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p.121 抽出テキスト

完全血栓化につながることが多く,TEVARの良い適応である.一方,DeBakey IIIb型ではre-entryの残存による偽腔拡大の懸念が残る.

慢性B型解離に対する胸腹部置換術は,若年患者が多く,動脈硬化性変化もより少ないことから成績は比較的良好であるが,手術死亡や合併症の発生に関してはTEVARの有利性は動かない.しかしながら,両者の長期成績に関するRCTは存在しないが,生命予後に差はなく,再治療率がTEVAR群で明らかに高いことは事実である.したがって,症例,病変に応じた両者の適応判断が求められる.

3.2.3 外科手術

a. 弓部・下行大動脈置換術

拡張部分を含む(弓部)下行大動脈を人工血管に置換する手術である.開胸肋間は,置換範囲に応じて第4~第6から選択され,しばしば肋骨離断rib crossが行われる.通常,中枢側は解離のない大動脈に吻合される.末梢側を解離した部分に吻合する場合,開窓して両腔吻合とする場合と,断端形成して真腔吻合とする場合がある.真腔吻合は下流偽腔のリモデリングを期待して実施されるが,ある程度以上拡大した偽腔のリモデリングは慢性期手術ではあまり期待できない.また,Adamkiewicz動脈が偽腔由来の場合や,腹部主要分枝,特に上腸間膜動脈が偽腔起始の場合には注意が必要で,脊髄1407)や腸管が虚血となる可能性を念頭に入れておく必要がある.さらに,真腔吻合は末梢遮断部位にtearを作らないよう,遠位側開放下血管吻合術で行うほうが良い.

手術は分離肺換気とし,左開胸から行われる.肺出血による呼吸不全を避けるため,肺はできるだけノータッチとし,ヘパリン化中は換気しない.遮断下に手術を行う場合,中枢側大動脈遮断は左総頚動脈と左鎖骨下動脈の間になることが多い.これは,粥腫病変を伴う症例では脳梗塞,弓部大動脈拡大例など大動脈壁の脆弱性を有する症例ではclamp injuryや逆行性A型解離などの,重篤な合併症につながる可能性がある.このため,弓部大動脈の性状には十分注意を払う必要があり,リスクがある場合には超低体温循環停止を選択する.ただし,左開胸超低体温手術は侵襲が大きく,その応用に際しては十分な準備が必要である.

遮断時の脊髄・腹部臓器保護目的では,遠位側大動脈灌流法が用いられる.本法で脊髄や腹部臓器のmalperfusionを惹起する可能性がある場合,末梢側の大動脈遮断を一時的に解除し,フラップを切除開窓後に大動脈を再遮断することで,これを防止できる.置換範囲にAdamkiewicz動脈が含まれる場合には,胸腹部大動脈置換術に

中枢側ステントグラフトを積み上げることもある.

慢性解離の場合,SGによる新たな内膜亀裂(stent graftinduced new entry)の発生が多いとされており,SGの径は大動脈瘤の場合に比べ小さな径(大動脈径の5%増し程度)のものを選択するのが良いとされている416, 1402).一方, SGを留置する長さについては議論の余地がある.entryを閉鎖することが第一の目的であるが,肋間動脈などの小分枝の起始部などにあるre-entryの閉鎖を同時に行うために,留置長を延ばすこともある.一方,広範囲に肋間動脈を閉塞させることによるSCIの懸念が生じる.

大動脈解離においては,主要なentryの他にも複数のtearがあることが多く,主要なentryをSGで閉鎖しても,残存するtearから偽腔への血流(re-entry flow)が残存することがある.これに関連して,偽腔が開存しているよりも一部血栓化しているほうが予後が悪いとする報告1025)もあり,entry閉鎖により偽腔の血流を遮断できることが多いDeBakey IIIa型のほうが,腹部大動脈にre-entryが残存するDeBakey IIIb型より予後が良いとの報告1402a)もある. TEVARによるentry閉鎖後の偽腔血流動態の変化については,発症からの時期,re-entryの場所,数,部位などが関与すると思われるが,現時点では正確に予測できない.

慢性B型解離に対するTEVAR後に偽腔の血流が残存して拡大をきたした場合,TEVARを施行した部位を含めて完全に人工血管置換術に移行することもあるが,残存するre-entryを切除するためにSGの末梢で大動脈を切断して偽腔を閉鎖し,それ以下を人工血管で置換することもある.また,分枝付きSGを用いてTAAAの場合に準じたTEVARを施行し,腹部分枝起始部のre-entryも閉鎖することもあるが,分枝付きSGは本邦ではいまだ保険承認されていない.

近位~中部下行大動脈の偽腔が拡大することが多いため,遠位下行大動脈の偽腔において腹部大動脈からの血流を遮断することにより,近位下行大動脈の偽腔の拡大を阻止することが試みられている.コイル塞栓術は多数のコイルを必要とし,一般化していないが,腸骨動脈や腹部大動脈のre-entryから横隔膜直上の遠位下行大動脈の偽腔内に鼓状の短いSGを留置する方法(candy-plug法)が報告されている416, 1402–1404).海外では専用デバイスが使用されているが,本邦では承認されていないため,既存の短いSGの中央部に展開を制限して小さな輪となるよう結紮糸をかけ,SG内に残存する内腔はvascular plugにより閉鎖する1405, 1406).また,真腔内に大口径のSGを留置してバルーンにより偽腔を圧迫,閉塞するまで拡大させる方法(ニッカーボッカー法)もあるが,一般化していない1305).

DeBakey IIIa型ではTEVARによるentry閉鎖が偽腔の