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p.91 抽出テキスト

2.3.2 診断・手術適応

病態生理を念頭においた上で,ASの重症度はCTでの大動脈弁石灰化の程度なども考慮に入れて評価するべきである.ただし,ASが僧帽弁に対する介入のみで改善することはないが,MRは大動脈弁に介入することで改善する場合があるため,この連合弁膜症では特にMRの評価に注意を払う必要がある.つまり重症MRに対して手術適応がある場合は,ASが中等症以上であれば二弁置換術を行うことが推奨されるが,重症ASの場合は,MR(特に中等症の場合)に対して外科的介入が必要かどうかは,大動脈弁置換のみでMRの改善がどの程度期待できるかによって決定される686, 688, 689).MRの原因に関しては,ASによる左室機能不全に伴う二次性MRの他,弁逸脱や弁尖の変性,弁輪石灰化に伴う一次性MRも認める.重症ASによる左室機能低下を伴っている場合は,MRは二次性(機能性)の要素が強く,術後に左室機能が改善することでMRが改善することがある.一方,弁尖の器質的変化が強い場合や僧帽弁輪拡大・心房細動を伴う症例では術後のMRが改善しにくいため,心エコー図検査で術前の僧帽弁形態評価を入念に行うことが重要である690, 691).

2.4 大動脈弁閉鎖不全症(AR)兼僧帽弁 閉鎖不全症(MR)

2.4.1 病態生理

この連合弁膜症では両病変ともに左室に容量負荷が生じるため左室拡大を来す.圧負荷の程度に関しては,どちらの弁膜症が主体かによって異なる.

2.4.2 診断・手術適応

逆流の重症度評価に関して,心エコー図検査におけるvolumetric法は使用できず,AR・MR共にPISA法で評価する方が良い.ARに関しては心臓MRIの位相コントラスト法を利用するとより正確に求めることができる.

無症候性ARと無症候性MRとでは,手術の適応となる左室サイズやLVEFの基準が異なるため,手術適応はより重症である弁膜症に合わせて考える.ARとMRの重症度を慎重に判断することが重要であるが,重症度が同程度の場合は判断が難しい.重症MRで手術適応がある場合,中等症以上のARに対しては同時手術が推奨される.一方,重症ARで手術適応がある場合,中等症のMRに関しては,AS+MRの場合と同様,MRが一次性(器質的)か二次性(機能性)かを見分けることも術式選択の

際に重要である.重症ARによる左室拡大に起因した二次性(機能的)MRの場合は,ARが修復されるとMRも改善することが期待されるからである.術式に関しては, MRに対して僧帽弁形成術が可能かどうかをTEEを用いて判断する必要がある.

2.5 大動脈弁狭窄症(AS)兼僧帽弁狭窄症 (MS)

2.5.1 病態生理

ASとMSの合併は,原因のほとんどがリウマチ性であったが,近年の高齢化に伴い退行性・変性AS+MSの数が増加している.この連合弁膜症では,MSにより左室充満は低下し,AS単独よりも大動脈弁通過血流量が減少するため「ASを過小評価」する傾向にある.また,MSに関しても重症ASにより左室拡張末期圧が上昇すると,左房–左室圧較差を過小評価するため,「MSを過小評価」する傾向にある.

2.5.2 診断・手術適応

MSの重症度評価に関しては,圧較差のみならず2D/3D心エコー図検査を駆使した連続の式やトレース法からMVAを求めることが重要である.ASに関しては,過小評価するため,CTでの大動脈弁石灰化の程度なども考慮に入れて評価するべきである.また,左室肥大の程度もASの重症度評価の一助となる.

治療介入に関しては,リウマチ性の場合,ASが軽度で僧帽弁がPTMCに適する場合はPTMCをまず考慮するべきである.PTMCでMSが軽減したのちにASを再評価する.

一方,退行性・変性の場合は,僧帽弁は弁尖よりも弁輪の高度石灰化を伴う.高度弁輪石灰化例では,人工弁の縫合が難しく,手術リスクが高くなる.MSの重症度を慎重に評価し,高齢でMSが中等症以下の場合は,ASに対する介入のみを行うことも考慮される.その場合, TAVIも選択肢となる.MSが重症の場合はASに対する介入のみでは予後不良となる692).