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p.87 抽出テキスト

1 診断

右室流出路狭窄の病態には,狭窄の位置により,PS,肺動脈弁下狭窄,肺動脈弁上狭窄に分類される.ほとんどが先天性異常によるものであり,全先天性心疾患の8%を占め663),弁性狭窄がその8~9割を占める664).孤立性PSとして認めることが最も多いが,心房中隔欠損症,心室中隔欠損症,あるいは動脈管開存症などの他の先天性心疾患と合併することもしばしばある.また,ファロー四徴症でみられる弁性狭窄と弁下狭窄のように,複数の狭窄病変を併せもつこともある.

発症年齢や症状は,他の合併疾患がなければ狭窄の程度に規定され,新生児期に発症する重症例から,生涯を通じて治療しなくても無症状で経過する軽症例までさまざまである.軽症から中等症までの狭窄では多くが無症状であり,通常は心雑音を契機に心エコー図検査で診断される.

TTEでは,断層エコー法により収縮期にドーム状を呈する肥厚した弁尖を確認し,ドプラ法により加速した弁通過血流を確認すればPSの診断となる.しかしながら,実際の成人例では,弁性狭窄と弁下狭窄,または弁上狭窄を鑑別するのが難しいことがしばしばある.そのため,カラードプラ法を用いてモザイク血流の発生部位を注意深く観察したり,パルスドプラ法を用いて加速血流の存在する部位を評価したりすることが狭窄部位を同定することに有用である.心窩部アプローチは弁性狭窄と弁下狭窄の鑑別にしばしば役に立つが,成人例では描出不良例も少なくない.TTEで狭窄レベルを正確に診断できないことがあるが,その場合は,心臓MRI,心臓CT,あるいは心臓カテーテル検査が必要となる.重症度評価に関しては,ドプラ法による狭窄部の最大圧較差が,36 mmHg未満(最大流速<3.0 m/秒)であれば軽症,36 mmHgから64 mmHgまで(最大流速3.0~4.0 m/秒)で中等症,>64 mmHg (最大流速>4.0 m/秒)で重症と分類する(表43) 653, 664).なお,TR最大流速を用いた右室収縮期圧の推定をおこない,狭窄部圧較差と大きな乖離がないか確認する必要が

ある.特に複数の狭窄部位が存在する場合には,狭窄部の圧較差の推定は不正確になる恐れがあるため,TR最大流速から求めた右室圧を用いて重症度評価を行うことが重要である36).

2 外科治療とカテーテル治療

エビデンスの乏しい領域であり明確な基準を設けるのは難しい.既出のガイドラインにより多少異なるが,これらを総合すると,重症PS(有症候性:推奨クラスI,無症候性:推奨クラスIIa)または症状を有する中等症PS (推奨クラスIIa)では治療を推奨する.PSに対する手術の推奨を表44,図22に示す.

1948年に初めて閉鎖式肺動脈弁交連切開術が行われて以来,長い間,PSは唯一外科手術により治療されてきた.しかし,1982年にPSに対する最初のカテーテル治療が施行されて以来,カテーテル治療は急速に普及し,外科治療から取って代わるようになった.弁輪の低形成や弁尖の異形成が強い症例,あるいは重症PRを合併する症例を除けば,多くはカテーテル治療が可能であり,外科手術の適応となるのは,カテーテル治療が困難あるいは不成功に終わった症例や手術適応のある他の先天性疾患を合併する症例などに限られる.

カテーテル治療の安全性は確立されており,死亡および重大な合併症は両者あわせて1%未満である665, 666).有効性に関しては,小児例に限らず,成人例を対象とした治療でも,高い治療効果が報告されている667-669).合併症としては,カテーテル治療後のPRに注意が必要である.

第9章 肺動脈弁狭窄症(PS)

表43 心エコー図検査によるPS の重症度評価

軽症中等症重症

最大ドプラ圧較差(mmHg) <36 36~64 >64最大ドプラ流速(m/秒) <3 3~4 >4