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p.125 抽出テキスト

位においても偽腔が縮小しない,あるいはさらに拡大する例も多くみられる391).このことよりcomplete exclusionに持ち込むことが残存解離を治療,閉鎖する近道となる1303).また,ターゲットとなった偽腔を完全な血栓化に持ち込むために偽腔への介入も考慮すべきである1307, 1406).

再治療の方法は,偽腔拡大症例においては外科手術が優先されるが,初回に血管内治療を選択した場合は再治療においても血管内治療が選択されることが多く,初回に外科手術が選択された場合には再治療においても外科手術が選択されることが多い405).しかしながら,大動脈解離術後・残存解離においては大動脈全域に病変が存在していることが多いため,両術式とハイブリッド治療を適切に組み合わせて加療することが患者の予後向上に寄与すると考えられる.したがって,外科手術と血管内治療の両者に熟練した施設において,この複雑な解離治療が行われることが望まれる.

B型解離における再治療では,外科手術,血管内治療ともに胸腹部大動脈領域に治療範囲が及ぶことが多く,この胸腹部領域における外科手術と血管内治療(TEVAR,ハイブリッド治療,開窓型/分枝付きデバイスによるEVAR)の比較では,生命予後とSCI発生率において大きな差がないとされている1442).しかしながら,慢性期の再々治療の発生率は血管内治療において明らかに高く,症例の年齢,病因,アドヒアランスの良否を考慮に入れた術式の選択が肝要である.

3.4 広範囲大動脈解離

3.4.1 外科手術

慢性B型解離のうち,下行大動脈から腹部大動脈にかけて大きな偽腔を有する(解離性)大動脈病変を「広範囲大動脈解離」とし,急性A型解離に対する上行大動脈・hemiarch置換術後の遺残解離もこの範疇に含め,その手術適応と手術術式について記載する.なお,B型解離は「上行大動脈に解離を有しない症例」と定義されているが,弓部にentryを有する症例や弓部に偽腔を有するB型解離を「non-A non-B解離」として別分類する動きがある1443). a. アプローチ

胸骨正中切開では弓部から遠位弓部大動脈までが一般的な外科手術の治療範囲となる.全弓部置換術に下行大動脈真腔へのFETの挿入を組み合わせることにより,下行大動脈のentry閉鎖が胸骨正中切開から可能となる.一方,左開胸では遠位弓部から下行大動脈,さらに腹部大動脈への到達が可能である.また,左開胸からも心嚢内操作や弓部大動脈への手術操作は可能である.上行・弓部大動脈

への手術操作が必要なnon-A non-B解離では,胸骨正中切開による全弓部置換術を初回手術とし,下行大動脈に対する手術を第2期手術とする段階的手術が行われる.初回手術では全弓部置換術に加え,下行大動脈真腔または両腔に血流を誘導するETやFETが併施される.第2期手術は下行大動脈真腔へのTEVAR追加,または左開胸による外科手術(下行大動脈置換術または胸腹部大動脈置換術)が施行される.若年者など拡大手術が可能な症例,または段階的手術のリスクが高い(巨大下行大動脈瘤か切迫破裂)か困難な症例には一期的手術を選択する1218, 1219). b. 吻合法

慢性A型解離の項(本章の「2.3.2. 弓部大動脈」,P. 105)を参照されたい. c. 合併症

弓部から胸腹部大動脈に及ぶ広範囲慢性B型解離の手術では,脳梗塞とSCIへの留意が必要である.

胸骨正中切開アプローチでは,通常の人工心肺操作が可能であるが,弓部大動脈に偽腔が存在するため送血部位の選択が重要である.上行・弓部大動脈に加え,腋窩動脈1213, 1214),大腿動脈,心尖部送血などが選択できる.その際,大腿動脈経由の逆行性灌流による臓器血流不全や偽腔内血栓の飛散に留意しなければならない.人工心肺により低体温を導入し,選択的脳灌流法や逆行性脳灌流法を脳保護法として用いる.弓部分枝に解離が及んでいる症例では選択的脳灌流法の確立が困難なことがあり,あらかじめ人工血管縫着後に灌流するなど,確実な脳灌流保持が重要である.分枝に偽腔内血栓が存在する症例では,血栓飛散による脳梗塞に留意が必要である.

左開胸アプローチでは,大腿動脈送血が第一選択となるが,逆行性灌流による偽腔内血栓飛散による塞栓症のリスクがある.順行性送血部位としては腋窩動脈や,心嚢内操作により上行大動脈,心尖部1215)も選択可能である.脳保護法は低体温が基本となる.低体温循環停止法,高本法1444)による逆行性脳循環法を用いて弓部大動脈遮断を行わない術式や,バルーン付送血管を弓部大動脈に留置して脳灌流を行う方法がある.弓部大動脈を遮断して腋窩動脈や上行大動脈からの順行性送血を行う順行性脳灌流法などが行われている.しかし,左開胸アプローチでは胸骨正中切開に比べ脳・心保護効果が不安定であり,特に脳梗塞には留意が必要である.高本法は本邦発の脳保護法であり,Trendelenburg体位で,置換予定の下行大動脈を遮断し,大腿動脈より送血を行い,右房圧を15~25 mmHgに上げることにより逆行性脳灌流を行う脳保護法である.

SCIも重大な合併症である.正中切開手術では全弓部置