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が,すべての病変の全体的な影響をもとに手術適応を判断されるべきである.従って,運動耐用能や最大酸素摂取量,安静および運動負荷時の心室機能や肺高血圧の評価,BNP値などが治療方針決定に有用である可能性がある678, 679). 2 各論 2.1 大動脈弁狭窄症兼閉鎖不全症(ASR) 単独のASまたはARにおいては,重症度分類に基づいた手術適応基準が各ガイドラインにおいて提唱されているのに対して,ASRに関する研究は少なく治療ガイドラインは明らかにされていない.このため,より重症な弁膜症の治療ガイドラインに基づいた管理および治療方針の決定が行われていると想定される.しかし,ASRは単独ASまたは単独ARとは異なる臨床経過をたどる可能性がある.過去の研究によれば,ASとARがともに中等症のASRであっても,その予後は重症ASと変わらないと報告されている680-682).ASRの特徴であるASによる圧負荷とARによる容量負荷が,中等度であっても複合的に予後へ影響する病態を生じるためと考えられる.ASRではASの圧負荷によって求心性肥大が生じ,ARの容量負荷によって遠心性肥大を生じるため,単独ASおよび単独ARに比較して心筋重量が増大する680-682).従来から心筋重量の増加は心疾患の予後と関連することが知られており,心筋重量の増大がASRの複合的な病態の重症度を反映している683, 684).高度心肥大は左室拡張機能を低下させるが,ARによる容量負荷によって左室拡張期圧を急激に増加させ,心不全症状を顕性化させる685).ASRでは弁膜症の進行がなくても症状が認められるようになることがあり,弁疾患よりも拡張機能障害の進行が原因であると考えられる680-682).このように,従来のASもしくはARのガイドラインではASR患者の管理には不十分である. ASRでは弁膜症の重症度評価に加えて心筋重量や拡張機能評価を行い,中等症弁膜症ではなく重症ASに相当するより厳密な経過観察が推奨される. 2.2 僧帽弁狭窄症兼閉鎖不全(MSR) MSとMRが合併するメカニズムにはリウマチ性変化と高齢化による僧帽弁輪部の石灰化を含めた変性によるものなどが知られている.これらのメカニズムを同定する ことが重要である.それが重症度評価とともに外科治療の選択肢にも影響する.リウマチ性の特徴は,交連部や時に弁下部組織に至る癒合と石灰化であり,変性性の特徴は弁輪の石灰化で,交連部の癒合を起こすことは少ない.しかし高齢者では,僧帽弁複合体の石灰化が高度になるため,鑑別が困難な場合がある.石灰化の分布をより的確に診断するためには,心エコー図検査だけでなくCT検査を使う試みもなされている. 両者の合併は,ドプラ法による重症度評価に影響を与える.MRは左室への流入血流量を増やし拡張期の僧帽弁圧較差を増大させ,MS重症度は過大評価される.重症度診断には,単一のドプラ指標によるのではなく,自覚症状も含めて総合的に診断するように注意が必要である.心エコー図検査による心内圧推定だけでなく,心カテーテル検査による侵襲的な圧測定が重症度評価に役立つ場合がある.連合弁膜症は血行動態の評価も複雑だが,手術至適時期についてエビデンスが少ない.至適手術時期の検討には弁膜症チームによる多角的な視点が求められる. また手術方法の選択にも慎重な検討が必要である.リウマチ性MSが主な病態で中等症以下のMRが合併している場合には,PTMCで治療可能だが,合併しているMRが重症の場合はPTMCは禁忌である.さらにリウマチ性の病変に弁形成術を考慮する場合には,高度な技術が必要なことに十分な注意が必要である.逆に高度MRに中等度なMSが合併している場合に,弁形成術でたとえ逆流は停止しても狭窄を悪化させると術後の自覚症状に影響を与える.術前評価だけでなく,術中TEEによる評価が求められる. 2.3 大動脈弁狭窄症(AS)兼僧帽弁逆流症 (MR) 2.3.1 病態生理 近年,重症AS患者に対してSAVRに加え,TAVIが可能となったが,合併する中等症以上のMRの存在がSAVRかTAVIかの選択に大きく関わる686).この連合弁膜症の病態としては,「ASは過小評価」し「MRは過大評価」する傾向にあることを念頭において評価することが重要である.ASにより左室収縮期圧が上昇するためMRは増悪・過大評価し,逆にMRにより大動脈弁通過血流量が減少するためASは過小評価する687).