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p.149 抽出テキスト

3.6 shaggy aorta

表53 shaggy aorta に関する推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

治療介入中の多発性血栓塞栓症を回避するために,大動脈瘤治療介入前にshaggy aorta の有無について造影CT による評価を考慮する. IIa C

shaggy aortaは大動脈内に存在する高度でびまん性の粥状硬化病変によって,大動脈内面が麻生地のように毛羽立っている様相を指す(図67).臨床上,造影CT検査やエコー検査による画像所見を指して呼称されることが多い1695).また,shaggy aorta症候群は,胸部または腹部大動脈内での不安定で浮動性のある粥腫に由来する微細なコレステリン結晶が,明確な誘因のない自然経過として,あるいは大動脈内カテーテル操作や外科手術操作によって遊離し,末梢動脈を塞栓することによって,さまざまな臓器障害を呈する疾患群である1696).画像診断のモダリティーによって評価法が異なることから,shaggy aortaの画一的な定義は明確には定まっていないが,一般的には術前造影CT,術中経食道エコーや大動脈エコー検査上,4~5 mm以上の厚みを有する不整形で内腔へ突出した粥腫病変が広範囲に及んでいる大動脈をそのように表現し,特に可動性のある粥腫の場合には,臨床的に臓器塞栓症をきたすリスクの高い大動脈粥状硬化病変として認識されている1697).

病因と病態については,血管炎としての捉え方もあるが,遺伝的要因も含め未解明な部分が多い.内科治療法として,スタチンによる粥腫と壁在血栓の減少効果に関する報告も散見されるが1698, 1699),RCTについては今後の進捗と結果報告が待たれている段階にある1700).

大動脈瘤の侵襲的治療におけるshaggy aortaの影響を検討した報告によれば,AAA患者447例中,shaggy aortaは48例(11%)に認められ,shaggy aortaを有する患者の術後30日までの主要合併症発症率と死亡率の合計は, shaggy aortaを有しない患者に比し4.1倍高かった1701). shaggy aortaを有する患者は,術前因子として脳梗塞,慢性腎障害,閉塞性動脈硬化症の既往が有意に高かったが,上記の主要合併症と死亡に関与する主たる原因は多発性血栓塞栓症であった.このことは外科手術とTEVARのいずれにおいても当てはまり,治療法にかかわらず多発性血栓塞栓症のリスクを回避しえないことを意味している.さらに,術後5年までの遠隔成績を比較してもshaggy aortaを有する患者群において生存率が有意に低かった.

セスルートの問題がなければ,リスク・ベネフィットを考慮して血管内治療も選択する.

サンゴ様大動脈(coral reef aorta)は,腎動脈を中心とした腹部内臓動脈分枝レベルの大動脈に,きわめて高度な石灰化と内腔に進展した石灰化病変による狭窄を呈する疾患である.臨床研究の多くは症例報告であり,80例以上の報告は1報のみである1689).本疾患は,腹部内臓動脈分枝を分岐するレベルの腹部大動脈の高度な石灰化,各腹部内蔵動脈の石灰化を伴う狭窄により,腎血管性高血圧や腹部アンギナ,下肢虚血症状を呈するまれな疾患である.本疾患は他の動脈硬化性疾患と異なり女性に多いと報告されており,病因や発生機序はいまだ不明である.過去には血栓内膜摘除を中心とする外科治療が行われてきた1689)が,心合併症や多臓器不全により手術死亡率が11.6%に及び1690),近年は特に高リスク症例を中心に非解剖学的バイパス術1691)やステントグラフトによる血管内治療が行われるようになってきた1692)が,いまだ大規模な研究は行われていない.

3.5 Leriche症候群

「Leriche症候群」は大動脈腸骨動脈領域の閉塞性疾患全般の呼称とされることがあるが,大動脈腸骨動脈領域の解剖学的閉塞のみでは同症候群ではない.あくまで間欠性跛行,末梢動脈拍動の減弱・消失,性機能不全の3症状を呈する場合に「Leriche症候群」と称する.

大動脈腸骨動脈領域の閉塞の多くは動脈硬化に基づき,高齢者に多いが,Leriche症候群は主徴候として性機能不全を認め,40~60歳代で診断されることが多い.治療は通常の閉塞性動脈硬化症による大動脈腸骨動脈領域の閉塞性疾患と同様に行われ,外科的血行再建(大動脈両側腸骨動脈バイパス術,大動脈両側大腿動脈バイパス術)あるいは血管内治療が行われる.近年,血管内治療の成績が良好となり,高位大動脈閉塞(傍腎動脈大動脈閉塞)以外は血管内治療が選択されることが多くなってきた1693).欧米ではベアメタルステントに加えてステントグラフト内挿術が行われ,一次開存率は1年後87%,2年後82%と報告されている1694).間欠性跛行は上記のバイパス術や血管内治療で改善されるが,性機能不全の改善には内腸骨動脈領域の血流改善が必要であり,内腸骨動脈再建可能な症例では再建を考慮する.