p.98 抽出テキスト
PPMは人工弁の機能不全そのものではなく,体格に比較して小さなEOAしか取れない弁が移植された場合に診断する.よって術後早期に比較的高い圧較差が記録されるような場合にはPPMを疑う.中等症PPMは比較的よく(20~70%)遭遇するが,重症PPMはまれ(2~10%)とされる.重症PPMは大動脈弁位でEOA index<0.65 cm 2/ m 2(BMI<30 kg/m 2),<0.55 cm 2(BMI≧30 kg/m 2),僧帽弁位でEOA index<0.90 cm 2/m 2(BMI<30 kg/m 2), <0.75 cm 2/m 2(BMI≧30 kg/m 2)の時に診断する. b. 人工弁逆流の診断 機械弁においては回旋軸(pivot)の部位や周縁(rim)内側から少量の生理的逆流ジェットを認めるが,パンヌスや血栓,疣腫などにより病的経弁逆流を認めることがある.また生体弁においても少量であれば生理的逆流を弁中央から認めることがあるが,弁尖の変性が進めば病的逆流へと進行する. 機械弁においても生体弁においても表51に示すように同一の基準で重症度を決定する711, 712).また近年のTAVIの症例数の増加によりTAVI後弁周囲逆流については独立した診断基準が提唱されている291).人工弁周囲逆流についてはその局在を大動脈弁–僧帽弁線維性連続の中央を12時として,大動脈弁・僧帽弁とも時計方向に時刻を つけていく. 重症度判断基準は主に心エコー図検査によって行われるが,人工弁に用いられる金属構造に起因する音響陰影によってTTEのみでは評価しにくいこともしばしばあり,そのような場合,TEEが有用である.特に僧帽弁位人工弁周囲逆流の診断には,TEEでのみ正しい診断が可能となる.一方,大動脈弁位人工弁逆流は部位によってはTTEのほうが正確に逆流を検出できることがある.TTEおよびTEEを用いても人工弁逆流の定量化は難しいことが多く,しばしばMRIを用いた血流定量評価が重症度判定に役立つ. 2.4.3 人工弁機能不全に対する外科的またはカテーテル 的治療の適応 重症の人工弁狭窄症/人工弁逆流は,心不全および溶血を引き起こす.これらの症状がみられた場合,外科的またはカテーテル的治療の適応を考慮する. a. 外科治療とカテーテル治療 弁周囲逆流を含む重症人工弁機能不全に対しては,外科的再手術が唯一の治療法であったが,近年カテーテル 表51 人工弁機能不全 逆流病変の重症度指標 軽症中等症重症 大動脈弁位人工弁ARジェット幅(カラードプラ法)狭い中間広いジェットPHT(連続波ドプラ法)(ミリ秒) >500 200~500 <200弁周囲径に対する弁周囲逆流の割合(%) <10 10~29 ≧30縮流部幅(cm) <0.3 0.3~0.6 >0.6 EROA(cm2, PISA法) <0.10 0.10~0.29 ≧0.30逆流量(mL/beat, volumetricまたはPISA法) <30 30~59 ≧60僧帽弁位人工弁MRカラージェット(カラードプラ法)少ない中間多い肺静脈血流収縮期優位収縮波減高逆行性収縮波僧帽弁流入血流速(m/秒) - - ≧1.9 DVI(VTIPrMV/VTILVOT) <2.2 2.2~2.5 >2.5縮流部幅(cm) <0.3 0.3~0.59 ≧0.6弁周囲径に対する弁周囲逆流の割合(%) <10 10~29 ≧30 EROA(cm2, PISA法) <0.20 0.20~0.39 ≧0.40逆流量(mL/beat, volumetricまたはPISA法) <30 30~59 ≧60 DVI: Doppler velocity index,VTI: velocity-time integral