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特に,術後10年以上経過した症例では,心エコー図検査による弁の劣化に関するフォローアップは重要である.新規症状が出現した場合にはその原因を究明するために,ただちにTTEを行う. 人工弁機能不全やIEが疑われる症例ではTEEを行う711, 712).人工弁の血栓やパンヌス形成による狭窄弁が疑われた場合には弁透視や心臓CTが有用である712). 2.1.2 血栓弁が疑われた場合 新たに息切れを訴える症例で血栓による狭窄弁が疑われた場合にはTTE,TEE,弁透視,心臓CTを行い迅速に診断を確定する.血栓弁は多くの場合機械弁で問題となるが,生体弁での報告もある713, 714).臨床的に症状のない生体弁の血栓はCTで指摘されることも多く71),近年TAVIで多く報告されている.血栓が経弁圧較差の上昇をもたらす715). 2.1.3 溶血と弁周囲逆流 人工弁置換術後症例で溶血が疑われた場合には,TTEで弁周囲逆流が指摘されなくてもTEEを行うべきである.弁周囲逆流の原因がIEによる場合,または繰り返し輸血を必要とする貧血や症状を有する場合には再手術を考慮する. 2.2 抗血栓療法 2.2.1 機械弁例における抗血栓薬の選択とコントロール (表47) 機械弁置換術後患者では全例にワルファリンによる抗凝固療法が必要となる.(推奨クラスI)しかし,ワルファリン投与下においても年間1~3%程度に血栓塞栓症の合併が認められる716).欧米のガイドライン234, 386)では現在,第二世代二葉弁(Carbomedics弁,ATS弁やSt. Jude Medical弁など)では大動脈弁位でINR 2.5(2.0~3.0),僧帽弁位でINR 3.0(2.5~3.5)を推奨している.塞栓症既往,心房細動,MSおよびLVEF<35%の場合は塞栓症のリスクと判断し,INRは通常より0.5ほど高値で設定される.また,ボール弁などは米国で3.0(2.5~3.5)または欧州で3.5(3.0~4.0)が推奨されている.さらにワルファリンに加えてアスピリン75~100 mgの併用が推奨されている.しかし,日本人は欧米人と比較して,出血合併症のリスクが高く塞栓症のリスクは低いことが古くから知られており,ワルファリンの至適治療域や抗血小板薬の併用に関しては,欧米のデータをそのまま流用することはできないと考えられる.出血性合併症の多い日 本人においては全例に推奨されるのではなく,個々の症例で検討するべきである.また,コーティングやヒンジ部分が改良されたOn-X機械弁では,大動脈弁位においてワルファリン低用量INR 1.5~2.0と常用量のランダム化比較試験(PROACT試験) 693)で低用量でも塞栓症のイベント発生率は上昇せず出血イベントを抑制したとの成績もみられる.本ガイドラインでは,大動脈弁位に対してはINR 2.0~2.5,僧帽弁位および塞栓症リスクのある大動脈弁位に対してはINR 2.0~3.0を推奨し,抗血小板薬の併用は推奨しない.適切な抗凝固療法中であっても明らかな血栓塞栓症を発症した患者に対しては,INRを2.5~3.5 にコントロールする(推奨クラスIIa)ことやアスピリンの併用を考慮してもよい(推奨クラスIIb). 人工弁に対するDOACの使用については,機械弁術後症例に対するワルファリンとDOACのランダム化比較試 表47 人工弁例に対する抗血栓療法の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 機械弁ワルファリンによる永続的な抗凝固療法ワルファリンコントロールのINR の目安・大動脈弁位: INR 2.0~2.5・ 大動脈弁位かつ塞栓症リスク有り: INR 2.0~3.0・僧帽弁位: INR 2.0~3.0 I B適切な抗凝固療法中であっても明らかな血栓塞栓症を発症した患者に対する, INR 2.5~3.5 を目標としたワルファリン投与IIa C適切な抗凝固療法中であっても明らかな血栓塞栓症を発症した患者に対する,アスピリンの併用IIb C アスピリン単独投与III B DOAC の使用III B 生体弁術後3ヵ月未満の症例に対する,INR 2.0 ~2.5 でのワルファリンによる抗凝固療法IIa B TAVI 後6ヵ月未満におけるアスピリン75~100 mg +クロピドグレル75 mgの併用投与後,アスピリンまたはクロピドグレル単剤投与の続行IIa C