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p.88 抽出テキスト

なお,漏斗部狭窄(弁下狭窄)合併例においては,急激な右室後負荷軽減により術後に漏斗部狭窄が一過性に増悪することがあるが,数ヵ月後以降には多くは改善する667, 669).外科手術の適応となった場合には,直視下交連切開術,あるいは弁置換術がおこなわれる.特に成人例においては石灰化などの器質的変化をきたしていることがあり,しばしば弁置換術が必要となる.弁の選択に関しては,一般的に耐久性の優れているとされている機械弁は,抗凝固療法を確実に行えば良好である一方で658),抗凝固療法が不要な生体弁の成績は,低圧系の肺動脈弁位に留置された場合は良好であるとする報告657)や,弁の種類は関係ないとする報告もある670).外科治療,およびカテーテル治療における術後20年の再手術回避率は,それぞれ88%,84%であり,いずれも長期成績は良好である671). 3 内科治療

前述の手術適応を満たさない症例は,基本的には保存的に経過観察される.成人例のほとんどは,臨床的に有意でない軽症の狭窄か,あるいは小児期に受けた手術の残存狭窄または術後に進行した狭窄である.前者の場合,通常は進行することはない.PSの自然歴を調べた研究では,心臓カテーテル検査における,peak to peakの圧較差が25 mmHgまでのPSは25年生存率が96%ときわめて予後は良好である.圧較差が25~49 mmHgのPSも,25年生存率は77%と良好であるが,経過観察中に20%の症例が手術を受けている672).フォローアップの間隔は,狭窄の重症度に依存する.軽症PSであれば,3~5年毎の診察および検査,中等症以上のPSであれば1年毎の診察および検査を受けることが推奨される653).

運動に関しては,心エコー図検査による最大圧較差が40 mmHg未満であれば,すべての競技スポーツに参加可能であるが,最大圧較差が40 mmHg以上の場合は,運動強度が高い競技スポーツへの参加は控えることや,もしくは治療を受けてから参加することを考慮してもよい673).

PSにおけるIEの発症率は,他の弁膜症と比較してきわめて低く674),一般人口におけるIEの発症率をわずかに上回るにすぎない675).予防的抗菌薬投与の根拠は乏しく, IEの既往のある患者や人工弁の存在する患者以外では勧められない.

表44 PS に対する手術適応の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

重症PS で,心不全症状,右左短絡によるチアノーゼ,あるいは運動耐容能低下を伴う患者に対するバルーン形成術,バルーン形成術が施行困難または不成功となった患者に対する外科手術I C中等症PS で,心不全症状,右左短絡によるチアノーゼ,あるいは運動耐容能低下を伴う患者に対する外科手術またはバルーン形成術IIa C無症候性重症PS 患者に対する外科手術またはバルーン形成術IIa C

症状あり症状なし

中等症 PS (Vmax 3~4 m/秒)重症PS (Vmax >4 m/秒)

症状あり症状なし

肺動脈バルーン形成術

または外科手術推奨クラス IIa肺動脈バルーン形成術

または外科手術推奨クラス I

経過観察

図22 PS に対する外科手術/ カテーテル治療の適応Vmax:肺動脈弁最大血流速度