p.167 抽出テキスト
PQ 12 9.4%,外科手術27.5%とTEVARで良好な成績が報告さ れている1806). もう一つは食道切除術前または放射線化学療法施行前に行う予防的TEVARである.大動脈浸潤を疑う進行食道癌患者は,外科手術の際に腫瘍浸潤した大動脈壁を損傷しやすく,また放射線化学療法においても浸潤した腫瘍細胞が壊死し大動脈壁破綻のリスクがある732).治療前のCT検査で胸腔腫瘍性病変の大動脈浸潤を疑う場合には,予防的TEVARを行うことで出血や破裂のリスクを軽減し,安全に食道癌に対する手術や放射線化学療法を施行することが可能となる732, 1808). 同様に,肺癌をはじめとする肺疾患を有する患者では大動脈気管支瘻(ABF)の病態を呈することがあり1809–1812),この場合も重篤な出血をきたすことがある.症状は喀血が主体であるが,手術の周術期死亡率は15~24%と報告されている1813, 1814).ABFに対してもTEVARは低侵襲かつ効果的に瘻孔部を閉鎖し,出血の制御が可能であり,緊急時の有効性が報告されている1815–1817). AEFやABFに対するTEVAR後は,遠隔期のステントグラフト感染が危惧されるが,留置後6~8週間は広域スペクトラムの抗菌薬投与を行い,その後は生涯にわたる抗菌薬の内服が推奨される406).適切な抗菌薬投与により術後のステントグラフト感染は2.9%との比較的良好な成績も報告されている732). AEFを有する患者の出血に対する緊急TEVARや,大動脈浸潤を疑う手術・放射線化学療法前の予防的TEVARはいずれも有用な治療手段の一つである.しかし,これらのTEVARはいずれも保険適用外で,IFU(instruction for use)外使用となっており,その費用は病院側の負担となっているのが現状である.今後早期に保険収載されることが望まれる. 食道癌の大動脈浸潤に対しTEVARは有効か推奨出血を認める症候性の大動脈食道瘻に対し緊急TEVARを行う.また,食道切除術や放射線・化学療法を施行する前の,出血や大動脈破裂を回避する目的の予防的TEVARは有効である. 食道は解剖学的に胸部下行大動脈に近接しており,進行食道癌においては約17%で大動脈浸潤を認めると報告されている1780).大動脈浸潤を認める進行食道癌は大動脈食道瘻(AEF)にまで進行すると重篤な出血をきたすリスクが高い1779, 1802).AEFに対するTEVARは1994年に初めて報告されたが1803),その後も大動脈浸潤を伴う進行食道癌に対しTEVARで重篤な出血を予防できたという報告が多く,出血のリスクの高い進行食道癌に対しTEVARは有用な治療法となっている732, 1801, 1804, 1805). 大動脈浸潤を認める進行食道癌に対するTEVARの施行時期は,その目的により2つに分類される.一つは症候性に対する止血を目的とした緊急TEVARである.吐血を呈する症候性の進行食道癌患者に対しては,大動脈置換と食道切除が必要である.また,AEFにまで進行した場合は,リファンピシン浸漬人工血管による大動脈置換,大網充填とともに食道切除などからなる一連の外科手術が選択肢の一つであるが,侵襲が大きく,周術期死亡率は45.4~ 55%と高い406, 1806).一方,TEVARでは腫瘍浸潤している胸部大動脈へのステントグラフト留置のみで出血の制御が可能であり,短時間で低侵襲かつ効果的な方法である1807). AEFまで進行している場合は,この後に前述の外科手術が必要となることがあるが,ブリッジ手術としてもTEVARは有効な手段である.術後30日死亡率もTEVAR