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p.100 抽出テキスト

枝付きのものがあるが,本邦の承認デバイスは弓部分枝が備わっておらず,弓部置換用に分枝付き弓部グラフトの追加が必要となる. b. 適応

遠位弓部真性瘤と大動脈解離(急性,慢性)の両者において適応とされる.急性大動脈解離においては,通常のETですでに証明されている末梢側偽腔の血栓閉鎖化,真腔拡大1094, 1103)をさらに促進する目的で行われる.特に, malperfusion症例,遠位弓部または近位下行大動脈にentry(tear)が存在する症例,比較的若年の症例などが良い適応となる1110). c. サイジングと挿入位置

FETのサイジングに関しては,真性瘤と大動脈解離では異なり,議論の多いところである.急性解離においてはFET遠位端のlanding部位の大動脈径1111)またはその90% 1109)が推奨されてきた.しかしながら,急性解離ではFETによる解離内膜の安定(固定)が主目的であり,近年はFETによる末梢側の新規entry(stent graft-induced new entry, SINE)を危惧し,真腔直径と同径(結果的に大動脈径の90%以下となる)のより小さなサイズを選ぶ傾向にある.普及当初はSCIを危惧し短いステント(6 cm)を浅く(T5~ T7),より近傍に挿入していたが1109),グラフト部位の屈曲(後述),SINE発生を防ぐ目的から,より長いステントを直

線化した下行大動脈まで挿入する施設が増えている. d. 成績

急性大動脈解離に対するFETを用いた全弓部置換術後の院内死亡率は5~18.2% 1106, 1109, 1111–1114)と報告されている.下行大動脈のリモデリング率は通常のETに比べて高く1104),急性解離に対する全弓部置換は,FETを併置するとこのリモデリング効果により,上行置換に比して遠隔期予後を改善する1061, 1105, 1115, 1116).また,急性期でのFETは慢性期のFETに比し胸部下行大動脈のリモデリング率が高く(33%対17.5%)

1117),再治療率も低い1109, 1111, 1114).周術期の対麻痺

(一過性も含む)は0~22%で発生し1108, 1109, 1111–1114, 1118–1121),その発生率は術中の低血圧またはグラフト屈曲や残存する

末梢解離による真腔狭小化(cutoff)により高まる1107, 1122). FETによる末梢側のSINEの発生率は5%以下であり,その半数は追加治療を要しないか,TEVARによる追加治療が可能である1123).SINE予防には下行大動脈の直線化した部分に遠位端を留置することが推奨される.急峻な弓部を有する場合,非ステント部分が屈曲狭窄するとの報告があり1124)(図61),弓部屈曲部分にステント部分がくるようにデバイスを挿入するべきである1124).Marfan症候群の急性解離でもFETの早期・中期成績は比較的良好であると報告されている1125, 1126).しかし,entryがFET遠位端に隣接する場合,小さい真腔,屈曲の強い例は合併症発生率が高く,推奨されない1125).

2.2.4 malperfusion

a. 冠動脈表35 急性Stanford A 型大動脈解離における冠動脈malperfusionの診断と治療の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

術前に12 誘導心電図により心筋虚血変化の有無を,心エコー検査により壁運動異常の有無を評価する1127, 1128). I C手術中に経食道心エコーにより心筋虚血発生の有無を評価する212). I C人工血管置換術のみで改善されない冠動脈malperfusion に対し,静脈グラフトによる冠動脈バイパス術(CABG)を行う1128). I C緊急カテーテル検査中に解離の診断がついた場合,外科手術準備の開始と同時にカテーテル治療による冠動脈再疎通を考慮する1129, 1130). IIa C冠動脈malperfusion により血行動態が破綻し,かつ迅速な外科手術開始が困難な場合,術前にカテーテル治療による冠動脈再疎通を考慮してもよい1129, 1130). IIb C

図61 高度な弯曲を呈する弓部大動脈での屈曲狭窄とその治療

高度の屈曲狭窄TEVAR 前TEVAR 後