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p.99 抽出テキスト

治療のオプションが登場した.カテーテル治療には生体弁の狭窄症,弁周囲を除く逆流症に対するvalve-in-valveや機械弁・生体弁両方の弁周囲逆流に対するカテーテル的閉鎖術などがある.

大動脈弁位の外科的再置換術は良好な成績が示されているものの744, 745),初回AVRにくらべると手術死亡率が高いという報告もある746).Valve-in-Valve International Data Registryの報告では,手術リスクの高い症例に対するvalve-in-valve 459人の手術死亡率はSTSスコアによる予測死亡率よりも低かったことが示されている747).一方で,再AVRとvalve-in-valveの成績が同等であるという報告もある748, 749).また,小さな外科生体弁や,もともとPPMのある症例にvalve-in-valveを行うと予後が悪いという報告もある747, 750).外科的再置換術かvalve-in-valveかの選択は,弁膜症チームで外科的生体弁のサイズ・種類,バルサルバ洞の解剖学的適合性,手術リスク等を考慮して,症例ごとに決定されるべきである.

僧帽弁位の劣化した生体弁内にカテーテル弁を植え込むmitral valve-in-valveは,2020年3月現在わが国では承認されていないが,海外の後ろ向き観察研究で再MVRと比較して,対象がより高リスクであったにも関わらず外科手術と同様の1年生存率を示したという報告がある751).

弁周囲逆流に対する外科的手術には,再弁置換術とパッチなどを用いた部分的修復術があり,患者の手術リスクや,リークの範囲などを考慮して選択する.弁周囲逆流に対する外科的手術を施行した190人の長期フォローアップ研究では,手術死亡率が7%,10年生存率が56%, 10年弁周囲逆流再発率は32%であった752).122人の長期フォローアップ報告では,30日死亡率が10.7%,12年生存率が39%であった753).いずれの研究でも術前に2回以上の心臓手術を行っていることが危険因子であった.一方,カテーテル的弁周囲逆流閉鎖術は,長期成績がまだ示されていないが,良好な短期成績が報告されている. 308人の報告では,91%で閉鎖デバイス留置に成功し,在院死亡率は3.9%であった.フォローアップ期間の中央値は110日で,最終フォローアップ時に25.3%の患者で中等症以上の弁周囲逆流が認められた754).カテーテル的弁周囲逆流閉鎖術は,2020年3月現在わが国では承認されていない. b.  人工弁機能不全による狭窄・逆流に対する治療適応

(表49)心不全症状のある重症の人工弁狭窄症・人工弁逆流に対して,外科的再弁置換術を行う(推奨クラスI).重度の溶血をきたす人工弁逆流(多くは弁周囲逆流)に対して,外科的再弁置換術を行う(推奨クラスI).また,手術リスクの高い,有症候性の重症大動脈弁位人工弁狭窄症または重症大動脈弁位経弁逆流に対して,カテーテル的valve-in-valve術を行う(推奨クラスIIa).

無症状重症人工弁狭窄症/人工弁逆流に対しては,自己弁の際の適応を参考にしながら,再手術であるというリスクも考慮に入れ,適応を弁膜症チームで慎重に決定する.

2.4.4 内科治療

PPMあるいはSVDに起因する狭窄や,人工弁周囲逆流およびSVDに起因する逆流の場合,程度が中等度であれば利尿薬や降圧薬を中心とした一般的な心不全薬物療法にて管理することが可能である.

一方,人工弁周囲逆流では,機械的溶血に起因する重症貧血を呈することがある739).溶血性貧血は重症であれば外科治療を検討するが,しばしば再手術が難しい.そのような場合は輸血で対処するしかないが,頻回の輸血はヘモクロマトーシスの発症,不規則抗体の発現などのリスクがある.溶血性貧血の場合,造血能は増幅されていることが通常であるが,エリスロポエチンや鉄剤の投与が有効であることがしばしばある.また溶血は人工弁と生体組織の間の僅かな間隙を血液が通過する際に起こるため,血球の受けるストレスを軽減させるためにβ遮断薬の投与が有効であることもある755).β遮断薬の投与により徐脈となる場合は,ペースメーカー挿入が必要となることもある.

人工弁IEに対する治療はIEの治療の項(第13章5. IEの予防)に詳細は譲るが,弁輪部膿瘍の存在,人工組織への感染などから通常の抗生物質では治療に難渋することが多い.