p.116 抽出テキスト
b. 血管内治療i. preemptive TEVARの適応 uncomplicated B型解離に対するTEVARと薬物治療を比較したRCT(INSTEAD試験)で,割り付け後1年,2年の予後を悪化させたのはTEVARの介入であると結論されたことから1287, 1300, 1371),すべてのuncomplicated B型解離がTEVARの適応であるとは考えられていない392, 393, 1267, 1281, 1372).つまり,uncomplicated B型解離に対するTEVARでは患者選択が必要と考えられ,慢性期における偽腔拡大が予測される場合(high-risk uncomplicated dissection)が適応と考えられる385, 396–400, 1287–1292).uncomplicated B型解離における慢性期拡大は急性期・亜急性期のパラメーターから予測可能で,現在さまざまな予測因子が報告されている385, 396–400, 1287–1292).また,uncomplicated B型解離のうち,将来において拡大や大動脈関連事象に至る症例(chronic complicated型)は全体の40%程度とも報告されている1373). ii. preemptive TEVARのタイミング 推奨の根拠となるuncomplicated急性B型解離に対するRCT(INSTEAD試験)の登録期間は解離発症後2~52週(亜急性期から慢性早期)となっているが1287, 1300),その大部分の症例は発症6ヵ月以内にTEVARが行われており, preemptive TEVARに最適のタイミングは発症から6ヵ月以内とする意見が多い1287, 1295, 1368–1370, 1374, 1375).このタイミングはTEVAR後の偽腔が胸腹部において良好なリモデリングを得る時期とも一致しており,推奨を後押しするものとなっている.一方,急性期においてpreemptive TEVARを施行するRCTでは,内科治療に比しTEVAR後1年経過した時点での生命予後における優位性は証明されず,意見相反している1293, 1294).特に,急性B型解離に対するTEVAR後における逆行性A型解離の発生率の高さは,preemptive TEVARを急性期に行うことを躊躇させる417).反対に, uncomplicated急性B型解離に対するTEVARは内科治療との慢性期比較において,1年後以降の大動脈リモデリングに関する優位性が報告され,発症急性期にpreemptive TEVARを行うことの重要性を示唆しており1294, 1376, 1377),議論の分かれるところである. iii. preemptive TEVARの方法 まず,造影CT検査から得られた情報よりステントグラフト(SG)による胸部entry閉鎖のプランニングを行う. entry部の正確な同定を行い,その中枢端から中枢側20 mm以上の部分をlanding中枢端とする.また,この中枢landing部は非解離部かつ大動脈径≦37 mmで,SG径はlanding大動脈の径の109%以下であることが望ましい416, 417).さらに,Zone 2,3への留置に際しては,小弯側のbird’s beakを防止すべく,その留置デザインは細心の注 3.1.3 uncomplicated 表41 uncomplicated 急性/ 亜急性Stanford B 型大動脈 解離の治療の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 急性期の症例には内科治療を行う1263–1270). I C腹痛が出現したり繰り返したり,腹部分枝のmalperfusion を疑う場合,造影CT検査(早期相と遅延相)や血管エコー検査を繰り返すことを考慮する390, 1271, 1363). IIa C β 遮断薬を薬物療法の第一選択として考慮する1264, 1266, 1267, 1269, 1270, 1364–1367). IIa C初回診断後1 週間以内に,(造影)CT によるフォローアップを考慮する 68, 1269). IIa C急性期に緊急の侵襲的治療が可能な施設への搬送を考慮する68). IIa C将来拡大が予測される(high risk uncomplicated dissection)症例に対し,亜急性期または慢性早期にpreemptive TEVAR を考慮する385, 1287, 1289). IIa B急性期にpreemptive TEVAR を考慮してもよい1293, 1294). IIb B 急性期に外科手術は推奨されない. III C a. 定義 前出の「complicated急性B型大動脈解離」でない場合が,「uncomplicated」とされる.uncomplicated症例においてはその急性期に心拍数・血圧のコントロールを中心とした内科治療が施される1263–1270).近年,uncomplicated B型解離へのTEVARによる介入が慢性期予後(生命予後ならびに大動脈偽腔の予後)を改善するというRCTの報告があり1287, 1289),症例選択と介入のタイミングについて多くの議論がなされている385, 396–400, 1267, 1287–1292, 1295, 1368–1370). この選択の対象は,慢性期において偽腔が瘤化し,いわゆる解離性大動脈瘤となり,大動脈破裂のリスクを伴う症例であり,「high-risk uncomplicated dissection」とも呼ばれている1317).B型解離発症急性期・亜急性期における慢性期での偽腔拡大予測は,表39のパラメーターが参考となる385, 396–400, 1287–1292).また,uncomplicated B型解離における慢性期拡大はStanford大学が開発したcalculatorより推測することもできる401). TEVARによる介入のタイミングは次項の「preemptive TEVARのタイミング」,およびPQ 11(P. 109)を参照されたい.