GL検索 v0.1.0
画像は 170 ページを描画したものです
page 170

p.170 抽出テキスト

手術予定のAAA患者において運動療法によって酸素摂取量や無酸素性代謝閾値といった運動耐容能が改善され1826–1828, 1844),周術期合併症や在院日数が減少することが報告されている1829).また,運動療法は瘤径を拡大することはなく,逆に手術適応前のAAA患者のリハビリテーションにより瘤拡大が抑制される可能性が示されている1845).いずれの結果も術前の運動療法を支持するものが多く,待機的手術前(特にAAA)の監視下運動療法が推奨される.

また,手術患者の高齢化に伴い一定の割合で認められる術前の軽度認知障害(MCI)や認知症は,術後認知機能障害(POCD)や術後せん妄,呼吸器合併症,術後自宅復帰の可否などと関連する1830, 1846–1848).このような症例では離床遅延も起こりやすいため,Mini Mental State Examination (MMSE)など客観的な認知機能評価を実施しておくとよい.運動機能低下や認知機能低下が認められる場合,術後自宅復帰が困難となることがあるため,術前から多職種で介護保険利用状況や家族の居住形態,就労状況などの社会環境について調査,把握し情報共有を行う.

2.2 術後リハビリテーション

術後リハビリテーションの目的は廃用症候群の予防および回復である.また,大動脈瘤の部位によってADLが上昇するまでの期間やADL阻害要因も異なることが報告されており1849, 1850),手術部位に応じた周術期リハビリテーションが必要となる.

術後リハビリテーションによってもたらされる効果として,身体機能の改善により在院日数の短縮や早期離床が可能になり,術後合併症(感染,肺炎,胸水貯留,せん妄など)の発生率も低下する1851–1854).また,早期社会復帰や社会復帰率の向上が得られ,生命予後やQOLの改善と高齢者の早期回復率向上につながる.

高齢者や虚弱性の高い症例においては,術後嚥下障害を合併する可能性が高く1416, 1823, 1825, 1855),嚥下リハビリテーションが術後呼吸器合併症の減少,QOL向上,慢性期の生命予後改善に寄与する可能性がある.

2.3 病態・治療法別の対応

2.3.1 大動脈解離手術後

A型解離に対する外科手術の多くが緊急手術であること,解離が広範囲に及ぶと血流障害に伴う臓器障害が併発することなどから,術後の全身状態や離床時のリスクは症例によって大きく異なる.そのため離床の開始時期につい

慢性期には収縮期血圧の低下効果がより高い3~5 METsの有酸素運動を,1日30分以上,週150分以上を目安として定期的に行うことが推奨されている1416, 1823, 1824).努責を伴った身体負荷(自身の100%に近い力をかけた運動:ベンチプレスや強度の等尺性負荷)は避けることが望ましい1416, 1823).A型解離術後の患者においても,監視下運動療法により運動耐容能の改善が報告されている1824, 1825).

表64 大血管周術期リハビリテーションの推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

腹部大動脈瘤の術前に循環動態を監視しつつ,心肺機能の強化を図る目的で運動療法を行う1826–1829). I A大動脈の侵襲的治療の術後早期から,動脈瘤の部位・治療法(外科手術, TEVAR/EVAR)に応じた運動療法や呼吸器リハビリテーションを考慮する1830). IIa C大動脈領域におけるリハビリテーションは,心臓領域に比してエビデンスに乏しいが,大動脈治療を受ける患者層は心臓領域に比べより高齢で虚弱性も高く,治療に伴う合併症や併存症も多いため,早期離床により術後合併症予防や入院日数短縮,生命予後の改善が期待できる.

2.1 術前リハビリテーション

待機的手術前のリハビリテーションの主たる目的は,術後急性期合併症の回避と早期の社会復帰の実現である.一般に大動脈疾患患者は心臓手術患者より高齢であり,喫煙歴を背景とする閉塞性肺疾患の合併が多い1831, 1832).術前から運動習慣のある患者ではより早期に離床できることが報告されており1833),術前の禁煙,理学療法と運動プログラムは呼吸機能を改善し1834),術後合併症の減少に寄与する.開胸・開腹手術前の呼吸器リハビリテーションが呼吸機能を改善し,術後呼吸器合併症を減少させるというRCTのエビデンスが複数存在しており,推奨される1835–1842).とくに,COPD合併例や術前呼吸機能検査で異常のある症例に推奨される.

AAA患者では術前運動療法について,複数のRCTとシステマティックレビュー,メタ解析が報告されている.心肺運動負荷試験はAAA患者に安全に施行可能であり1843),

2 大血管周術期リハビリテーション