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p.160 抽出テキスト

6.1 病理

交通事故による損傷は胸部下行大動脈に起こりやすく,とくに左鎖骨下動脈の分岐直後に横向きの断裂が入る例が多くみられる.断裂が大きい場合は大量に出血するため致死的となるが,損傷が小さい場合は外膜下に血腫を形成し,仮性瘤となることがある.損傷後数ヵ月から年単位で瘤化することもある.

損傷後慢性期の大動脈瘤はしばしば嚢状瘤の形態を呈する.病理組織学的には正常中膜弾性板が突然途絶し,仮性瘤となっていることが多い(図80).仮性瘤では外傷性大動脈損傷の既往歴を把握しておくことが大切である.まれではあるが,加齢などにより中膜平滑筋層の変性があると,術中の送血管などの挿入時に解離を起こすことがある.

Rabinらは損傷の程度により以下のように分類している1751).グレード1:内膜の破綻または内膜内血腫,グレード2:限局した仮性瘤(全周の50%未満),グレード3:広範囲の仮性瘤(全周の50%以上),グレード4:血管破裂または血管断裂.

表56 外傷性大動脈損傷の診断と治療の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

大動脈損傷が疑われる症例にCT 検査を行う1038, 1748). I C大動脈損傷例にTEVAR を行う96, 1749, 1750). (表9,P. 54,および表33,P. 96 を参照) I C

鈍的外傷による大動脈損傷は,急速な減速(交通事故,高所からの墜落)が主な原因で発生する1751).大動脈基部,動脈管索近傍,横隔膜など,大動脈が固定されている部位において生じやすいとされており,90%は動脈管索近傍の大動脈峡部に発生する1038, 1748).

6 外傷性大動脈損傷

図80 外傷性大動脈損傷外傷直後の腸骨動脈損傷.中膜が完全に離断し,血栓が付着している.

弓部大動脈仮性瘤

20年前の交通事故で最近,弓部大動脈瘤を指摘された.外傷により中膜弾性板層の右半分は消失し,線維化している.外膜は高度に線維性肥厚している(←→). 2年前の外傷後の仮性瘤.中膜消失部に内膜肥厚( )ができ,仮性瘤となっている.

中膜消失部↑