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6 遺伝性結合織疾患による 大動脈解離 遺伝的背景により,大動脈中膜の重要な構成成分である細胞外基質の形成異常から中膜に異常をきたし,拡張や解離をきたす.Marfan症候群ではフィブリリン-1遺伝子(FBN1)の異常により中膜のミクロフィブリルが不安定化し,結合織の脆弱性が生じる.組織学的には,部位による差異はあるが,弾性線維の断裂が目立ち,断裂した弾性線 維層間に細胞外基質(主にプロテオグリカン)が貯留して,いわゆる嚢状中膜壊死(cystic medial necrosis, CMN)像を呈する.近年,TGF-β 受容体の遺伝的異常である Loeys-Dietz 症候群に加え,他の家族性胸部大動脈瘤・解離においてもTGF-β シグナル伝達経路の遺伝的異常が同定され,Marfan症候群の原因蛋白質であるフィブリリン-1もTGF-β のシグナル調節因子であることが判明している(第8章の「1. 遺伝性大動脈疾患」P. 134~を参照). 1 症状 1.1 大動脈瘤の症状 TAA・AAAは大半が無症状であり,画像検査にて偶発的に診断されることが多い.しかし,大動脈瘤の部位や大きさ,拡大速度によっては併発症状を呈するので,診察の際は大動脈瘤を鑑別の一つに挙げておくことは重要である. TAAでは咳や息切れ65),嚥下痛,嚥下困難66),嗄声を, AAAでは持続的または間欠的な腹部拍動感や腹痛,腹部不快感を自覚することがある.瘤圧迫により食事摂取時の腹満感から食欲低下をきたすこともある.一方で,大動脈瘤破裂または切迫破裂時には胸部・腹部・背部・臀部などに急激な疼痛を呈することが多く,破裂例ではバイタルサインの崩れをきたす.特殊な例として,大動脈下大静脈瘻から高拍出性心不全に起因する心不全症状,大動脈消化管瘻から吐血や下血,大動脈気管瘻から喀血を合併することがある. 1.2 急性大動脈解離の臨床症状 急性大動脈解離の臨床症状には,解離そのものによって生じる疼痛・失神と,解離が生じたことによって起こる続発症(合併症)がある.解離による続発症は,破裂・出血, malperfusion,その他の3つに大別される. 1.2.1 発症時の疼痛,失神 a. 疼痛 急性期においては疼痛が主症状であり,欧米においても大動脈解離診断リスクスコア(ADD-RS)の重要なリスクマーカーに列挙されている.大半の症例で発症時に胸部・背部に激痛を訴え,過去に経験したことのない強い疼痛と表現されることが多い.性状は鋭く引き裂かれるような痛みであり,突然発症が特徴的である.A型解離では前胸部痛, B型解離では背部痛や腹痛が特徴的である.また,痛みは解離部位の拡大とともに移動したり,逆に解離の進展が止まると一時的に疼痛が消退することもある.一方で,急性大動脈解離の6%程度は無痛性であることも重要である67). b. 失神 9~20%は典型的疼痛がなく失神をきたす68, 69).失神は,急性大動脈解離が心や脳血管に至る場合,心タンポナーデや脳虚血により生じるが,疼痛による迷走神経反射でも起 第3章 症状,検査,診断