p.81 抽出テキスト
すとうっ血による肝腎機能の低下が進行して周術期リスクが上昇したり583),右室拡大進行による三尖弁のテザリングが生じて三尖弁形成術が困難となったりすることがある581).このため,Latibらの報告627)にあるように,二次性TRでは内科治療への反応をみながら適切な時期に手術適応を検討することが重要である.しかし,この内科治療と外科的介入の時期については確立されたものではなく,今後根拠となるエビデンスの蓄積が必要ということは認識しておくべきである. 二次性TRにおいて特に最近問題となっているのは,僧帽弁疾患など心臓手術後患者の二次性TRと心房細動を伴う高齢者の二次性TRである.本ガイドラインでは,これら2つの単独二次性TRの手術適応について治療指針を述べる.肺高血圧症による二次性TRについては,TRよりも肺高血圧症そのものが予後規定因子となるため,肺高血圧症の治療を優先する.重症度が変化しやすい二次性TRの手術適応については,右心不全増悪時のTR重症度を基準に考える. a. 心臓手術後の二次性TR 左心系弁手術後遠隔期に二次性TRが増悪するリスクについては多くの研究が示してきたが573, 611, 612, 619-622),この左心系弁手術後遠隔期の二次性TRに対する手術介入は,従来は高い周術期死亡率を伴うと考えられてきた.しかしながら,近年はこの高い周術期死亡率は手術時期の遅延による全身状態の悪化や右心機能低下が主な原因であることが知られるようになり617, 618),適切な時期にTRに対する手術を受けることが予後改善に必要と考えられている.一方で,心臓手術後の重症二次性TRは内科治療に反応することが多いことから,まずは内科治療を試みる.内科治療にもかかわらず,右心不全を繰り返す場合は外科治療を検討する.右心機能低下をきたしていても手術により回復が見込まれ,かつ不可逆性の高度肺高血圧や肝機能障害を来していない例では,外科手術を考慮すべきである(推奨クラスIIa).右心機能が高度に低下した例では,術後成績が不良である617, 618, 628).すでに不可逆性の高度肺高血圧や肝機能障害を来している例,あるいは手術を行っても右心機能の改善が見込めない例などは,総合的に手術リスクとベネフィットのバランスを検討し,ベネフィットが上回る見込みがない場合には保存的治療を選択する.TR手術適応検討にあたっての肝機能評価としては,ICG試験,Child-Pugh分類,MELDスコア(the Model for End-stage Liver Disease)など583)が知られているが,まだ十分に確立されていない. b. 心房細動に伴う二次性TR 心房細動は弁輪拡大を来たし,TRの原因となる565).心房細動に伴う重症TRにおいても,まずは内科治療を試 みる.内科治療にもかかわらず右心不全を繰り返す場合は外科手術を考慮すべきである(推奨クラスIIa).右心機能低下や右室拡大が進行した例では術後の予後が不良となる617, 618)ため,右心不全を発症していなくても,内科治療にもかかわらず進行性の右心機能低下,右室拡大を認める高度TRでは外科的介入を考慮してもよい(推奨クラスIIb).また,肺高血圧や肝機能障害がすでに生じている例では,心臓手術後の二次性TRと同様に,手術によるリスクとベネフィットのバランスを考慮して手術適応を決定する. c. 今後の方向性 現在わが国でTRに対して可能な侵襲的治療は,開心術による外科治療のみである.一方,近年さまざまな方法による低侵襲のカテーテルによるTR治療が報告されている627, 629).わが国でも施行可能となれば,TRに対する侵襲的治療の適応はより積極的なものに変わる可能性がある. CQ 4左心系弁手術の際,軽症のTR であっても弁輪拡大が高度(>40 mm もしくは>21 mm/m2)な場合は三尖弁形成を加えるべきか? 左心系弁手術の際,軽症のTR であっても弁輪拡大が高度(>40 mm もしくは>21 mm/m2)な場合は,三尖弁形成を加えても良い. 推奨の強さ 2:弱く推奨する(提案する)エビデンス総体の強さC(弱) 解説 僧帽弁や大動脈弁など左心系手術を行う際に,TRが軽症であっても,術後遠隔期にTRが中等症以上に増悪し,予後不良となる例があることは,これまで多くの観察研究が示している559, 571, 573, 611, 612, 619, 630-633).その一方で,左心系手術により左心不全が改善すれば,かならずしも軽症のTRが術後に増悪するとは限らない634).したがって,左心系手術を行う際には,TRが軽症である例の中から術後TRが増悪するリスクの高い例を適切に選別し,予防的な同時三尖弁形成術を行う必要がある.これまで,左心系弁膜症手術後のTR増悪因子としては,三尖弁輪拡大や右心機能低下,心房細動の合併,左房拡大などが報告されている571, 573, 611, 612, 619, 630-633).現在のAHA/ACC 165) およびESC/