p.177 抽出テキスト
PQ 14大動脈瘤・解離の経過観察において画像診断の果たす 役割は大きい.しかし,画像診断を適切に行うには検査法の特徴をよく理解しておく必要がある.本項では施行頻度の高いCT・MRI検査における留意点を中心に述べる. 3.1 CT検査による放射線被曝 CT装置の進歩により検査に伴う放射線被曝は低減してきているものの,若年者,特に妊娠可能な女性や小児に対する経過観察を目的に繰り返し行う画像診断としてのCT検査では,これに伴う医療X線被曝を十分に考慮し,その適応を慎重に判断することが必要で,可能な場合にはエコー検査やMRA検査などの代替手段も考慮する.放射線被曝に関連する癌発生のリスクは男性より女性の方が高いとされている.ただし,50歳を超えるとそのリスクは低下する1933). CT放射線被曝に関して,他施設と比べて自施設の被曝線量が高いか否かを知ることは重要であり,そのための判断基準として診断参考レベル(diagnostic reference level, DRL)が利用されている.2015年に設定された標準体格(50~60 kg)の成人に対するCT検査の診断参考レベルは,胸部1相15 mGy,胸部~骨盤1相20 mGy,上腹部~骨盤1相20 mGyである1934).自施設の線量がこれを超える場合は,診療に影響を与えない範囲で線量を低減する必要がある. 3.2 ヨード造影CT検査による造影剤腎症 表69 大動脈疾患症例における造影CT の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 高度腎機能障害(eGFR <30 mL/min /1.73m2)に対しては,造影剤腎症の予防策を講じたうえで,造影CT を考慮してもよい494, 1935, 1936). IIb C eGFRが30 mL/min/1.73m 2以上の軽度~中等度腎機能障害例では,造影剤投与後に造影剤腎症(contrast induced nephropathy, CIN)を発症する可能性は低い.一方,eGFR 30 mL/min/1.73m 2未満の高度腎機能障害例に 3 画像診断での留意点 する. a. EVAR後 原則として1,6,12ヵ月後,その後は年1回のCT検査が推奨される.一方,最近のメタ解析ではtype IIエンドリークの診断にコントラストエコー検査が有用と報告されている1931).再治療を必要とするtype I・IIIのエンドリークは通常のエコー検査で十分同定できる.EVAR後から10 mm以上の瘤径拡大を認めた場合,type IIエンドリークに対する再治療を検討する.MRI検査に関してはTEVAR後と同様である. b. 外科手術後 吻合部瘤などを評価するため,少なくとも5年ごとにCT検査やエコー検査を行う.また,外科手術後は腹壁瘢痕ヘルニアに関する注意も必要である.米国メディケアを用いた観察研究ではヘルニアの処置が4年内に5.8%に必要とされた.5年および15年の経過観察にて,吻合部瘤は1%, 12%,脚閉塞が1%,5%と報告されている.また,5年経過でのグラフト感染は0.5~5%で,二次性大動脈消化管瘻は1%未満であった321). 大動脈解離慢性期において運動制限を行うべきか推奨大動脈解離慢性期の日常生活においては,過度の制限を設けず,軽度から中等度の有酸素運動を定期的に行うことが望ましい. 慢性大動脈解離における運動に関するエビデンスは少ないが,収縮期血圧の低下効果がより高いウォーキングや軽いランニング,自転車などの軽度から中等度の有酸素運動(3~5 METs相当)を1日30分以上,週150分以上行うことが推奨される1416, 1823).胸腔内圧を上昇させるような過度の重量挙げなどは,大幅な血圧上昇をきたすため避けるべきである1416, 1823).A型解離術後の患者においても,監視下運動療法により運動耐容能の改善が報告されている1825, 1855).この際の運動強度はBorg Scale 11程度の軽度のリハビリテーションであり,運動中の最大血圧は150 mmHg前後に維持されていた1855).適切に運動療法を施行された患者では,20 kg程度の重量物の運搬や登山,ダイビングといった野外活動の再開もできたとの報告もある1932).適切にリハビリテーションを施行された症例では日常生活や性生活に制限はなく,階段昇降や自転車,ガーデニング,買い物,体重の50%程度までの重量物の運搬は許容される1824).