p.162 抽出テキスト
能である.また,合併疾患の種類によっては胸骨正中切開による全弓部置換術が選択される.起始異常を伴う鎖骨下動脈の再建に関しては,in situで再建する方法と非解剖学的バイパス術がある.ただし,非解剖学的バイパス術で再建した場合,周囲臓器への圧迫の症状が残存する可能性がある.憩室瘤に対する到達法とその治療法は,いずれの場合にも良好な成績が報告されている500, 1768). b. 血管内治療 ハイブリッドTEVARが選択されることもあるが,数は少なく,遠隔期成績は不明である.エンドリーク,大動脈食道瘻,上肢の虚血などの合併症も報告されており,適応は慎重に決定する必要がある. 7.2 大動脈縮窄症 大動脈弓部末梢に狭窄を生じる,最も一般的な先天性大動脈疾患であり,出生の0.5%に認める(図83).狭窄部位と動脈管(索)との位置関係により,管前型(乳児型),管後型(成人型)に分類される.動脈管開存症,心室中隔欠損症,その他の先天性心疾患を伴うことが多い.ほとんどの大動脈縮窄症は成人以前に治療される. 身体所見には上肢血圧の上昇,下肢脈拍動触知の低下,左肩甲骨での雑音聴取,スリルの触知などがある.ときに下肢の発育障害,下肢間欠性跛行,左室肥大,心不全,鼻出血,胸部単純写真での浸蝕像(rib notching)を認める. Campbellらの1歳以降の本症自然歴の報告によると,平均寿命は34歳で,死亡原因は心不全(25%),大動脈破裂(21%),感染性心内膜炎(18%),頭蓋内出血(12%),その他(24%)である1769).発達した側副血行のAbbott’s arteryは拡大すると脊髄圧迫によるSCIや破裂をきたすこ 7.1.3 診断 CT・MRI検査が有用で,周囲臓器との関係や血管輪の存在を診断できる.憩室瘤径に関して決まった計測方法はなく,瘤径による破裂や解離のリスクの基準が統一されていない.また,画像検査による周囲臓器との関係,圧迫の有無の評価が必須である.胸部X線検査では偏位した大動脈陰影を認めることもあり,嚥下障害を有する症例では食道バリウム検査でその狭窄が観察されることがある(図82-B). 7.1.4 手術適応 Kommerell憩室瘤の圧迫による嚥下障害や気道狭窄による呼吸障害がある場合には手術適応となる.しかし,多くは無症状であり,手術適応は憩室瘤の瘤径,形態により検討する.瘤径が50 mmを超える場合,起始異常を認める鎖骨下動脈の開口部が30 mmを超える場合,手術適応とするのが妥当と考える1766). 7.1.5 治療方法 a. 開胸手術 小児期,成人期においても開胸手術の目的は,Kom merell憩室瘤の切除と起始異常のある鎖骨下動脈の再建である.小児期にはKommerell憩室瘤の切除と動脈管索の離断,起始異常のある鎖骨下動脈の再建が行われる1767).成人期では憩室瘤の閉鎖,パッチ形成術よりも人工血管置換術が選択される. 憩室瘤の位置により右または左側方開胸による下行大動脈置換術と,鎖骨下動脈の起始異常を伴う場合にはその再建術が行われる.この場合,部分体外循環下で手術が可 図82 Kommerell 憩室瘤(A)と嚥下障害例での食道狭窄(B) A Kommerell憩室瘤B