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p.173 抽出テキスト

medial degeneration)が生じる1869).50 mm以下の手術適応に達しない大きさでも,激しい運動で解離が起こることがある1870).このような身体的ストレスに曝されているオリンピック選手については国際オリンピック委員会によりスクリーニングが提唱されたものの,社会事情もあって, 2016年リオデジャネイロ・オリンピックでは心エコーなどの検査が行われたのは3割程度であった1871).また,身体的ストレスだけでなく,激昂など情動的ストレスも解離発症に関与するといわれている1872).

1.2.3 高血圧

大動脈解離症例の8割で高血圧の合併を認め68, 1873),逆に高血圧がある人で解離発症率が高い1873).10万人あたりの発症数は高血圧ありで21人,高血圧なしで5人であった.解離症例の約半数では発症前に180 mmHg以上の血圧が何度も記録され,病院到着前に死亡した症例では発症前の血圧が有意に高いことから1862),高血圧は治療可能な危険因子と考えられる.また,解離症例の多くは血圧の変動が大きく,夜間に血圧が低下しなかったり上昇したりすることが夜間のB型解離の発症に関連していると報告されている1874).

1.2.4 季節,時間帯,曜日

解離の発症は冬に多いとされるが1875–1883),否定的な報告もある1884, 1885).発症には気温低下が影響していると考えられ,3日間気温が低下した日に発症が多いとする報告もある一方で1877),関連がないという報告もある1884, 1885).気圧についても,関連ありという報告と1880),ないという報告がある1886).週の中では月曜日に発症が多く,死亡率は週末ほど高くなるとの報告がある一方で45, 1882, 1887–1889),差を認めないという報告もある46).週末の死亡率には救急医療体制の手薄さが影響している可能性がある.一日の中では午前中の発症が多い46, 47, 1875, 1882, 1890–1892).同様の傾向が急性心筋梗塞1893–1895)や脳卒中1896, 1897)でも認められ,血圧上昇や心拍数上昇,交感神経緊張,血管収縮に関与するホルモン,血小板凝集能などが午前中に高くなる日内変動が影響している可能性がある1898).

1.1 治療成績と救命率の現状

急性大動脈解離や大動脈瘤破裂は治療成績が向上し,手術死亡はそれぞれ9.6%,17.6%となったが42),病院到着前に約半数が死亡しているという報告もあり1862),真の救命率は著しく低いのが実状である.この状況を解決するための方法は,両疾患で異なる.大動脈瘤は拡大・破裂に至るまでに時間があるため,破裂前に発見して治療することが重要であり,X線検査やエコー検査によるスクリーニングが必要である.

一方,大動脈解離は発症時まで疾患そのものが存在しないため,発症を回避することと,発症後には可及的すみやかに治療することが必要になる.後者は本ガイドラインの第6章に委ねるが,前者については,確実な予防策がない以上,発症の引き金となる因子を回避し,それが困難なら発症しやすい状況を把握して準備すべきである.

1.2 大動脈解離の危険因子

1.2.1 大動脈径

胸部大動脈径が60 mmを超えると解離,破裂ともに起こりやすくなるため535, 635, 1863),大動脈拡大を検知して予防的に治療することが有効である.しかし,Marfan症候群でなくても径40 mm以下で解離を発症することがあり1864–1866),他の因子の関与がうかがわれる.

1.2.2 身体的・精神的ストレス

重量挙げや激しい運動が解離の発症に関与する可能性がある1867, 1868).バーベルを上げると血圧は300 mmHgを超え,繰り返すことにより大動脈壁に中膜嚢胞変性(cystic

1 疾患予防

第10章 大動脈疾患診療の諸問題