p.144 抽出テキスト
1.7 血管内治療 表51 遺伝性大動脈疾患の血管内治療の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 複数の人工血管置換が行われている症例では,非置換部を橋渡しする形(ブリッジ)でのTEVAR を考慮する1582, 1601–1603). IIa C生命の危険を伴う複雑な大動脈疾患(大動脈食道瘻,大動脈気管支瘻,感染性大動脈瘤など)に対する根本的な治療(外科手術)までのブリッジとしてTEVARを考慮する1604). IIa C生命の危険を伴う急性大動脈疾患(complicated 急性B 型解離,侵襲的治療の適応である急性大動脈症候群)に対し,解剖学的要件を満たす場合にTEVAR を考慮する1381, 1586, 1605). IIa C侵襲的治療の適応があり,外科手術が困難または高リスクの症例には,解剖学的要件を満たせばTEVAR を考慮する1381, 1586, 1601, 1602, 1604, 1606 – 1608). IIa C A 型解離に対しfrozen elephant trunk法を用いた全弓部置換術を考慮する1105, 1125, 1582, 1585, 1609, 1610). IIa C非遺伝性大動脈疾患と同様の適応でTEVAR/EVAR を考慮してもよい. IIb C 遺伝性結合織疾患に対するステントグラフト内挿術(TEVAR/EVAR)は限定的な使用に留めるべきと考えられている1587, 1611–1613).これは同疾患に対するTEVAR/EVAR後のエンドリーク,再治療,生命に危険の及ぶ合併症(逆行性A型解離など)の発生率が,非遺伝性大動脈疾患の場合に比べて高いと考えられるからである416, 417, 1380, 1587, 1611, 1614, 1615).遺伝性大動脈疾患は真性瘤にしても大動脈解離にしても,その病変部が大動脈全域に及ぶことが多いため,大動脈の複数ヵ所に侵襲的治療を施さなければならないことがしばしばである.その際,複数の外科手術にて置換された人工血管どうしを橋渡しする形でのTEVAR/EVAR使用は推奨できる1582, 1601–1603).また,救命のために緊急治療が必要な急性大動脈症候群(大動脈解離,IMH,PAU)のcomplicated症例に対するTEVAR(あくまで解剖学的要件を満たす場合)も推奨できる1381, 1586, 1601, 1602, 1605, 1606).その他,外科手術を行うまでのブリッジを目的としたTEVAR,あるいは外科手術が困難な高リスク症例におけるTEVARも推奨できる1582, 1604, 1607, 1608).しかしながら,遺伝的素因をもたない大動脈瘤・解離の症例に対するTEVAR/EVARの 過激な運動の制限などが必要となるが,日常生活は病態により異なる.病態の変化に応じて判定するが,通常生活での制限を要することは少ない. 薬物治療としては心疾患や動脈疾患への「血圧のコントロール」がある.β遮断薬が大動脈基部の拡大を抑制するとの報告277, 1593, 1594)から,現状では本疾患の大動脈拡大予防を目的にβ遮断薬が第一選択として使用されているが,大規模研究はなく,比較的小人数でのRCTが1つあるのみである277).また,大動脈解離や大動脈破裂の予防効果についての明らかなエビデンスはない. TGF-β阻害薬でもあるARBがマウスにおける大動脈基部拡大を明らかに抑制すると報告され528),それ以降に多くの研究でその効果が検討されている.ARBとβ遮断薬の効果を比較した複数の大規模RCTでは,大動脈径拡大の進行予防についてほぼ同等の結果であった1595–1597).これらの試験のメタ解析でも同様の結果1598)であったことから, ARBは大動脈径拡大予防を目的にβ遮断薬と同程度の効果を有するものと考えられ,β遮断薬の代替薬として使用することに関しては問題ない.しかしながら,β遮断薬以上の効果があるわけではないため,積極的にβ遮断薬をARBに置換することを推奨することはできない. ベースライン治療(多くの場合はβ遮断薬)にARBを追加投与する効果を検討した大規模RCTでは,大動脈径拡大の進行を抑制したという報告と,できなかったという報告がある1415, 1599).このことからβ遮断薬にARBを併用する効果については一定の見解を得ていない.メタ解析でも同様の結果であり1598),現状ではβ遮断薬にARBを併用した場合の大動脈径拡大予防効果は明らかではない. 1.6.2 Loeys-Dietz症候群 Loeys-Dietz症候群に対して薬物治療の有効性を検討した十分な報告はなく,基本的にMarfan症候群の治療に準ずる. 1.6.3 血管型Ehlers-Danlos症候群 β 2刺激作用を有するβ 1遮断薬であるセリプロロールが,血管型Ehlers-Danlos症候群での動脈解離や動脈破裂の発症予防に有効との報告がある1600).