GL検索 v0.1.0
画像は 117 ページを描画したものです
page 117

p.117 抽出テキスト

から早期のタイミングにおけるpreemptive TEVARの成績は生命予後,大動脈リモデリングに関して保存的治療に比し有意に良好である.

B型解離に対するTEVARの合併症として以下のものがある.

1逆行性A型解離:B型解離に対するTEVAR後における発生率は4.0~6.9%で,変性病因のTAAに対するTEVAR後と比べて高い416, 417, 1379).また,治療成績は不良(30%台の死亡率)で,その発生には十分な注意が必要である416, 417, 1379).発生のタイミングはTEVAR術中が約20%,TEVAR後30日以内が約50%,TEVARの31日後以降が約30%で,TEVAR後1年以上経過した時点ではまれとなる416, 417, 1379).発生の予測因子としては,内的因子として急性期症例,部分閉塞か完全閉塞,中枢 landing Zone 0,中枢landing部大動脈径≧40 mmがあり,これらの因子を満たす症例は「TEVAR unfit(解剖学的要件を満たしていない)」と考えた方がよい416, 417, 1379–1382).外的因子としてはSGオーバーサイズ≧10%,中枢ベアステント付きデバイスがあり,これらの事項に細心の注意を払って治療を施行すべきである416, 417, 1379, 1380).

2脳卒中:Zone 2より中枢のlandingにおいて脳梗塞の発症率が上昇する.左鎖骨下動脈の再建はSCI発生,脳梗塞発症の低減効果があるとされ,推奨される372, 373).

3SCI:B型解離に対するTEVARの多くは遠位弓部から近位下行大動脈にSGが留置されることが多く,脊髄栄養動脈(Adamkiewicz動脈)を直接閉塞することはまれと考えられる.しかし,中枢のentry閉鎖に伴い,術後時間経過とともに偽腔分枝の肋間動脈閉塞が発生することがあり,遅延型SCIを併発することがある.術前の造影CT検査で多くの肋間動脈が偽腔分枝である場合はSCIの高リスク症例として,術中・術後のSCI対策を講じなければならない.

4腎機能障害:偽腔灌流となっている腎動脈がentryを閉鎖することによりmalperfusionに陥る可能性がある.しかし,偽腔灌流となっているかぎりその急性期には同部分にtearが存在しており,発症から半年以内にこのtearが完全に閉鎖することはきわめてまれである.術中の血管造影などで中枢のentryを閉鎖した際の腎血流を確認し,不足が疑われればtearを通した腎動脈再建が必要になる.

5末梢stent graft-induced new entry(SINE):大動脈解離症例に対するTEVARはSGの末梢側が解離部に留置されることが多く,SG末梢部の内膜にnew entryが発生し,これをSINEと呼ぶ.発生の機序はSGによる末端部のulcerationとSG留置後の内膜フラップのスウィングに伴う疲労性のentry tearが考えられる.両者のnew entry tearの

意を払って選択しなければならない.これら中枢側landingに関する注意は,そのentry閉鎖の可否のみならず,致死的な合併症である逆行性A型解離の予防のためでもある.末梢側landingはentry末梢から末梢側20 mm以上の下行大動脈の直線部分に位置を定めるべきである.末梢側のSG径はCTによる真腔周径の計測より割り出された真腔径の110~120%を原則とする.その結果,中枢と末梢のSG径に平均8~10 mm前後の口径差が生じるが,テーパーグラフトや2本のSGを繋ぎ合わせる形で対応する.全長において,できるだけspring backの力がかからないよう配慮する.

preemptive TEVARの場合,entry閉鎖による腹部主要分枝のmalperfusionを考慮する必要はない.すなわち,偽腔灌流になっている場合は同部に必ずentry,re-entryが残存している.アクセスは真腔につながりやすいサイドからアプローチし,血管内エコー法などを用いて真腔を確認する.ガイドワイヤーは通常のTEVARと同じく,super stiffあるいはextra stiffワイヤーを用いる.pull-throughワイヤーは血管合併症が多いため,よほどの屈曲がないかぎり用いないほうがよい407, 1378).SG留置時には高頻度ペーシングを用い,心拍出量を落として留置する409).デバイス留置後のタッチアップバルーニングは原則として行わない. iv. TEVAR後のフォローアップ

術後は造影CT検査,経腹壁血管エコー検査で,ターゲットのentryが閉鎖されるか否か,残存entryの位置,reentryからのフローの範囲,腹部主要分枝や下肢動脈の灌流状態を評価する.経時的な観察(1,6,12ヵ月後,以降1年ごと)において大動脈径,真腔径,偽腔径を定点(最大径部,SG末端,横隔膜レベル,腎動脈下腹部大動脈など)にてチェックする.多くの場合,慢性期においてreentry flowの吹き上がり上端部に拡大が起こりやすいため,この部分の大動脈径は特に注意が必要である. v. 治療成績と合併症

急性期・亜急性期から慢性早期におけるpreemptive TEVARの急性期治療成績は,治療のタイミングにばらつきがあるため整理されたデータはないが,uncomplicated急性B型解離に対するTEVARでは,院内死亡率7.1%, SCI 3.4%,呼吸器合併症13.2%,腎機能障害14.7%と決してよくない393, 1299, 1372, 1374).このuncomplicated急性B型解離に対するTEVARの成績は,治療急性期こそ保存的治療に劣るが,1年後以降の破裂,生命予後,大動脈リモデリングにおいて保存的治療に優ることが報告されており,本治療推奨の根拠となっている.慢性期生存率,大動脈関連イベント回避率および大動脈リモデリングに関してはINSTEAD試験,ADSORB試験を参照するとよいが1294, 1300, 1371),発症