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p.164 抽出テキスト

TAAに対する外科手術後1.7% 641)に対してTEVAR術後1.7% 967)と差がないが,AEF発症までの期間はTEVARの方が短い1790).

好発部位は門歯から20~30 cmの食道(上・中部)の後壁から左側壁で,食道内視鏡で位置確認できるが,大動脈側の位置を正確に記載した報告は乏しい.記載のある論文126–129)の集計では,弓部16%,下行78%,胸腹部6%で,大半が下行大動脈であった.

起炎菌は黄色ブドウ球菌が最も多く,次いで溶連菌の報告が多い.その他には,大腸菌,緑膿菌,真菌,腸球菌,肺炎球菌などがあった1790).また,MRSAを起炎菌とする場合の予後は不良で,30日死亡率は70%を超える1790).

症状としては前述のChiariの3徴候が古くから知られているが,前兆吐血は65%,胸痛は59%とあまり高率ではなく1780),CzernyらはTEVAR後AEFで不明熱81%,吐血53%,ショック22% 1778),Chiesaらは吐血68%,不明熱58%,ショック26%,胸痛5%と報告している967).外科手術とTEVARの比較検討では,痛み(73%対35%)と悪寒発熱(84%対61%)は外科手術で多く,吐血(12%対42%)はTEVARの方が多い1790).

抗菌薬投与などによる保存療法だけでは遠隔生存は得られないとの昔からの見解は,現在も変わっていない. Czernyらは食道抜去をせずに1年生存した患者はいなかったと報告し1778),Akashiらは救命するためには食道抜去,人工血管置換術(ホモグラフトを含む),大網充填が必要で,TEVARのみに留めるべきではないとしている126).食道抜去と人工血管置換術などの根治的手術の成績をみると,院内死亡率は14.3% 1781),22.2% 127),25% 1782)と良好なものから64%と不良なものまでさまざまであるが967),遠隔成績はいずれも不良で,手術成績が良かったYamazatoらの報告でも5年生存率は42.4%であった127).

感染組織は人工物も含め,除去を考慮する126, 127, 1778, 1780–1783). IIa C大動脈食道瘻では食道抜去を考慮する126, 127, 1778, 1781, 1782). IIa C癌の放射線治療や化学療法に伴う大動脈食道瘻,大動脈気管支瘻の破裂が危惧される症例に,一次性大動脈食道・気管支瘻または癌の浸潤部位に一致してTEVAR を先行させ,破綻を防止したうえで治療することを考慮する1778). IIa C

8.1 大動脈食道瘻

8.1.1 概念

大動脈食道瘻(AEF)は比較的まれな疾患であるが,予後はきわめて不良である.近年,ステントグラフト(SG)内挿術などの血管内治療の増加に伴い,二次性AEFが増加してきている967, 1778).

1818年にDubrueilが初めてこの疾患を報告している1784).Chiariは1914年に,1胸部中ほどの痛み,2初期の明赤色の少量吐血,3その後に続く大量の吐血をAEFの臨床3徴候として報告し1785),「大動脈食道症候群」とも呼称している.この臨床所見に最も合致するのは魚骨などの異物誤飲によるAEFであり,原因によって症状も異なる. 1980年にCterctekoとMokは異物誤飲によるAEFの手術で最初の成功例を報告している1786).TAAによるAEFに対しては1983年SnyderとCrawfordの成功例が最初とされている1787).しかし,今日に至っても治療成績は不良で,まとまった数の研究はいまだに少ない.

AEFの発生機序はいまだ不明であるが,食道動脈の閉塞,血腫による縦隔の炎症,瘤やSGによる機械的圧迫などから,食道壁が血流障害をきたしてAEFが生じるとの仮説がある967, 1778).一方,瘻孔形成の第一の要因としてSGや人工血管の感染を考えるべきだ1788)との意見もある.二次性AEF発生の機序として,食道の圧迫壊死,SGによる食道栄養血管の閉塞に起因する虚血性壊死,SGのオーバーサイズや繰り返すTEVARによる食道内腔の虚脱,感染瘤内の菌の閉じ込め,エンドリークなどが考えられている1778, 1780, 1789).

8.1.2 疫学

AEFの要因は表58にあるように多岐に及ぶが,一次性AEFの原因で最も多いのはTAAで,発生率は0.16%といわれている1780).二次性AEFと大動脈気管支瘻(ABF)は,表58 大動脈食道瘻の原因

TEVAR後二次性胸部大動脈人工血管置換術後胸部大動脈瘤異物誤飲食道癌食道潰瘍と逆流結核外傷性仮性大動脈瘤アルカリ溶液誤飲気管食道大動脈瘻動脈硬化性大動脈潰瘍先天性弓部大動脈異常(Hollander JE, et al. 1991 1780) より作表)