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p.169 抽出テキスト

1.1.3 清潔

入院時より介助による清拭を開始し,洗髪,シャワー浴と順次リハビリテーションを進める.体を清潔に保つことは感染のみならず,精神の安定と入院中のQOLを確保する意味で重要である.

1.2 回復期から日常生活復帰へ

回復期のリハビリテーションは,入院中の安静に伴う身体機能低下の改善を主な目的に施行される.退院後1ヵ月以内が相当すると考えられるが,この時期における急性解離の治癒過程は十分に解明されていないため,リハビリテーションは500 m以内の軽い散歩程度にとどめる.

発症から2~3ヵ月後以降は,社会(職場)復帰し日常生活を行う時期であり,QOLに大きな影響を与えるため,きめ細やかな指導が必要となる.血圧コントロールが最も重要であるため,血圧値をエンドポイントとしたトレッドミルなどの運動負荷試験により,血圧と活動範囲の評価が必要となる.血圧コントロールは安静時血圧130/80 mmHg未満を目標とする1263).

留める.また,大動脈解離発症前から,脳血管障害や運動器障害でADLが低下している症例では,解離発症前ADL以上の負荷を避けることが望ましい.

1.1.1 初期安静時間

基本的には早期離床が重要であり,炎症性胸水による無気肺の予防,長期臥床による下肢静脈血栓症の予防,高齢者などでは強制的な安静による不穏や認知症悪化の予防が目的である1819).急性期の大動脈関連の合併症を防ぐため,最初の24時間はベッド上安静になるが,患者視野を広くして飲水や内服を容易にするため,他動体交は当日から可能とする.

1.1.2 排泄

大動脈解離では腸管血流の低下から麻痺性イレウスが発症することがある.さらに,床上での排泄は困難であり,排便コントロール困難から便秘になりやすく,これもイレウスの要因となる1389, 1822).リハビリテーションプログラムでは,ベッドサイドでの起立訓練後にベッドサイド便器(室内トイレ)の使用が可能となるため,安定している症例では早期の立位が望まれる.

表61 大動脈解離の短期リハビリテーションプログラムの例

病日安静度排泄清潔食事発症日ベッドレストベッド上清拭(介助あり),洗顔(介助あり)なし2日ベッド座位ベッド上清拭(介助あり),洗顔(介助なし)介助あり3日ベッド周囲歩行室内トイレ清拭(介助あり),室内洗顔↓ 4日↓ ↓清拭(介助なし),室内洗顔介助なし5日病棟内歩行病棟内トイレ清拭(介助なし),病棟内洗面↓ 6日↓ ↓ ↓ ↓ 7日院内自由歩行↓ ↓ ↓ 8日↓ ↓シャワー可↓ (Niino T, et al. 2009 1395)より作表)

表62 大動脈解離のリハビリテーションの開始基準・覚醒状態-2≦RASS≦1 30分以内に鎮静が必要であった不穏がない・呼吸呼吸回数<35 回/min 未満が一定時間持続酸素飽和度(SaO2) 90%以上が一定時間持続吸入酸素濃度(FiO2) <0.6・循環血圧,心拍数のコントロールが達成されている新たな重症不整脈の出現がない新たな心筋虚血を示唆する心電図変化がない・発熱38.5°C以上の発熱がないRASS: Richmond Agitation Sedation Scale (日本集中治療医学会.2017 1820)より作表)表63 大動脈解離のリハビリテーションの中止基準

・意識障害意識・鎮静レベルがRASS≦-3鎮静薬の増量,新規投与が必要なRASS>2労作時の呼吸困難,患者の拒否・呼吸状態呼吸数が5 回/min 未満40 回/min 以上SpO2が88~90%,4%以上の低下・循環動態運動療法下にて心拍数≧100/min,収縮期血圧> 140 mmHg新たな重症不整脈の出現新たな心筋虚血を示唆する心電図変化RASS: Richmond Agitation Sedation Scale (Adler J, et al. 2012 1821)より作表)