p.97 抽出テキスト
Intuity弁などは比較的新しい弁であり,他の外科的生体弁と同様の結果を期待できるかどうかは不明である.特に外巻き弁特有のステント周囲弁尖裂傷の発症については注意を要する737). 現在用いられている経カテーテル生体弁はわが国においては大動脈弁位に限定されるが,ウシ心膜弁(Sapien弁)ブタ心膜弁(CoreValve,Evolute)のいずれの弁もクリンプに伴う潜在的な弁尖へのダメージや,非対称性の拡張,弁尖とフレームの相互作用などにより人工弁機能不全の早期発症が危惧されている738). また,機械弁でも生体弁でも,弁周囲逆流はしばしば術後に認められる合併症である.IE,縫合不全,機械的ストレスなどにより発生する.人工弁周囲逆流は,AVR後5~10%程度,MVR後の10~20%程度認める合併症であるが,その多くは無症候性である.人工弁周囲逆流を有する患者の10%に弁逆流による心不全症状や溶血性貧血を認める739). 2.4.2 人工弁機能不全の診断 人工弁機能障害の診断は心エコー図検査が中心となるが,ときにCTやMRIが有用である.CTは血栓とパンヌスの鑑別や,人工弁周囲逆流の把握に有用である740). MRIを用いた人工弁逆流量定量は,特に肺動脈弁位人工 弁閉鎖不全の診断に重要である741). 透視画像による構造の把握は,機械弁の弁葉の動きの評価,生体弁のステントストラット形態,人工弁周囲の石灰化を評価するときに有用である742).開放および閉鎖角については各人工弁で正常値が規定されており, Carbomedics弁などの二葉機械弁は75~90度が正常開放角である.また弁輪の過剰な動き(>15度)は離開(dehiscence)として認識され,通常,高度弁周囲逆流を伴う.原因が感染であるかどうかを評価するためにはガリウムシンチやPET CTが有用である743). a. 人工弁狭窄の診断 人工弁開放の程度は主に心エコー図検査や心臓MRIを用いてEOAを求めるが,左室流出路の正確な測定が困難な場合はDVI(Doppler velocity index)などを用いて狭窄の有無,程度を評価する.EOAはそれぞれのサイズの弁において正常値が発表されており,それより-1SD以下の場合を中等症人工弁狭窄,-2SD以下の場合を重症人工弁狭窄という712).または大動脈弁位人工弁では,最大流速 4 m/秒以上,EOA 0.8 cm 2以下,僧帽弁位人工弁では,最大流速2.5 m/秒以上,EOA 1.0 cm 2以下で重症人工弁狭窄と診断する(表50). 表50 人工弁機能不全 狭窄病変の重症度指標 正常狭窄の可能性あり有意狭窄 大動脈弁位人工弁加速時間(ミリ秒) <80 80~99 ≧100最大血流速度(m/秒) <3.0 3.0~3.9 ≧4.0 mPG(mmHg) <20 20~34 ≧35フォローアップ中のmPG上昇(mmHg) <10 10~19 ≧20 EOA(cm2) >1.1 0.8~1.1 <0.8計測したEOAと各人工弁における正常AVAの比較reference±1 SD < reference -1 SD < reference -2 SD DVI(VTILVOT/VTIAV) >0.30 0.25~0.30 <0.25僧帽弁位人工弁ジェットPHT(連続波ドプラ法) (ミリ秒) <130 130~200 >200最大血流速度(m/秒) <1.9 1.9~2.5 >2.5 mPG(mmHg) ≦ 5 6~10 >10フォローアップ中のmPG上昇(mmHg) <5 5~12 >12 EOA(cm2) >2.0 1.0~2.0 <1.0計測したEOAと各人工弁における正常MVAの比較reference±1 SD < reference -1 SD < reference -2 SD DVI(VTIPrMV/VTILVOT) < 2.2 2.2~2.5 >2.5 DVI: Doppler velocity index,VTI: velocity-time integral