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p.113 抽出テキスト

6malperfusionに対する追加治療:真腔の血流障害の原因として,分枝の真腔が大動脈から離断されることや,偽腔による圧迫が考えられる.開存した偽腔の真腔圧迫(dynamic obstruction)による狭窄に対しては,SGによりentryを閉鎖すると偽腔の血流が消失して,真腔の拡大が得られやすい.一方,血栓閉塞した偽腔による圧迫(static obstruction)の場合には,entryを閉鎖しても圧迫が解除されず,ステント留置やバイパス術などの追加治療が必要になる140). iii. 成績

complicated急性B型解離に対するTEVAR後の死亡率は決して低くはないが,従来の外科手術に比べて明らかに改善されており,欧米では30日死亡率2.8~13.3%と報告されている1308, 1311, 1334, 1339–1345).日本胸部外科学会の2016年の年次報告によれば,急性B型解離に対するハイブリッド治療を除く418例のTEVAR後の30日死亡率は6.5%であった43).

一方,complicated急性B型解離に対するTEVARの合併症は,慢性B型解離に対するそれの約3倍とされている1333).脳梗塞2.8~7%,SCI 3.4~13.3%と報告されているが1308, 1311, 1339, 1340, 1342, 1343),心合併症,呼吸不全,腎不全,腸管虚血などの消化器合併症,破裂後の血胸,下肢虚血などを合併することもあり,合併症全体では20~30%とされている1308, 1343).

また,急性大動脈解離では,挿入手技やSGによる脆弱な解離フラップの新たなtearの発生が危惧される1346–1348).最も深刻な合併症である逆行性A型解離は,急性解離に限って起こるわけではなく,発生率もそれほど高くないが,致死率の高い重篤な合併症であり,回避に努める必要がある1311).この逆行性A型解離は真性大動脈瘤よりも大動脈

によるcomplicated急性B型解離の治療が保険適用となっている.また,ベアステントの1機種も補助的なデバイスとして使用でき,PETTICOAT法1336, 1337)の施行が可能である.大動脈解離に対するTEVARの手技自体は大動脈瘤に対する手技と大差ない.

1アクセス:大動脈解離に対するTEVARにおいては真腔内にSGが挿入されていることが必須である.ガイドワイヤーやデバイスの挿入に際しては,大動脈造影や血管内エコーによりガイドワイヤーやデバイスが通過している部位を十分に確認することが重要である.

2landing zone:閉鎖すべきentryの前後でSGが大動脈壁に十分に圧着固定されるlanding zoneが必要で,圧着固定が不十分であれば,entryの閉鎖が不完全となる(type Iエンドリーク).中枢側landingには可能なかぎり非解離部を選択すべきで,これは後述のstent graft-induced new entry(SINE)が中枢側landing部に発生した際に,容易に中枢側に解離が進展し,致死的な合併症である逆行性A型解離となる懸念があるためである.急性B型解離では末梢側landing zoneの多くは解離部分となり,可能な限り屈曲のない平坦な部分が選択される.

3SG径:急性解離に対するTEVARにおいては,SGによる新たな内膜亀裂(SINE)の発生が多いとされており, SG径は大動脈瘤に対するSG径より小さな(5~9%オーバーサイジング)ものを選択する416, 1338).非解離部における大動脈径の計測は通常どおりであるが,解離部(特に末梢側)においてはその計測方法に議論がある.内膜の周径を計測し,この周径を正円に見立てて真腔径とする方法(図64 のA),真腔の長径を真腔径とする方法(B),解離後の大動脈径(急性期のみ)を基準とする方法(C)がある.

4PETTICOAT法:破裂の場合,entry位置が不明瞭なことが多いため,SGをできるだけ長く,横隔膜レベルまで留置することがある.このため広範囲に肋間動脈を閉塞させることになり,SCIの発生が懸念される.一方, malperfusionの場合は,entry閉鎖ができる長さにとどめる場合もある.PETTICOAT法は大口径のベアステントにより,肋間・腰動脈だけでなく腹部分枝も閉塞させることなく真腔を拡大させる方法であり,その有効性が報告されている1336, 1337).

5re-entry:大動脈解離においては主要なentryの他にも複数のtearがあることが多く,主要なentryをTEVARで閉鎖しても,他のtearから偽腔への血流が残存することがある.偽腔内の血流の残存は分枝からの逆流でも起こりうる.偽腔内の血流の残存により,破裂による出血がコントロールできないことが起こりうるほか,真腔の拡大が得られないために臓器虚血が改善されないことがある.図64 TEVAR 施行の際に用いる大動脈真腔径の計測方法A: 内膜の周径を計測し,この周径を正円に見立てて真腔径とする方法. B:真腔の長径を真腔径とする方法. C:解離後の大動脈径(急性期のみ)を基準とする方法.

A B C