p.124 抽出テキスト
3.3.1 術後フォローアップ 大動脈解離においては,外科手術後あるいはTEVAR後においても残存解離が存在することが多く,厳密なフォローアップが重要となる.特に画像によるフォローアップとして,術後1ヵ月,6ヵ月,12ヵ月,その後1年ごとのCT検査は必須であり,腎機能障害などにより造影が不可能な場合はMRI検査や経食道エコー検査で真腔・偽腔の血流を評価するべきである1328, 1329).偽腔開存例や遺伝的素因のある解離症例においては,さらに密なフォローアップを考慮すべきである. 3.3.2 再治療の適応 A型解離術後の遠位側(弓部・下行大動脈)残存解離部,あるいはB型解離に対する侵襲的治療(外科手術またはTEVAR)後の残存解離部において,偽腔拡大をきたす症例がある342, 1079, 1085, 1421, 1423–1431).また,B型解離に対するTEVAR後のstent graft-induced new entry(SINE)を含むエンドリークは再侵襲的治療の理由として最も多い342, 512, 1423).これら残存解離に対する再侵襲的治療の適応は,以下のとおりである. 1 残存解離偽腔拡大や真腔狭窄に伴う有症状(胸背部痛, 嗄声,嚥下障害など) 2 残存解離大動脈径≧55~60 mm 3 残存解離大動脈径の急速拡大(≧5 mm/半年)または 再解離,FETまたはTEVAR後のエンドリーク,SINE,あるいは逆行性A型解離4 A型解離術後の遠位側残存解離において,将来の偽腔 拡大が予測される症例(preemptive TEVARの適応) 3.3.3 再治療の発生率 a. A型解離術後の遠位側 急性A型解離術後の症例の11.6~22.7%に遠位側再治療が行われている1079, 1085, 1421, 1426, 1428–1434).この遠位側再治療の発生率は初回手術の内容により異なる.上行・hemiarch置換術に比し,FETを含めた全弓部置換では,その再治療のリスクをハザード比にて0.37に低減できることが報告されている1435–1437).したがって,この再治療を抑制するメリットが侵襲増大に伴うデメリットに勝ると考えられる,リスクが中等度以下の症例において,FET併用全弓部置換術が初回手術として推奨される.当然であるが,遠位側残存偽腔開存例で再治療率が高く,CT検査によるフォローアップが重要である1291, 1418, 1419). b. B型解離術後 初回治療の時期と方法に依存する.初回治療が急性complicated型に対するTEVARの場合,再治療の発生率 は1年で15.4%であった342, 1424).一方,慢性解離に対するTEVAR後の再治療発生率は平均33.7ヵ月の追跡で20.2 (6.0~53.3)%で,外科手術後の11.8(0~26)%に比し有意に高く342, 386, 402, 404),再治療までの期間も有意に短かった(TEVAR 15.4±2.3ヵ月,外科手術65±9ヵ月).初回治療が外科手術の場合,時期により再手術の発生率は大きく異なる.急性complicated型の場合はその治療範囲が胸部に限定されていることが多いため,再治療は1年で5.5%発生し,その率はTEVARのそれと大きな違いはない386).一方,慢性解離の場合,約半数が胸腹部大動脈置換術となるため,再治療の発生率は平均27ヵ月の追跡で11.8(0 ~26)%と,TEVARに比べ低かった342, 386, 402, 404, 405, 1438). 3.3.4 方法と成績 a. A型解離術後の遠位側 初回手術が上行・hemiarch置換術の場合,残存解離のentryは初回手術の末梢側吻合部(解離フラップの損傷),弓部・近位下行,弓部分枝に残存することが多い.再治療における外科手術はこれらのentryを含めた拡大部分を人工血管で置換し,血管内治療においては残存するentryをステントグラフト(SG)などにより閉鎖する術式となる. entryが弓部・弓部分枝に残存する場合は外科手術が中心となり1113, 1233, 1429, 1439–1441),下行に残存する場合はTEVARが主体となるが,弓部や弓部分枝の治療をTEVARやハイブリッド治療で行う技術は成熟しており,その急性期治療成績は外科手術のそれを上回る1421, 1422).ただし,解離症例に対するTEVARはさらなる再治療の原因にもなりやすく1421),また,再治療のタイミングも外科手術に比して早期であることが多い1422).これはSGによるentry閉鎖だけでは拡大した偽腔の良好なリモデリングが得られないことにもよる. b. B型解離術後 再治療の方法の選択は,初回治療の術式(外科手術またはTEVARを含む血管内治療),拡大部位,残存するentryとre-entryの位置,主要分枝の灌流状態(真腔灌流・偽腔灌流)に加え,病因,全身状態,予想される予後,アドヒアランスの良否などを含め,総合的に判断される.外科手術,TEVAR・EVARにおける基本的な考え方は初回手術と同様で,外科手術の場合は拡大部の切除と人工血管置換術,TEVARやEVARの場合は残存entryの閉鎖である. 初回治療がTEVARであった症例に血管内治療を施行する場合,SGを留置した部位にも偽腔が残存するため, entry閉鎖によりcomplete exclusionとなる症例以外では, re-entryから偽腔への血流が残存しターゲットとなった部