p.111 抽出テキスト
SVS/STSから報告された「Reporting standard for type B aortic dissection」においては,上記1,2のみをcomplicated dissection とし,3~5はuncomplicated dissectionに分類したうえで,亜急性期あるいは慢性期においてcomplicated(破裂や瘤化)につながる病態として「high-risk aortic dissection」と分類している1317).1,2は明らかな致死的合併症であるのに対し,3~5はそのリスクが低いため,SVS/STSのReporting standardの分類の方が,平等に成績比較できるものと考えられる.ただし,本項の引用文献の多くはIRADの分類に沿ったものであり,1~5を含めてcomplicatedとしている.大動脈解離におけるcomplicatedの意味するものは上記5つであるが,このすべては1と2に集約される病態ともいえる.3の持続痛・再発痛は,5の解離の進展,あるいは解離した大動脈壁の強いストレッチを意味し,1の切迫破裂とも解釈できる.また,5の大きな大動脈径,あるいは急速拡大する大動脈解離は,もともと真性瘤の存在下に解離が合併したもの,あるいは偽腔のストレッチに伴う急速拡大を指し,1の切迫破裂につながる.4のコントロール不能の高血圧は,2のmalperfusionに伴う上半身における血管抵抗の上昇,あるいは腎動脈狭窄などに伴う腎血管性・異常高血圧症を意味する病態とも考えられる.これらcomplicated急性B型解離は,B型解離全体の約25% (20~50%)に認められ,1と2の状態では至急の侵襲的治療が必要で,3~5においても早急な侵襲的治療を検討すべきである390, 399, 1271, 1308–1310). 破裂・切迫破裂のメカニズムは,entryから偽腔内に入った血流,あるいは中膜内出血の逃げ場所がなく,血液が偽腔内に溜まり,外膜側に破綻した状態といえる.このため破裂・切迫破裂症例では多くの場合,re-entryが存在しない.それゆえ,治療は偽腔に流れ込む血流を停止,すなわちentryを閉鎖することを基本と考えれば解決することが多い. malperfusionのメカニズムは以下の3つに分類される(図63).a: dynamic obstruction,b: static obstruction,c: mixed type obstruction.aはentryから偽腔内に入った血液がその抜け場がなく,偽腔内に血液が溜まって真腔を圧迫し発症すると考えられる.bは解離した内膜が分枝内にも入り込み,これが分枝血流を阻害するもので,cはaとbの併存を指す.aはTEVARによるentry閉鎖で,bおよびcはentry閉鎖に加え,閉塞血管への直達治療(ベアステント留置,大動脈開窓術や分枝バイパス手術)で解決できる1274, 1318–1322). 偽腔への介入により,拡大した偽腔のcomplete exclusionが得られれば,これも治療効果が期待できる1307).いずれにしても外科手術との平等な比較が行われなければ強い推奨はできず,現時点では外科手術の高リスク症例に対してのみTEVARが推奨される. 3.1.2 complicated 表40 complicated 急性/ 亜急性Stanford B 型大動脈解離 の治療の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 急性例への初期治療としての心拍数と血圧の厳格なコントロールを行う(心拍数<60/min,100 mmHg ≦収縮期血圧≦ 120 mmHg)1264, 1266–1270). I C急性例を緊急手術(血管内治療または外科手術)が可能な施設へ搬送する68). I C急性・亜急性例にTEVAR を行う384, 386, 390, 399, 1271, 1272, 1274, 1275, 1280, 1288, 1308–1311). I C灌流障害のある急性・亜急性例に対し血管内治療(血管内開窓術・血管内ステント留置)を考慮する140, 477–481, 1276–1279). IIa C血管内治療が困難な灌流障害例に外科手術(外科的開窓術・バイパス術)を考慮する1133, 1278, 1312–1315). IIa C TEVAR の適応ではない急性期破裂に対し人工血管置換術を考慮する386, 1272, 1308–1310). IIa C血管内治療の適応ではない症例に対しfrozen elephant trunk を用いた全弓部置換術を考慮してもよい1316). IIb C急性期の症例に対し外科手術を考慮してもよい1273, 1312). IIb C a. 定義「complicated急性B型解離」*は「解離発生に伴い,生命を含む急性期予後に危険が及ぶ,下記1~5がみられる状態」と定義される1271, 1308, 1309). 1 破裂・切迫破裂2 malperfusion(分枝灌流障害):腹部主要分枝,下肢, 脊髄などへの灌流障害3 持続する痛み,または再発する痛み4 コントロール不能の高血圧5 大きな大動脈径,真性瘤と一致した部位の解離合併, 急速拡大・進展する大動脈解離* 上記の1~5のcomplicated dissectionの定義は IRADから引用したものである.しかし,近年