p.112 抽出テキスト
参考に診断する.大動脈径が50 mmを超えている場合や発症後2週間以内における5 mm以上の急速な大動脈径拡大も,切迫破裂と同様に扱う.腹部主要分枝と下肢のmalperfusionの診断には経腹壁血管エコー検査や足関節上腕血圧比検査も一助となる.しかしながら,malperfusionによる臓器・組織障害の診断がついても,治療方針の決定(TEVARによるentry閉鎖など)は造影CT検査に頼らざるをえず,ともに補助診断の域を出ない.経食道エコー検査はB型解離の診断ならびにentryの評価,真腔狭窄の程度を評価でき,造影CT検査が施行できない際の有用な画像診断法となる.腎機能低下症例で時間的に余裕がある場合はMRI・MRA検査が診断の助けとなる1328, 1329).CT検査に比べ解像度が低いのが欠点となるが,entryの診断など治療方針決定の一助となる. c. 血管内治療i. 適応 急性B型解離に伴う重篤な合併症として,破裂,malperfusionに伴う臓器虚血,難治性疼痛,コントロール困難な高血圧,急速拡大などがある.これらを伴うcomplicated急性B型解離は緊急性,重症度ともに高く,病態に応じて侵襲的治療が行われる.従来,破裂や大動脈拡大に対する外科手術(人工血管置換術),malperfusionに対する解離フラップの開窓術,内臓動脈や下肢動脈へのバイパス手術などが行われてきたが,その治療成績は不良であった1330, 1331).しかし現在では,complicated急性B型解離に対し,開胸・開腹操作や体外循環を要さずentryを閉鎖できるTEVARの有効性が確立されている96, 1332–1335)(クラスI,エビデンスレベルC). いわゆる切迫破裂は難治性の疼痛を伴うことが多く, TEVARの良い適応になる.また,破裂のうちで比較的安定した状態を呈するsealed ruptureやcontained ruptureといわれる状態も良い適応になる.臓器虚血の定義は臓器によりさまざまであり,適応の判断に苦慮する場合も多い.生命に関わる可能性の高い,腹腔動脈と上腸間膜動脈の血流障害が疑われれば,積極的にTEVARが考慮されるが,画像上で片側の腎動脈のみに血流障害を認めるものの無症状で血液検査にても異常をきたしていない場合や,画像上では腸骨動脈の血流障害を認めるものの下肢の虚血症状がない場合の適応については,一定の見解が得られていないのが現状である. 日本胸部外科学会2016年の年次集計によれば,急性B型解離に対する治療症例550例のうち,ハイブリッド治療を含めたTEVARは469例(85.3%)を占めている43). ii. 方法 2019年現在,本邦では3機種のステントグラフト(SG) このようにcomplicated急性B型解離発症のメカニズムを考えれば,TEVARによるprimary entryの閉鎖が第一選択として推奨される理由がよくわかる386, 1272).ただし,破裂の場合は偽腔内へのチャネルをすべて止めることが必要で,とくに胸部大動脈瘤合併のcomplicated B型解離は, TEVARにおけるcomplete exclusionが得られないかぎり外科手術による置換が推奨される.bまたはcの症例で閉塞血管をカテーテルで突破できない場合は,バイパス手術や分枝動脈での開窓術が行われる. b. 診断i. 症状,身体所見 ショックバイタル,異常高血圧,不安・不穏,胸背部痛・腰痛,腹痛,下肢痛,下肢麻痺,上下肢脈拍触知不能,四肢血圧の解離,尿量減少などが挙げられる.疼痛の持続,再発はcomplicatedの診断に重要な症状である. ii. 血液生化学的検査 malperfusionの結果,腎機能の急速悪化,乳酸値やCPKの上昇などが起こる.しかし,これらのパラメーターが上昇した場合には,すでにmalperfusionによる臓器・組織障害が発生した後であり,治療のタイミングとしては遅きに失している可能性がある.急速進行する貧血は破裂・切迫破裂の診断の一助となる. iii. 画像診断 多くは造影CT検査に頼らざるをえない385, 399, 1281, 1301, 1323–1327).破裂の診断は大動脈解離の存在と大動脈周囲の血腫の存在により可能である.切迫破裂の診断は,大動脈解離の存在とその周囲への(血性)胸水の漏れで行うが, CT値のみから胸水を診断するのは難しく,症状(胸痛の持続など)や胸水穿刺(胸水中Ht値が血中Ht値の50%以上)などを 図63 大動脈解離に伴うmalperfusion の発生メカニズムによる分類a. dynamic obstruction: 大動脈真腔の狭小化に伴い分枝血流が阻害される. b. static obstruction: 解離した内膜が分枝内に入りこみ血流を阻害する. c. mixed type obstruction: aとbが合併した形で分枝血流が阻害さ れる. a b c