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また,近年シスプラチンやベバシズマブを用いた抗癌薬治療中に大動脈血栓を呈する症例も報告されており,化学療法中の癌症例では注意を要する1684, 1685).

3.3 動脈硬化性大動脈閉塞

胸部大動脈の閉塞が動脈硬化性(変性)で生じることは,急性・慢性を含めてきわめてまれであり,腹部大動脈の急性閉塞もまれである.一方,腹部大動脈が慢性閉塞に陥った場合には,傍腎動脈大動脈閉塞まで閉塞病変が進展することもあるが,側副血行路の広範な発達により急性の虚血症状は呈さず,臨床症状として跛行症状にとどまることが多い.しかしながら,急性閉塞として発症すると致死的な病態になる.要因としては,通常の閉塞性動脈硬化症の進展,小口径大動脈(いわゆるsmall aorta)の関与,急性の場合には鞍部塞栓症,大動脈解離などが含まれる.

急性の場合,症状は血流の急激な途絶に伴って側副血行路が閉塞に陥るまで進行性に悪化し,末梢動脈拍動の消失や冷感,下垂足などの下肢急性動脈閉塞症に起因する臨床症状を呈し,下肢・脊髄神経,腸管,腎臓などに高度な虚血症状を引き起こす.診断はほとんどの場合,臨床症状に加えてドプラエコー検査でなされるが,CTやMRIなどの画像検査により,治療方針の決定に有用な情報も得られる.鞍部塞栓症では,発症後早期に血流が再開され虚血再灌流障害(筋腎代謝症候群)に陥るリスクが低い場合は血栓除去が可能であるが,遅れた場合は血流再開を断念せざるをえず,生命予後も不良である1686).慢性の場合にはバイパス術または血管内治療が行われるが,いずれも成績は良好である1687).

3.4 大動脈石灰化

高度な動脈硬化を呈する胸部大動脈は,単純写真で磁器様大動脈(porcelain aorta)として観察されることで容易に存在診断ができる.また,腹部大動脈においても同様に大動脈の走行に沿って石灰化像が認められ,容易に診断される.維持透析症例では末梢動脈のみならず大動脈においても高度石灰化を認める.いずれの領域においても,その範囲と病態の進展状況はCT検査で診断される.腹部大動脈の石灰化は手術における塞栓のリスクのみならず,心血管・脳血管イベントの独立危険因子であることが示されている1688)が,心臓血管外科手術においても石灰化病変は大動脈へのカニュレーション,遮断,各種バイパス術の障害となるとともに,脳梗塞や末梢への塞栓症の危険因子となる.このような磁器様大動脈を呈する患者において,アク

の発症リスクを70%低下させるとの報告がなされており1664),塞栓源としての粥腫の安定化を目的としたスタチン投与も考慮されるが,大規模なRCTが必要である. b. 血行再建

末梢での塞栓症の原因となっている病変に対する外科的アプローチは,塞栓再発リスクを減少させる一手段である.大規模なRCTはなく,大動脈粥腫に対する外科手術・血管内治療については多くが単施設からの報告である.腎動脈以下の病変に対する外科手術は良好であるが1672, 1673),腎動脈上病変が関与すると手術死亡率が高くなり1672),予防的治療としては十分な検討がなされるべきである.また,胸部大動脈病変に対する血栓内膜摘除術や人工血管置換術は,手術侵襲が大きいため,再発を繰り返す症例に限って検討される1674, 1675).大動脈粥腫症例では血管内治療自体が塞栓症の誘因となるために,適応や選択には十分な考慮が必要である.胸部下行大動脈より末梢の病変ではステントグラフトを用いて病変部位をカバーする方法の報告もみられるようになってきたが1676, 1677),現時点では大規模な研究はない.

3.2 大動脈内血栓

脳梗塞や末梢動脈の塞栓症患者の経食道エコー検査により,広範な動脈硬化を伴わない若年者に弓部大動脈内血栓を認めることが報告され,可動性の高い大動脈内血栓を認めた23例うち4例のみが血栓傾向を呈しており,このような病変の病態生理はいまだはっきりしていない1678).このような大動脈壁に固着していない大動脈内血栓は,脳梗塞のみならず内臓動脈や下肢への塞栓源となり,生命を脅かす病態である.解離,外傷,動脈硬化性変化などの大動脈病変に引き続いて発症することが多く,血栓傾向をその病態として正常血管に起こることは少ない.遠位弓部および下行大動脈における診断には,リアルタイムに血栓の可動性や浮動性を確認することのできる経食道エコー検査が第一選択であり,CT・MRI検査も治療方針を決定するうえで有用である1679, 1680).腹部大動脈については腹部エコーで,リアルタイムでflatteringしている血栓が描出されることも多く,CT・MRI検査も同様に詳細な診断や治療方針決定に有用である.

ヘパリン化による保存的治療1679),血管内治療による血栓吸引1681),ステント留置・ステントグラフト内挿術1681)や血栓除去1679),人工血管置換1682)を中心とした外科手術などの報告がみられるが,大規模な比較研究はない.

癌関連血栓症の表現型として静脈血栓症のみならず,大動脈内血栓を認める症例の報告も多くなってきている1683).