p.134 抽出テキスト
3.2 血管内治療後 TEVAR後におけるステントグラフト(SG)の瘤内への位置ずれ(migration),エンドリーク,瘤径拡大,破裂,逆行性A型大動脈解離(RTAD) 417),末梢側のstent graftinduced new entry 1221, 1349),感染,食道瘻・気管支瘻などが,再手術の適応となる. RTAD,感染,食道瘻・気管支瘻などに対する治療は人工血管置換術が基本であり,type Iエンドリーク,SGのずれ,SGの破損,大動脈解離に対するTEVAR後の偽腔拡大などは,症例により人工血管置換術が選択される513, 1446, 1519, 1520). 感染や食道瘻・気管支瘻に対する人工血管置換術では手術時にSGを全抜去するのが原則である.しかし,一般的にSGのlanding zoneとなっていた部分の大動脈壁は菲薄・脆弱化し,SG抜去後にこの部分の血管壁を吻合に用いることは困難なことが多い.そのため,感染などを伴わず,SGを全抜去する必要がなければ,landing部分のSG を切断して残し,大動脈壁とともに吻合に利用するのが原則である1446, 1520, 1521). TEVAR後の人工血管置換術は,RTAD,感染,食道瘻・気管支瘻などのため緊急または準緊急手術を要することも多く,これらに対する治療成績はやや不良である1522).一方,TEVAR後のstent graft-induced new entryやSG近傍の瘤化などに対する追加治療は,TEVARで対応可能なことが多い1349).エンドリークに対する治療に関しては,type IIIあるいは分枝動脈までの距離があるtype Iでは血管内治療(SGの追加留置,コイル,プラグなど)が可能なことが多いが,type IIエンドリークでは腹部の場合とは異なり,流入血管(肋間動脈や気管支動脈)に対するカテーテルによるアプローチが困難なことが多い. また最近では,大動脈解離に対するTEVAR後の慢性期の偽腔拡大に対して,さまざまな血管内治療の術式が工夫され,実践されている1523). 第8章 その他の大動脈疾患 大動脈瘤・解離の発症年齢の分布は高齢にピークがある.その一方で,大動脈瘤・解離は若年でも発症することが知られ,また,そのような場合には家族歴が認められることが多く,遺伝の関与が想定されていた.Marfan症候群はFBN1遺伝子の異常が最初に確認された疾患群であり,若年発症の大動脈疾患の原因としてよく知られている.しかし,同時にMarfan症候群の診断基準にあてはまらない患者群の存在も明らかになり,若年発症の大動脈疾患であるがMarfan症候群とは診断できない,いわゆる「Marfan類縁疾患」の概念が確立した.それらはMarfan症候群と同様に何らかの遺伝子異常にもとづく血管の脆弱性が背景 1 遺伝性大動脈疾患にあると考えられ,遺伝子解析の技術の進歩を背景として 次々にその遺伝子異常が明らかにされてきた. 以上のごとく,若年(50歳未満)発症の大動脈疾患をみたときには,まず遺伝性を想起することが重要である.鑑別疾患として,若年性高血圧,閉塞型睡眠時無呼吸,大動脈炎などがあり,これらを除外できれば遺伝性大動脈疾患の可能性が高くなる.外見上,高身長で,家族歴があれば,まずMarfan症候群が疑われる.Marfan症候群は急性大動脈解離のおよそ5%程度と報告されているが1524),遺伝性大動脈疾患のなかでは最も多く,半数以上を占め, Marfan症候群以外の遺伝子異常による大動脈疾患すべてを合わせて残りの半数程度であるとの報告もある1525).また,いまだに多くの遺伝子異常が明らかになっていない. 遺伝子異常の個々の診断に関しては次項に譲るが,以下のような考え方に基づいて遺伝性大動脈疾患を考える.家族歴がないからといって遺伝子異常を否定できない.その