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ものの,末梢神経刺激–皮質感覚野導出のため,末梢神経や脳を含む感覚神経系のモニターであり,感受性・特異性ともに低い1489).脊髄誘発電位は2本の硬膜外電極による脊髄刺激–脊髄導出で,脊髄特異的で麻酔耐性が強く,特異性は良好であるが,硬膜外血腫や電極位置不良によるモニタリング不能例が問題である.また脊髄運動細胞ではなく脊索の機能を反映するため,虚血から電位変化までの時間が長いことも欠点であった1488). 1990年代後半以降,経頭蓋電気刺激にtrain刺激が導入され,運動誘発電位が大動脈外科領域でも普及してきた673).これは皮質運動野刺激–四肢筋電図導出の運動機能のモニタリングであり,感受性が高く,虚血に対する反応も早いため,現在最も頻用されている1488).ただし,麻酔薬の影響を受けやすく,麻酔管理に留意が必要であるほか,脳や末梢神経,神経筋接合部の影響も受け,特異性,安定性に問題がある.このため,経食道刺激など,安定性を改善する工夫がなされている1490, 1491)が,臨床研究段階である. 電気生理学的モニタリングは,1990代には再建すべき分節動脈の同定目的でも応用された1480, 1486)が,術前に非侵襲的に栄養動脈を同定できる時代を迎え,その意義は変化している.すなわち,術中の側副血流は十分か,分節動脈再建は適切に行われているか,などを監視することが主眼となっている671, 1456).この目的では近年,近赤外線分光法を用いた脊柱起立筋の酸素飽和度モニタリングが,脊柱管外ネットワークの側副血流のモニタリングとして注目されている1492, 1493). 2.3.3 遠位側大動脈灌流 遠位側大動脈灌流は,分節的大動脈再建との組み合せで,中枢大動脈吻合時に分節動脈灌流を維持することにより分節動脈の総遮断時間を短縮する目的で用いられてきた.しかし,分節動脈再建中の虚血対策としては単独では不十分であった.collateral network conceptの時代を迎え,遠位側大動脈灌流の目的は,分節動脈再建中も含めた大動脈遮断中の脊髄側副血流量を高く保つことに変化している.このため大動脈遮断・遠位側大動脈灌流中も,中枢血圧,末梢灌流圧ともに高く維持することが推奨1483)されており,大動脈遮断下の手術を選択する場合には,脳脊髄液ドレナージ+分節動脈盗血防止とともに,手術戦略の基本となっている1457, 1483).本邦では,これに加え,硬膜外アーケードを介する側副血流を活かす戦略(小範囲分節遮断による分節動脈再建1458, 1459)など)や末梢側に拍動流を活かす工夫も行われている. 2.3.4 分節動脈盗血の防止と灌流 再建中に分節動脈からの逆流により脊髄側副血流を盗血することがSCIの重要な要因であることは,1980年代から知られている1494, 1495).したがって,虚血許容時間が長い超低体温循環停止法を用いる場合を除き,分節動脈からの逆流はすみやかに制御する必要がある.再建予定の動脈からの逆流制御には,内腔からのバルーンカテーテル留置や外側からの遮断が用いられている.再建予定がない場合には,これをすみやかに止血することが重要である.大動脈遮断前に瘤外から順次クリッピングする戦略は,側副血行路のチャネルを開く目的のみならず,盗血を回避する意味でも有用である1483). 一方,盗血制御によってもモニタリング上の脊髄虚血が改善されない場合を中心に,肋間動脈灌流が行われている.細径の肋間動脈を有効に灌流するのは困難であるが,現在は専用のカニューラも市販されており,150~200 mmHgの回路圧で30~40 mL/minが至適灌流量と報告されている1496). 2.3.5 脳脊髄液ドレナージ 脊柱管は閉鎖腔であるため,脊髄灌流圧は平均動脈圧と脳脊髄液圧の差で規定される.灌流圧が50 mmHgを割ると脊髄血流は低下し1497),15 mmHg以下ではSCIが発生する1498)と報告されている.脊髄灌流圧を上昇させる目的での脳脊髄液ドレナージ(CSFD)は,1960年にMiyamotoらによって初めて提唱された1499).しかしCrawfordらの1991年のRCT 1500)によって,50 mLのドレナージが無効であると結論付けられて以降,一部の施設で良好な成績が報告されていた1461, 1468)にもかかわらず,広く普及するには至らなかった. CSFDが市民権を得たのは,2002年にCoselliらが,現在臨床的に行われている圧規定ドレナージ法を用いてその有用性を報告652)して以降である.これと相前後して,外科手術における有用性を示す多くのコホート研究の結果1452)も報告され,さらには遅発性SCIがCSFDによって改善されたとの報告が,外科手術後1453)のみならずTEVAR後の症例でも多数行われるに至り682, 1454),CSFDはcollateral network concept時代の基本戦略となっている.ただし硬膜外血腫,髄膜炎,チューブ断裂,頭痛などに加え,頭蓋内硬膜下血腫という重篤な合併症が報告されている1452).頭蓋内出血は架橋静脈の断裂により生じるとされ,ドレナージ量が多いことが危険因子とされる.このためドレナージ圧10~13 cmH2O以上1501),ドレナージ速度<15 mL/h 1452)が推奨されている.