p.89 抽出テキスト
1 連合弁膜症の問題点 2016年の日本胸部外科学会 annual reportによれば,弁膜症手術のうち連合弁膜症の手術が28.2%に行われている175).連合弁膜症手術のうち最も多いのが僧帽弁と三尖弁に対する手術で55.8%,そして大動脈弁と僧帽弁が20.6%,15.9%に僧帽弁,大動脈弁,三尖弁の3弁に対する手術が行われている175).三尖弁と左心系弁膜症との組み合わせが多く,連合弁膜症手術の79.4%を占める. このように連合弁膜症は少ないが,多数の病態の組み合わせがあるため,その診断および治療法に関するエビデンスは不足している. 特に大動脈弁と僧帽弁の連合弁膜症では弁病変間の血行力学的な相互作用によって,各病変による臨床所見の出現を促進または増悪させる可能性と,逆に抑制する可能性がある.このため,単一弁疾患で検証されている身体所見,画像検査およびカテーテル検査による診断法は,連合弁膜症において正確な情報を提供しない可能性があり,各病変の組み合わせにおけるピットフォールに留意する必要がある(表45) 676, 677). 重症弁膜症と中等症弁膜症の組み合わせに加え,中等症の弁膜症を複数有する連合弁膜症においても,運動耐用能の低下,心不全症状,左室の拡大や機能障害,および肺高血圧症を引き起こす可能性がある.個々が中等症の弁膜症であるため治療方針に関するエビデンスはない 第10章 連合弁膜症 表45 連合弁膜症診断における評価の注意点横欄の弁膜症に対する縦欄の弁膜症の影響 AS AR MR MS AS・ PHT測定が不正確になる可 能性あり・ MR量の増加・ EROAへの影響は少ない・ PHT測定が不正確になる可 能性あり・ 低流量低圧較差MSを生じ る可能性あり AR・ 左室流出路の血流速度が増 加している場合,簡易ベルヌーイ式は適用できない可能性あり・ 熱希釈法を用いたGorlinの式は無効・ 連続の式は適用可能・ 大動脈弁最大速度は狭窄と 逆流両方の重症度を反映・ ドプラ法によるvolumetric 法は無効・ AR血流を僧帽弁狭窄血流と 見間違う可能性あり・ 連続の式は不正確 MR・ 低流量低圧較差ASが一般的 になる・ MR血流を大動脈弁狭窄血 流と見間違う可能性あり・ ドプラ法によるvolumetric 法は無効・ PHT測定が不正確になる可 能性あり・ 連続の式は不正確・ PHT測定が不正確になる可 能性あり MS・ 低流量低圧較差ASが一般的 になる・ ARによる脈圧上昇を抑制す る可能性あり・ 石灰化によりMR面積の過 小評価の可能性あり TR・ 熱希釈法を用いたGorlinの 式は無効・ 影響はない・ 影響はない・ 熱希釈法を用いたGorlinの 式は無効 (Unger P, et al. 2011 676), 2016 677)より改変) ©2011 BMJ Publishing Group Ltd. & British Cardiovascular Society ©2016 Springer Nature. https://www.nature.com/nrcardio/