, P. 29参照).

炎症性大動脈瘤では白血球やCRP,赤沈など炎症マーカーの上昇をきたす.近年,炎症性大動脈瘤はIgG4関連疾患との関連が示唆されており,IgG4関連疾患である場合にはIgG4高値に加え,IgEの上昇や抗核抗体陽性を示すことが多い87).また,感染性大動脈瘤との鑑別が必要になるが,困難であることも少なくない.

2.2 大動脈解離

急性大動脈解離の治療においては,画像診断を含めた迅速な診断が予後を決定する.そのためさまざまなバイオマーカーが検討されているが,急性心筋梗塞におけるトロポニンのような特異的なものはない.しかし,Dダイマーは急性大動脈解離の多くの症例で上昇しており,500 ng/ mLをカットオフ値とすると特異度46.6%,感度96.6%と感度が高く,除外診断に有用である88–91).ただし,偽腔閉塞型や若年者の場合は,Dダイマーの上昇がみられないことがあり,注意を必要とする92, 93).

欧米のガイドラインでは,大動脈解離診断リスクスコア(ADD-RS)とDダイマーとを組み合わせた診断アルゴリスムが検査前診断確率を高めるとして推奨されている94–99). ADD-RSは患者背景や症状・身体所見をスコアリングしたものであり,ADD-RSが0または1点でかつDダイマーが<500 ng/mLであれば,急性大動脈解離の除外診断が可能で,CT検査を省略できるとしている.一方,ADD-RSが2または3点の場合はDダイマーを測定することなくCT検査を施行すべきである.1850例を前向きに検討した結果, ADD-RSが0 または1点かつDダイマー<500 ng/mLであった924例のうち,急性大動脈解離であったのはわずか3例(0.3%)であったという報告もみられる99).一方,胸痛や背部痛の訴えがなく,脳虚血症状を呈する患者の中に急