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p.171 抽出テキスト

化や二酸化炭素貯留に注意する.弓部置換術後や高齢者の術後では嚥下機能が低下することが多く1856–1859),術前から嚥下機能評価,嚥下訓練を考慮し,術後はとろみ食の導入などの嚥下摂食療法を積極的に導入する.

弓部置換術や上行置換術で冠動脈血行再建術を併施された患者では,リハビリテーション前後の心電図変化に注意しながら段階的な歩行負荷やシャワー負荷を随時行い, ADL拡大を図る. b. TEVAR後

TEVARでは術創が鼠径部であるため,その影響はEVARと大差ないが,血圧管理や画像診断はより厳格に行うことが推奨される.SCIを合併するリスクが高い場合や,一過性に対麻痺症状が出現した場合は,血圧低下による症状誘発・悪化が懸念されるため,高めの目標血圧設定が必要になる.

脊髄ドレナージ挿入中は安静度を上げられないため,ドレナージ抜去後に立位からリハビリを開始する.その際も,血圧低下や対麻痺の出現,低髄圧症候群の発症に注意が必要である.

2.3.4 胸部大動脈瘤治療後の対麻痺

TAAに対する外科手術またはTEVAR後に対麻痺などSCIを発症した場合,その障害の程度に応じた専門のリハビリテーションプログラム1860)が必要となる.完全対麻痺の場合は座位の保持が困難となるため,患者はベッド上生活となる.褥瘡の発生を予防するための定期的な体位変換や,膀胱直腸障害による排尿・排便への対応が必要になる.不全対麻痺の症例では残存機能の保持・改善のため,発症早期からの理学療法を施行する.

2.3.5 非破裂例(待機的手術例)と破裂例(緊急的手術例)

非破裂例と破裂例とで病状が異なり,リスク管理も異なる.破裂例では全身状態が不良で,術後合併症の発生が多い.また,術前評価も不足していることから,冠動脈疾患,脳血管疾患,肺疾患など併存疾患を把握できていない状態でリハビリテーションに取り組むことになる

2.4 周術期リハビリテーションの実施

早期の歩行練習は有用で,段階的にADLを拡大し,自転車エルゴメータなどのような低強度の運動療法に進む.

外科手術では,リハビリテーション開始基準(表65)に該当すれば集中治療室在室中から,鎮痛下に体位交換,半座位,肺理学療法などを行う.痰が多い場合はギャッジ座位での吸入療法と呼吸排痰療法が推奨される.臥床状態

ても,治療経過や全身状態に応じて個別的に判断することが望ましい.また,A型解離術後は病変が残存(残存解離)していることが多く,その日常生活と身体活動に一定の制限を設けることが一般的となっている.術後慢性期には3~5 METsの有酸素運動を,1日30分程度(150分/週)を目安に行うことが推奨され1416, 1823),努責を伴った高強度の身体負荷や息が切れる程度(6 METs以上)の有酸素運動,いきみを伴う排便などは避けるべきである.A型解離術後の患者においても,監視下運動療法による運動耐容能の改善が報告されている1825, 1855).

Marfan症候群による急性大動脈解離では,若年者が多く,他臓器の動脈硬化性疾患の合併率は少ないが,組織の脆弱性を特徴とするため,心拍数が100回/minを超えるような高強度の運動や等尺性運動,コンタクトスポーツは推奨されていない1823).

2.3.2 腹部大動脈瘤

a. 外科手術後

AAAの外科手術後では,腸管への影響が大きく,消化器症状がADL阻害要因となる1849).腹痛や腹部膨満が増悪しイレウスを発症した場合は,リハビリテーションの進行を中止して安静が必要となることもある.AAAの人工血管置換術後早期からのリハビリテーションは,腸閉塞のリスクを減らし,食事摂取を促し,創部の治癒,在院日数の短縮,早期離床,呼吸器合併症の減少といった効果があるとの報告がある1850–1853). b. EVAR後

EVARの術創は通常鼠径部のみであり,手術翌日からADL維持のため積極的にリハビリテーションを行う.内腸骨動脈塞栓を施行した症例では,リハビリテーション施行時に臀筋跛行症状に注意する.また,大動脈終末部が狭小化した症例や,高度石灰化を有する腸骨動脈症例では,脚閉塞や狭窄に注意する必要があり,術前・術後の足関節上腕血圧比を比較し,間欠性跛行の出現に注意する.

2.3.3 胸部大動脈瘤

a. 外科手術後

上行・弓部大動脈置換術では脳梗塞や嚥下障害,下行・胸腹部大動脈置換術では対麻痺,呼吸障害に注意が必要である.本邦の報告では術後早期自立に至る症例の割合が,上行置換術では75%であるのに対し,弓部や下行・胸腹部置換術ではそれぞれ39%,30%と少ない1850).自立が遅れる原因として,弓部置換術では脳血管障害が多く,胸部下行・胸腹部置換術では術後の胸水貯留やSCIが多い.下行置換術後は胸水管理や無気肺の有無に留意し,酸素