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p.107 抽出テキスト

なお,遠位弓部以遠の残存解離や瘤化に対する手術に関しては他項(第7章の「3. 再手術」P. 132)を参照されたい.本項では大動脈基部を含む中枢側・末梢側吻合部の再手術について概説する.

2.4.2 再手術の原因と手術適応

表37 Stanford A 型大動脈解離の再手術の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

残存大動脈の破裂,または大動脈径の急速な拡大(≧5 mm/ 半年)に対して再手術を行う384). I C残存大動脈径の拡大(≧60 mm)に対して再手術を行う384, 1233). I C初回手術で上行大動脈置換のみ施行された症例では,術後1,3,6,12ヵ月後と,以後は6ヵ月ごとのCT 検査を考慮する1231, 1232). IIa C

再手術の原因は,吻合部中枢側拡大(大動脈基部拡大,大動脈弁閉鎖不全を含む),末梢側偽腔拡大,人工血管感染などである.再手術の適応は,通常の真性瘤に準じて最大短径≧55~60 mmや急速拡大(≧5 mm/半年)が基本であり,これに症状などを併せて再手術が検討される384). Marfan症候群を代表とする(遺伝性)結合織異常を伴う場合は,最大短径≧45~50 mmとするなど,適応を早める必要がある.

2.4.3 再手術の術式と注意点

A型大動脈解離修復術後の再手術は多くの場合,再開胸(再胸骨正中切開)を必要とする.したがって,心・大血管損傷に備えて,瞬時に体外循環を確立できるよう,送・脱血路に利用できる末梢動静脈の事前の剥離と確保が重要である.多くは,迅速に直接挿管可能な片側あるいは両側の鼠径部動静脈が利用される.腋窩,鎖骨下動脈も利用できるが,十分な太さの送血管を挿入できない場合もあり,その場合は径8 mm程度の人工血管が吻合後に送血路として利用される.送血路確立の即時性に劣るのが欠点であるが,脳分離体外循環の送血路として併用できるという利点がある.脆弱な吻合部仮性瘤が胸骨裏面に密着する場合は,まず体外循環を開始し,短時間の循環停止が可能な温度帯まで冷却した後に胸骨切開を行うのが安全である.低温心室細動中の左室の過伸展が危惧される場合は,送血圧を低下させる,あるいは左第5肋間などから左室心尖部にベントを直接挿入することも有効である.胸骨切開に際しては,埋植された人工血管やそれに連続

する瘤化病変が胸骨裏面に近接・癒着している場合,その損傷の回避に工夫を要する.前回手術時に埋植された胸骨ワイヤーを安易に抜去せず,胸骨鋸の深達指標・臓器の防御盾として利用することは有効である.また,胸骨切開の直前に傍胸骨肋間を胸膜外で小切開し,これより用指的に胸骨裏面と人工血管,瘤壁の癒着を剥離するとともに,胸骨鋸の誘導や胸骨自体の腹側への牽引を行うことも,臓器損傷の回避に有効である. a. 大動脈基部拡大と中枢側吻合部仮性瘤

大動脈基部の拡大や,それに伴う中等度以上の大動脈弁閉鎖不全症,吻合部仮性瘤などが再手術の適応となる.術式は年齢,耐術能,病変,併存疾患などを考慮し決定する.基部置換後の場合,冠動脈再建後の強固な癒着のために冠動脈本幹または冠動脈入口部の受動が困難であることや,外科用接着剤による組織変性などのため,冠動脈ボタン作製が困難な場合がある.この場合は小口径人工血管を間置するPiehler法が有用である.

再手術における冠動脈再建時の合併症発症率は25~ 50%と高く1234–1236),周術期心筋梗塞や予期せぬ冠動脈バイパス手術の追加は早期死亡の独立した危険因子である1235, 1237).また,大動脈解離の症例は大動脈弁自体の病変がないことが多く,若年齢症例を中心にVSRRの適応となりうる.さらに,初回手術としての大動脈弁置換後の症例で,人工弁が機械弁の場合は,人工弁を温存して基部を人工血管で置換する術式も選択肢の一つである1238).

注意点として,ほとんどの症例で中枢側吻合にフェルト補強がなされており,無理な剥離・除去により右心房,冠動脈,肺動脈の損傷をきたす.また,初回手術時の外科用接着剤や止血薬使用例においては,再手術時にも残存するものがあり,塞栓症の原因となるため,ていねいな除去に留意する.外科用接着剤の中には大量使用下で組織変性をきたしている場合があり,遺残組織の強度にも配慮する. b. 末梢側吻合部仮性瘤と吻合部以遠の拡大

全弓部置換術の術式は,真性瘤のそれに準じる.注意点として,DeBakey III型逆行性解離の初回手術では,下行大動脈以下のentry(tear)を残したまま,上行および部分弓部置換,または全弓部置換が選択されていることがある.この場合,遠隔期に下行大動脈以下の偽腔の拡大をきたす.術式として,ET/FETやTEVARの併用などによる,一期的手術または段階的手術を検討する.再手術での遠位側大動脈吻合に際しては,慢性期の解離フラップの可塑性に乏しい場合が多いので,無理なFET挿入を含め,真腔拡大操作と吻合の双方に細心の注意を要する.中枢側同様に,外側フェルトの剥離・除去,外科用接着剤の処理に