p.114 抽出テキスト
直達的血行再建はバイパス術または人工血管置換術で達成できる1133). dynamic obstruction:TEVAR時代にあっては,dynamic obstructionに対する外科手術の適応は,解剖学的にTEVARが不適な症例に限られてきている.これを背景として,entry閉鎖目的の外科的中枢大動脈再建は,正中からのFET手術が増加し1316),左開胸手術は減少している.一方,腹部大動脈での開窓術(腎動脈下の人工血管置換術を伴う場合が多い)は,単純遮断で実施可能で,最も侵襲が小さく,血管内開窓術と比較し効果がより確実であるため,有用なオプションの一つである1315).しかしながら,本術式はあえてdouble-barrel (classical) aortic dissectionを作製するものであるため,遠隔期の偽腔拡大の点では不利である.開窓術は腎動脈下大動脈遮断でも可能であるが,腹部分枝から開窓部分までの距離が遠くなり,真腔拡大効果が不十分となる場合がある.したがって,腎動脈上遮断や腹腔動脈上遮断により,分枝部分の剥離内膜を切除(切開)する場合もある.この場合でも,内膜切除後は腎動脈下に遮断をかけかえて虚血時間は最小限とする.胸腹部切開で剥離内膜切除を行う方法もあるが,侵襲が大きいうえに,遠隔期の偽腔拡大破裂も危惧される1278). 大動脈型dynamic obstructionに対する腋窩–大腿動脈バイパス1354)は,本邦で多く行われる術式である.下肢のみの虚血には有効であるが,腹部臓器虚血が存在する場合,血流量不足のため成績は不安定で推奨できない. static obstruction:第一選択は経皮的ステント留置であるが,閉塞長が長い場合や真腔血栓閉塞を伴う場合などには,バイパス手術や血栓摘除術などの外科手術の適応となる.片側腸骨動脈閉塞には大腿–大腿動脈バイパスが頻用され1313, 1314),上腸間膜動脈で血管内治療が困難な場合は腸骨動脈–上腸間膜動脈バイパスの適応となる.腹腔・上腸間膜・腎動脈へのバイパスでは,inflowとする動脈の血流を確保する必要があり,対象動脈の真腔が狭小化している場合には,開窓のための腎動脈下腹部大動脈置換術を併施することが多い.腸管虚血を伴う場合には,可逆性の確認も可能な開腹経路が選択されることが多い.代用血管としては,自家静脈やePTFE(expanded polytetrafluoroethylene)人工血管がよく用いられるが,感染を危惧して自家静脈が選択されることが多い.上腸間膜動脈バイパスは,中枢吻合部位の大動脈解離の存在のため,かつ末梢吻合部位が閉塞部位より末梢になるため,素直な形態になる逆行性(inflowは腎動脈下腹部大動脈または腸骨動脈)が主に用いられる.末梢吻合部が閉塞部位から離れすぎると血流不足を生じうる. 解離で,慢性大動脈解離よりも急性解離で発生しやすいとされている417).さらに,末梢側landing zone以遠にSINEが起こることもあり,これも急性解離に限って起こるわけではない.しかしながら,SINEは急性解離に対するTEVARより,慢性解離に対するTEVARにおいて発生率が高いとされ1349),解離フラップの硬さの違いによると考えられる. iv. 長期予後 complicated急性B型解離に対するTEVAR後の生存率は術後1~2年で80%以上,5年でも70%以上と報告されている1341–1346).主要な合併症回避率が2年で48%であったという過去の報告もあるが1346),近年の報告では, freedom from reinterventionやtreatment failure freeと表現されている再治療回避率は5年で60%程度とするものが多い. 比較的高率に再治療が多い原因として,真腔が拡大するとともに偽腔が血栓化して縮小する大動脈のリモデリングが得られないことがあげられる.complicatedかどうかに関係なく,急性期から亜急性期のB型解離に対するTEVARでは,SGを内挿した部分でのリモデリングはほぼ確実に得られる一方で,腹部のリモデリングが不良なために再治療を要する場合がある1284, 1343, 1344, 1350, 1351). PETTICOAT法は腹部主要分枝や肋間腰動脈の起始部を覆うことなく真腔の拡大が得られるため,特にmalperfusionを伴う場合に有効であると報告されている1318).胸部から腹部にかけての早期の大動脈リモデリングに寄与するという報告もあるが1284, 1350),長期的な有用性はいまだ確認されていない1284, 1318, 1337, 1352, 1353). d. 外科手術 complicated急性B型解離に対する侵襲的治療の第一選択は,TEVARを始めとする血管内治療に移行してきており,外科手術を実施する機会は減少している.しかしながら,血管内治療はすべての患者に有効なわけではなく,解離の弓部大動脈への進展度合い,破裂様式,malperfusionの発生機序などにより,適用が困難あるいは単独では無効な場合もある.complicated急性B型解離のうち,外科手術の適応となりうる病態とその根拠,ならびに選択されうる術式を合併症の病態別に記載する. i. malperfusion Williamsらは,偽腔減圧で改善されるものをdynamic obstruction,改善されないものをstatic obstructionとし,後者には直達的血行再建が必要であるとしている1176).これはTEVARをはじめとする血管内治療の指針として報告されたものであるが,原則は外科手術にも応用可能である.すなわち,偽腔減圧はentry閉鎖または大動脈開窓術で,