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の大動脈手術が施行されたが,そのほとんどが大動脈解離合併例であった.また,基部置換後は大動脈,弁関連の合併症はなく,10年で89%の生存率と良好な成績が示された1589). Marfan症候群とLoeys-Dietz症候群との大動脈手術症例を後ろ向きに比較した検討では,初回発症が解離であったのは3~4割で差はなく,長期生存率にも差はなかった.また,全弓部置換術の必要性はMarfan症候群12%に対し, Loeys-Dietz症候群で22%であった1590).Marfan症候群の急性大動脈解離に対する治療方針決定と同様に,全弓部置換まで行うかどうかは施設および外科医の経験値と手術リスクを考慮して判断する必要がある. 1.5.4 血管型Ehlers-Danlos症候群 血管型Ehlers-Danlos症候群はIII型コラーゲン遺伝子異常により,大動脈から中小動脈まで動脈瘤や解離のリスクが高い疾患である.長期予後を調査した後ろ向き観察研究では,約半数の症例に手術が施行され,手術死亡率は約10%で,術後出血を高率に合併し,術後遠隔期にも血管関連合併症を40%にきたした1591).したがって,大動脈合併症のリスクが高いが,外科的加療のリスクも高いため,予防的な大動脈手術を行うための明確な基準はなく,生命リスクが高いと判断された場合に個々の症例に応じた対応が必要である.最近は大動脈手術後の安定した成績の報告も散見され1592),手術に関する今後の臨床試験が期待される. 1.6 内科治療 1.6.1 Marfan症候群 表50 Marfan 症候群の内科治療の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 定期的に画像診断を行う. I C 運動制限を行う. I C大動脈径拡大の予防のためβ遮断薬を投与する277, 1593, 1594). I B大動脈径拡大の予防のためβ遮断薬の代替薬としてアンジオテンシンII 受容体拮抗薬(ARB)を投与する1595–1598). I A大動脈径拡大の予防のためβ遮断薬とARB の併用を考慮してもよい1415, 1598, 1599). IIb A SCI発生率0.9%であった.遠隔期死亡率は5年4%,8年18%,10年25%,再手術回避率は5年88.8%,8年84.2%と報告された1105).また,FETによるentry閉鎖を行うことで,真腔は拡大して偽腔内の血栓化が促進され,29%で大動脈リモデリングが得られた1585).一方,急性B型解離に対するTEVARにおいても,術後8年で80%が生存しており,生存例の38%で下行大動脈以下の大動脈リモデリングが得られていたが,遠隔期の大動脈再治療率は33%に達した1586).したがって,B型解離に対するTEVARは,非Marfan症候群症例と比べて,短期成績は遜色ないが,逆行性A型解離やstent graft-induced new entryに対する再手術も多い.以上から,遺伝性大動脈疾患に対するTEVARが正当化されるのは,急性大動脈症候群(破裂と解離)に対する救命目的,または年齢や高い手術リスクにより開胸手術が不適と判断された場合に限定される1586, 1587). 一方,大動脈置換術の成績に関する2017年の後ろ向き観察研究の報告では,遺伝性大動脈疾患65例に対し胸腹部大動脈置換術が施行され,86%の症例に大動脈手術既往があり,緊急手術は11%,手術部位は胸部下行15%,胸腹部大動脈Crawford I型17%,II型40%,III型17%, IV型7%であった.手術死亡率は14%で,その原因は出血,神経障害,心不全,呼吸不全であり,7時間以上の長時間手術が手術死亡の危険因子であった.再治療回避率は85%,1年生存率80%であった1572).したがって,遺伝性大動脈疾患は複数回手術が行われることが通常で,手術リスクは高く,経験値の高い施設での治療が望ましい.また,遠隔期の大動脈再治療率はTEVARに比べ低く,長期的な生命予後は比較的保たれる. 1.5.3 Loeys-Dietz症候群 主にTGF-β 受容体の遺伝子変異に起因する遺伝性大動脈疾患であり,Marfan症候群と比べて大動脈イベントリスクがより高いことから,大動脈基部または上行大動脈がMarfan症候群の場合よりも小さい径で手術を考慮することが推奨されている1539).Loeys-Dietz症候群に伴う大動脈弁輪拡張症に対するreimplantation法は,Marfan症候群と同様に良好な成績が報告されている.2011年の報告ではLoeys-Dietz 症候群31例(うち77%は小児)に対しreimplantation法を施行し,手術死亡はなく,遠隔期の中等度以上大動脈弁閉鎖不全の再発が3%のみで,弁置換,血栓塞栓症,感染性心内膜炎などの合併はなかった1588). 2019年の報告では,Loeys-Dietz症候群53例のうち33例(62%)に大動脈手術が実施され,緊急手術の死亡率は6%で,67%は再手術の必要がなかった.一方,33%に複数回