p.146 抽出テキスト
大動脈弁置換のみ施行後も大動脈イベント発生率が0.2%と抑えられたことから,大動脈径45 mm以上に大動脈置換を併せて行うことが推奨された547). また,Turner症候群患者の10~25%はBAVを合併するが,大動脈解離を発症したTurner症候群のほとんどはBAVを合併しており,解離発症時の上行大動脈径係数2.7 cm/m 2 であった.Turner症候群は低身長が特徴で,通常の大動脈径を適用すると治療タイミングが遅いという懸念があることから,Turner症候群で18歳以上,大動脈径係数>2.5 cm/m 2では大動脈置換術を検討する1551, 1636). 2.2.3 大動脈基部と弓部大動脈に及ぶ場合 bicuspid aortopathyの拡大の範囲により手術範囲は異なる.BAV症例に発症する大動脈解離では拡大した大動脈基部にentryを有することが多いことから539),基部拡大を伴う場合は大動脈基部置換術の適応となる.一方,基部は拡大せず上行大動脈のみ拡大したBAV症例に対し大動脈弁置換と上行大動脈置換のみ実施した場合には,術後遠隔期に基部拡大が問題になることは少ないため,大動脈基部置換術は推奨されていない545, 1637).また,bicuspid aortopathyに大動脈弓部拡大を伴う場合の治療についてAHA/ACCとESCのガイドラインではこれまで明示されなかったが,bicuspid aortopathyの拡大部位が基部と上行にとどまるものは全体の1/4程度にすぎない1620).弓部拡大の手術適応は2014年にカナダのガイドラインで55 mmとされた1635). 以上をふまえて,2010年のAHA/ACCガイドライン95), 2014年のESCガイドライン96),2016年のAHA/ACCによる Statement Clarification 1639),2018年のAATSコンセンサスガイドライン1640)に基づいて,表52の手術適応基準が推奨される.また,BAVと診断され大動脈径>40 mmとなった場合には,年1回(拡大傾向があれば半年ごと)の心エコー検査またはCT/MRI検査などの画像評価を定期的に行い,大動脈径の定期的フォローが必要である.さらに,一親等の家族(特に男性)に対するスクリーニングも行うことが望ましい. 大動脈弁手術または他の開心術を予定している,大動脈基部・上行大動脈径≧ 45 mm の症例に併施を考慮する544–548, 1633, 1637).(表12,P. 62 を参照) IIa C大動脈弁手術または他の開心術を予定している,弓部大動脈径≧50 mm の症例に併施を考慮する1620, 1635). IIa C大動脈解離の危険因子 *と併施する開心術の予定がない,無症状の大動脈二尖弁に伴う大動脈基部・上行大動脈径≧ 50 mm の症例に考慮してもよい1617, 1620, 1635, 1638). IIb C * 大動脈解離の家族歴,大動脈拡大速度≧5 mm/半年,重症の大動脈弁閉鎖不全症,妊娠希望など 2.2.1 無症状の場合 bicuspid aortopathy患者は健常人と比べ,大動脈解離は8.4倍,大動脈瘤は86倍も発症率が高いとの報告があり1633),早期の大動脈治療が考慮されてきた543)が,最近では三尖弁患者と差がないとの報告もある。bicuspid aortopathyに対する手術加療は比較的安全で,生存率や大動脈イベント回避に寄与する1617).したがって,無症状のbicuspid aortopathyに対する基部・上行大動脈置換術の適応としては径55 mm以上が推奨される.一方でbicuspid aortopathyの上行大動脈径の観察研究では,径50 mm以上または年に5 mm以上の拡大率があれば大動脈手術を行うことで,健常人と同様の予後が期待できると報告され1634),BAVの後ろ向き観察研究では,上行大動脈は径53 mm,大動脈基部は50 mmから急性大動脈解離のリスクが高まったことから,大動脈治療の経験値が高い施設では径50 mm以上で手術が推奨される1638). 2.2.2 大動脈弁手術時の同時治療 BAVに対する弁手術を行う際に,軽度の上行大動脈拡大を伴う場合に大動脈置換を同時に行うべきかが,以前から議論されてきた.BAVでは三尖弁に比べて大動脈弁置換術後に上行大動脈の拡大が早く,解離の発生リスクが高まる546, 548).2004年に報告された,BAVの201例に対する大動脈弁置換術後の大動脈径に関する後ろ向き観察研究では,手術時の上行大動脈径40 mm未満,40~44 mm, 45~49 mmの3群において,術後15年間の大動脈イベント回避率はおのおの86%,81%,43%であり,bicuspid aortopathyは45 mm以上で弁置換との同時手術が推奨された544).2011年には1800例余りのBAVに対し,大動脈弁置換のみ施行と上行大動脈置換も併せて施行とを比べた結果,手術死亡率は1%で差はなく,遠隔期の生存率,大動脈イベント発生率にも差はなかったが,45 mm未満では