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p.141 抽出テキスト

Marfan 症候群で妊娠希望の女性では,大動脈基部または上行大動脈径≧40 mmの場合に考慮する1568–1571).(表12,P. 62を参照) IIa C Loeys-Dietz 症候群では,Marfan 症候群よりも大動脈基部または上行大動脈径がより小さい場合でも考慮する1539). IIa C Marfan 症候群の下行・胸腹部大動脈病変では,TEVAR よりも左開胸下の外科手術を優先的に考慮する1572). IIa C Marfan 症候群では,大動脈基部または上行大動脈径≧45 mm の症例に考慮してもよい1567). IIb C Marfan 症候群では,大動脈解離の危険因子

*を有する,大動脈基部または上行大動脈径40~45 mm の症例に考慮してもよい1567).(表12,P. 62 を参照) IIb C * 大動脈解離の家族歴,大動脈拡大速度≧5 mm/半年,重症の大動脈弁閉鎖不全症,妊娠希望など

1.5.1 Marfan症候群の大動脈基部置換術

遺伝性大動脈疾患で代表的なものはMarfan症候群である.バルサルバ洞が洋ナシ状に拡張する大動脈弁輪拡張症が特徴的であり,自己大動脈弁の形状は比較的正常に保たれている.主にFBN1遺伝子異常をベースにもち,動脈硬化性の大動脈疾患に比べ若年発症が多く,術後長期予後を考慮する必要がある.手術の基準に関して,2012年に報告された後ろ向きコホート研究の結果,手術既往のないMarfan症候群の大動脈イベント(突然死・解離)リスクは,大動脈径50 mm未満で0.05%/年であったのに対し,50 mm以上では4倍に上昇するため,50 mm以上の大動脈径に対し非Marfan症候群よりも早期からの予防的大動脈手術が推奨された536).また,大動脈解離の家族歴を有する場合,大動脈径の急速拡大(>10 mm/年),または高度の大動脈弁逆流を有する場合には,50 mm未満での早めの手術適応が望ましい1567).Marfan症候群の女性は妊娠中と産褥期に大動脈解離のリスクが高いことが知られ,妊娠中にはバルサルバ洞径の拡大率も増すことから,妊娠希望の女性のMarfan症候群ではより早い,40 mm以上のバルサルバ洞径に対する予防的手術が望ましい1568–1571).

大動脈基部置換術は1968年にBentallにより人工弁つきcomposite graftを使用した術式が発表555)されて以降,これが標準治療とされてきた.しかしながら,人工弁にまつわる血栓塞栓症などの問題から,1990年代以降は自己弁温存大動脈基部置換術(VSRR)としてremodeling法561, 562)とreimplantation法563)が行われてきた.2015年のDavidの報告では,Marfan症候群146例に対するVSRRの前向

b. A2:非症候群性大動脈瘤・解離i. ACTA2 遺伝子(10q23)

血管平滑筋αアクチンをコードしており,非症候群性大動脈瘤・解離の約15%はこの遺伝子の変異が原因とされる1552).血管外症状が乏しいため,家族歴がないかぎり発症前に診断することは難しいが,一部の遺伝子バリアントでは脳血管や動脈管,冠動脈,虹彩,腸管などに特徴的所見を認める症候群性の臨床型をとることがあり,これらのバリアントを認めた場合には全身精査を必要とする. ii. MYH11 遺伝子(16p13)

平滑筋ミオシン重鎖をコードする遺伝子であり,TAA症例でこの遺伝子の変異が報告されている1553)が,症例数は多くない.動脈管開存症の合併が特徴とされるが,報告症例は少なく,疾患の全容は明らかになっていない.

1.4.3 遺伝学的検査結果の解釈

近年の遺伝子解析技術の急激な進歩により,遺伝学的検査は遺伝性疾患の診断に欠くことのできない検査となっている.特に,次世代シーケンサーを用いたパネル解析が主流となり,複数の候補遺伝子を同時に解析できるようになってからは,検査精度・迅速性・費用対効果,いずれにおいても従来のサンガー法をはるかに凌ぐものとなった.その結果,診断においても,臨床所見以上に遺伝学的検査が重視される傾向にある.しかし,結果の解釈に際しては,「変異(バリアント)の存在=診断」ではないことに留意する必要がある.たとえば,Marfan症候群の原因遺伝子であるFBN1遺伝子は,コーディング領域だけで65個のエクソンを含む巨大遺伝子であり,疾患とは直接関係のないバリアントも数多く,病原性の判定は容易ではない.

1.5 外科手術

表49 遺伝性大動脈疾患の外科手術の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

Marfan 症候群では,大動脈基部または上行大動脈径≧50 mm の症例に行う536). (表12,P. 62 を参照) I C Marfan 症候群では,大動脈解離の危険因子

*を有する,大動脈基部または上行大動脈径≧45 mm の症例に考慮する1567). (表12,P. 62 を参照) IIa C